はぁ、私の出番って……
二ヶ月振りくらいです
……ああん?
「君に力を与えようと言ったんだ」
……力?
「そう、力だ。今この街にいる戦力では巨大テネスは倒せない。なら、戦力を大幅に強化するしかないだろう?」
……。
「もちろん強制はしない。危険な賭けと言える。失敗すれば君の意識は失われ、闇に堕ちるだろう」
……その力ってのを手に入れれば、あいつらを守れるのか?
「ああ。君は守りたい者を守れる」
……じゃあ、寄越せ。今すぐにだ。
「言われなくてもそうする。今、坂井理奈が巨大テネスを食い止めている」
鳥のような純白の翼を生やした白い天使が、二丁の銃を手繰って巨大なテネスを翻弄しつつ戦っている。まだ捉えられてはいないが、時間の問題だろう。
そしてついに、純白の天使は巨大テネスの左拳に捉えられる。
巨大テネスと比べて小さな身体は右と比べて威力の小さい左拳でも、その巨大な身体から放たれる一撃で勢いよく吹き飛び、建物に衝突して止まる。
その建物とは、純白の天使の中身、坂井理奈も通う高等学校だ。
……ピンチなんじゃねえの?
「……まあ、彼女には使えない力だからな。君がいらないとか失敗した場合、ここら一帯は壊滅すると思ってくれ」
声は少し困ったようなモノだった。
「……って、怪しいおっさんじゃねえかよ!」
俺はやっと、声に出さずに会話をしていた相手にツッコんだ。
……ってか、どうやってここからあっちの状況を見せたんだよ。何気に凄いことすんな。ツッコみづらい。
今の俺は満身創痍。ズタボロの雑巾のような状態だ。
身体は動かないし、さっきのツッコミも全身全霊をかけたモノだったと言っていいし、意識は掠れて視界も掠れて。
「……生きてるようで何よりだ。力が欲しいか?」
「……ああ。もう死にかけてるけどな」
俺は頷くが、頭は重く動かない。頷けると言っていいものかどうかも微妙だ。
「……問題ない。身体がどれだけ傷付こうとも動かす術があるからな。それを使うかどうかは兎も角として、大丈夫だ」
……それならいいんだが。無理矢理身体を動かすってのもそれはそれでどうかと思うけどな。
「……分かった。早く寄越せ」
俺は上体を起こそうとして僅かに指をピクリと動かした。
「……任せたぞ、羽白川賢人」
そう言うおっさんの声が聞こえて、俺の全身に、激しい痛みが走った。
「っ~~~~~~~!!!」
俺はその激痛に、声にならない絶叫を上げた。
▼△▼△▼△▼△
一方その頃、巨大テネスと戦う坂井理奈の変身後のシータは苦戦を強いられていた。
相手が近距離、こちらが遠距離とはいえ、こちらの遠距離が相手の近距離なのだから、当然だ。
リーチの差があれば有利だが、相手の方が長いとさえ思える程だ。
「くっ……!」
今回シータのペアとして選ばれたのはアルファ、羽白川賢人だが、そのアルファは巨大テネスの攻撃をくらって遠くに吹っ飛ばされている。生死さえも疑わしい。
いきなり押し付けられた形のアルファより、少し事情に詳しいシータの方が状況を理解しているが、だからこそ知っている。
今この街、県に二人以外の味方はいないと。
それの意味するところは、アルファがやられた今、この街を守れるのはシータだけということ。
「……やってやるわよ!」
シータは気合いの声と共に、二丁の銃からカートリッジを射出させ、ベルトから射出した別のカートリッジを入れる。
「……メテオ・フォース」
その金色のカートリッジを入れた瞬間、銃が輝き始めた。
先程アルファが使ったメテオ・アクセルと同様、必殺技級である。
「……くらいなさい」
純白の仮面の中で巨大テネスを睨み上げた坂井理奈は、二丁の銃のトリガーを引く。
銃口から金色の流星が放たれ、巨大テネスへと向かう。
だが、それで終わりではない。
シータは連続で引き鉄を引き、巨大テネスへ金色の流星群を放つ。
「……」
どれほど撃ち続けていただろうか。巨大テネスに直撃した金色の流星により生じた煙が巨大テネスの全身を覆い尽くす。
「っ……!?」
やったか、誰もが願望に近いその思いを心に持った時、煙の中から巨大テネスは現れた。
「……ダメ、ね。逃げなさい、少しくらい時間は稼いであげるから」
シータは仮面の中で苦笑し、自分が吹っ飛ばされた学校の校舎内にいた生徒達に言う。
生徒達は何が何やら分からないという表情でボーッと突っ立っているのみだったが、シータに言われて困惑気味に逃げ始める。
すでに避難勧告が出されていたが、シータが校舎に突っ込んできたので留まってしまったのだ。
「……あの、頑張ってください」
最後に残った一人の女子が心配そうな顔でシータに声をかけた。女子はそう言ってすぐに他の女子に呼ばれたため小走りに去っていった。
「……言われなくても頑張るわよ」
そう言うシータだが、心の内に湧き上がる力を感じていた。
一人で戦うのと応援されるのでは、全然違うのだ。
「……とは言ったものの……」
シータは仮面の中で悩む。必殺技とも言える強い攻撃でも一切傷を付けられなかったのだ。自分の持つ力では勝てないと確信出来る。
「……っ!」
シータは悩む暇もなく、駆けて突っ込んでくる巨大テネスに目を見開く。
ドゴォン!
ある程度の距離があったハズなのだが、やはり巨大なので速く近付いてくると、シータに向けて拳を振るった。
「……ストップ・フォース」
片方のカートリッジを射出し新たなカートリッジを入れる。
それは時を止めるモノではなく、物体を固定するモノ。
シータは自分が通う高校を守るため、自らをその場に固定して拳を真正面から受けたのだ。
「……」
巨大テネスの拳が引いた後、シータは力尽きて倒れる。
そこへ、巨大テネスが蹴りを放とうとしていた。
いくらボクサーといえど、腕力より脚力の方が強いのは言うまでもない。
力尽きたシータでは学校もろとも吹き飛ぶのがオチだろう。
躊躇いなく脚がシータに向けて振られる。
シータは諦め目を閉じて、来るハズの衝撃を待った。
だが、数秒待ってもこない。
「……てめえは、この街を傷付けすぎた……!」
怒りのこもった少年の声。
「……っ!」
坂井理奈は顔を上げ信じられないと衝撃を受ける。
生死さえ分からなかった少年が、新たな力を手に入れ進化して、そこにいたのだ。




