まあ、後でな
「……で、何だよ?」
俺はどこで手に入れたのか俺のメアドに知らないメアドで有り得ない程長いメアドの主からメールがあった。そいつはおっさん(俺に正義の味方になれと言ったヤツ)だと名乗ったので念のため坂井と須藤に聞いたところ、どうやら本人だったらしい。
だから「勝手にメールしてくんな」と返信しておいたが、メールの内容が「調査において進展があったからアジトに来てくれ」と言うモノだったので仕方なくアジトに来て、詳しい話を聞いてないのでおっさんに尋ねた、という訳だ。
「……てめえ、また聞いてねえのかよ」
何故か須藤に呆れられてしまった。……マジか。まさか須藤はもう知ってるのか。じゃあ何で俺だけ教えなかったんだよ。
俺はおっさんに責めるような視線を向ける。
「……調査に進展があったのは、学校の方ではなく敵アジトについてだ」
おっさんは須藤に嗜めるような視線を向けたが、突っかかってる訳じゃないと見たのか何も言わずに説明を始めた。
「……敵アジト? 拠点みたいなのがあったってことか?」
俺は尋ねる。……確か須藤が学校の方の調査をやってるんだったな。敵アジトについては誰がやってたかは知らないが、よく見つけたもんだ。まあ元おっさんの科学者仲間らしいから、ある程度の予測が立てられてたかもしれないが。
廃墟の地下にあるここにいるのは最後に来た俺とおっさん、須藤と坂井。それに美雪もだ。……前回もそうだが何故美雪がいるのかが分からない。
「ええ、そうよ。敵アジトについては私が調査してたから私の方から報告するけど」
そう言って坂井が一歩前に出た。……敵アジトは坂井が調査してたのか。何か、二人共俺より歴が長いっぽいし経験があるってことなんだろう。
「……場所はこの街にある工場跡よ。おそらく元々あった機器を直して使ってると思われるわ」
坂井がそう言うとスクリーンが下りてきて電気が消え、投影機からマップが投射される。……この街周辺に地図だな。工場跡は俺の家からかなり近い位置にあると思われる。
「……俺の家から結構近いな」
「そうなの? じゃあ気をつけた方がいいわね。素性割れはテネスに追われる事態を招くから」
「……マジかよ。でもここって数年前まで普通に工場やってたような気がするんだが?」
俺が呟くと坂井はサラリと怖いことを言って忠告してくる。俺がさらに言うと坂井がニヤリと笑った。……何だよ。
「……そこが、肝なのよ」
坂井はパチンと指を鳴らす。
「……ここは数年前――細かく言えば四年と八ヶ月前に潰れた工場なの。それはテネスが現れ出した時期と重なるわ」
「「……っ」」
俺と美雪が驚いて目を見開く。
「……ってことは、結構前からテネスってのはいたんだな」
俺が驚いたところはそこだ。潰れた家の近くの工場が本拠地になっていて気付かなかったのには自分に腹が立つが、テネスの脅威はかなり前から始まっていたことになる。
「……ええ。でもそこまで強くなかったわ。正直言ってつるつるの雑魚エネミーって感じで実際特殊能力がなく当時小学生だった私と切也が楽に倒せる程だったわ。連携もせずに、ね」
……その時からずっとアウラとして働いていたらしい。テネス関係の記憶は終わった後全て消去されているとは言え、全く気付かなかった。
「……でも時が経つにつれて次第にテネスの性能が上がっていき、約三年前からテネスになった人の潜在能力を引き出す効力が実装されて、様々な姿のテネスが現れ始めた。元々支援タイプの私一人じゃ倒せないくらいに強い、ね」
「……それから一年後毎に潜在能力のない人でも強くなれるようにテネスの強化が施されてるのよ」
「……さらに言えばここ最近の進化は異常なのよ。最近だけで自我、会話、記憶消去の無効化、巨大化と色んなテネスの進化が行われている」
「……おそらく今までのが様子見だったのよ。――アウラの始祖であるαが現れるまでの、ね」
坂井は口々に説明していきながら、俺を真っ直ぐに見つめてそう言った。……つまり、俺がαとやらに目覚めたから敵の行動が活発したって訳か。
「……まあ、賢人のせいって訳じゃないから自分を責めることはないわ。αがいなければ私達は巨大テネスの群れにも勝てず、この街は壊滅していたと言っていいわ。αが一向に現れないなら数年後には侵略が始まってたでしょうし、そうなったら私達だけじゃ対処出来なかった。仮に対処出来たとしてもそれは、あなたが使いこなしているドラゴン・アクセルの使用でアウラ一人の暴走による殲滅でしょうしね」
俺が現れなければ侵略が今こなかった。それに俺が自責の念に駆られる前に坂井がフォローしてくれた。……ってことは、わざわざαのためにテネスを進化させてたってことだよな? αってのはそんなに重要な存在なのか? 確かに黒いけど、カッコいいデザインはどのアウラも同じっぽいし、何か特別な理由があるとも思えないんだが。あるとすればアウラの始祖って部分だが、始祖ってことはαがおそらく最初のアウラだってことだろうが、大体アウラってのがどんな存在なのかさえよく分かってないんだから推測出来る訳もない。
「……αは羽白川賢人君の想像通り、一番最初にアウラとして存在していたアウラのことだ。アウラとテネスの関係について詳しくは説明しないが、希望がアウラ、絶望がテネスと思ってくれていい。もう一つ言えることは、テネスという存在が生まれたのはアウラのせいだけど」
おっさんは柔らかな声音で言った。……それはつまり、αってのはテネス誕生に関係してるってことでいいのか? だってそういうことだろ? テネスが生まれた時に存在してるのはどこまでのアウラか知らないが、確実に関係してるっぽいのは最初のアウラであるαだ。
おっさんは心が読めるハズだが、何も言わずに微笑んでるだけだ。
「……で、テネスやアウラについては後日詳しい説明をしてもらうとして、本題に入ってくれ」
俺は歴史について話していると長くなりそうだと思って話を進める。
「……本題だが、簡単に説明しよう。敵アジトが分かったのだから、そこに攻め入る」
「……」
簡潔すぎて呆れてしまった。敵アジト発見から攻撃の過程がなさすぎる。まあ坂井が敵の戦力や何かもまとめて調査してるんだろうけどな。
「……では、作戦を説明する。アジトについての詳細な情報は坂井理奈君が責任を持って調査してくれたから大丈夫だ」
おっさんは俺の心を読んでかそんなことを言って敵アジト攻略作戦の説明を開始した。




