くそっ、デジャヴだ
三ヶ月振りくらいになります
「大丈夫!?」
俺は巨大テネスに殴り飛ばされた後、何とか立ち上がったのだが、フラフラしていた。
そこに純白のフォルムに純白の翼を生やした女性体型のヤツが下りてきた。
一瞬頭がボーッしていたせいで天使が俺を迎えに来たのかと思ったが、俺と同じ正義の味方らしい坂井理奈だ。……しっかりしろ、俺。あいつを倒さなきゃいけねえってのに。
「……ああ。ちょっと身体が痛いだけだ」
俺の口から出たのは強がりだった。
「……嘘言いなさい」
坂井は呆れて言うと、二丁の銃口を俺に向ける。
「えっ……?」
何故銃口を向けられているか分からない俺は、戸惑う。
そして、バァン! と言う銃声が街に響き、俺を淡い黄緑色の光が貫いた。
「……っ」
俺は驚愕した。
「……な、治ったぁ!」
痛みが消えていたのだった。綺麗さっぱりと。
俺は驚いて坂井を見つめる。
「私は後方支援なの。後方支援が回復も出来るのは、パーティー戦の基本でしょ?」
ウインクでもするかのような口調で言う。……パーティーって。それはゲームでのヒーラーとか魔術師のことを言ってるんだろうな。
「……おぉ。しっかし、道理で俺が回復系のヤツねえと思ったら」
後方支援じゃないからか。
「……回復、ないの? 一人で戦ってるのに?」
しかし坂井は俺の言葉に驚いていた。……あれ? 近接でも回復ってあるもんなの? じゃあ何で俺はないんだ?
「……まあ、アルファだからよね。アウラの始まりのアウラ。アルファは完全オリジナルと言ってもいいもの」
完全オリジナル? 何の話だ?
「ん?」
俺が訳も分からず首を捻っていると、坂井は飛翔し始めた。
「ほら、さっさとしないと学校がヤバいわよ。あんなボクサーの巨大テネスなんかが走り回ったら、手出し出来ないんだから」
走られたら逃がすってことか。そうなると足止め出来ないもんな。
「……んじゃ、いっちょお見舞いしてやるかね」
俺は笑って勢いよく上昇し、空に飛び出す。
すると巨大テネスは、駆けつけた自衛隊だが何だかと戦っていた。
それが戦闘と呼べるかどうかは微妙だ。
銃を当てようが、ヘリを使おうが、巨大テネスの一方的な蹂躙に変わりないからだ。
「チッ! アクセル・アクセル!」
俺は無駄な犠牲者を出してしまい舌打ちし、飛翔速度を加速させて巨大テネスに向かっていく。
「待ちなさい!」
坂井が俺を呼び止めるが、気にしない。俺は正義の味方なんだ。人を救うのが当たり前だ!
「うおおおおおおおぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉ!!」
俺はさらに加速を繰り返し、ヘリを薙ぎ倒す巨大テネスの脇腹へと突っ込んでいく。
「ぐっ……!」
俺は腹筋がめちゃくちゃ割れたヤツの力を入れた腹に頭突きをしたような鈍い痛みがくるが、それを無視して俺は力いっぱい押し倒す。
「……ハァ……ハァ」
俺は息荒く尻餅を着いた巨大テネスを見下ろす。
「……いい気になるんじゃねえよ。お前の相手は俺だ!」
俺は右手の親指で自分を指し、巨大テネスに怒鳴った。
『下がりなさい! 正義の味方だかは知らないが、一般人の出る幕ではない!』
俺の上空へ来たヘリから、声が聞こえてきた。……一般人、ねえ。この場合どっちが部外者なのか、それも分からねえようじゃダメだろ。
「オオオオォォォォォォ!!」
巨大テネスは俺に倒されて苛立っているのか、吼えた。
『今の内に攻撃せよ!』
さらに声が聞こえると、戦闘機が一機、旋回していた。
ミサイルやら何やらを、巨大テネスに向けて放つ。……意味ねえっての。
「……鬱陶しい」
誰かの声が言って、人が虫を払うように、鬱陶しさを如実に表すように、無造作に手を払った。
それだけでミサイルは落とされ、ミサイルを放った戦闘機も破壊される。
……喋った!?
しかも片言じゃなくて、流暢だ。……巨大になれるだけじゃなくて、言葉を話せるようになっているのか。
「……ならせめて、悲鳴上げてもらおうか!」
俺は言って、ゆっくりとダルそうに立ち上がる巨大テネスに突っ込んでいく。
「……羽虫が」
巨大テネスは鬱陶しげに言って、ファイティングポーズをする。軽くステップを踏み、完全に臨戦態勢だ。
放つのは勿論、左。
「っ!?」
だが、まともにそれは放てない。
俺は大きく右に避けながら、アルファの黒い仮面の中でニヤリと笑う。
軽く当てるだけでも大きく俺を吹き飛ばすその一撃が、さらに速度を持って放たれた。
そこに、巨大テネスは驚く。
「……その左、加速させてもらった」
自分が思っていたよりも速く放ってしまい、僅かに体勢を崩す巨大テネス。
その隙に放った左腕の左から飛翔して懐に潜り込む。
「メテオ・アクセル」
俺は必殺技の、金色のカードを差し込む。すると、ガントレットが金色に輝き出した。
『アクセル・レボリューション』
男の声のように低い機械の声が言った。
「三連メテオ!」
キュイン、とガントレットに金色のオーラを溜めると、巨大テネスの左脇腹に拳を繰り出した。
繰り出した拳が巨大テネスの左脇腹に当たると、三つの金色のオーラの塊が放たれて、巨大テネスの脇腹を削った。
「ぐっ、このっ!」
巨大テネスは痛いのか呻きながら、しかし俺に戻した左拳を上から叩き込んできた。……まずっ。
「っ……!」
俺はさっきくらった左よりも威力が劣るとは言え、ガード系カードを使っていなかったために、なす術もなく地面へと叩き付けられーーはしなかった。
「がっ!?」
眼前に地面が迫る、と言うところまで来た時、蹴り上げられた。
蹴り上げられたと分かったのは、空中で振り上げられた左足を見てからだ。それまではただ重い衝撃を受けたとだけ分かった。
俺は回転しながら宙を、巨大テネスの斜め上で舞っている。……下は大通り。四斜線の車道があるT字路、突き当たる方角に飛んでいた。
「……とどめ、刺しとくか」
地響きのような音がしたかと思うと巨大テネスがこっちに向かって走り出していた。
……翼は、動かねえな。さっきの蹴りかパンチで折れたかもしれない。
ペチ、と軽く巨大テネスの左拳が当てられる。
「……ワン」
それはただ、距離を計るための拳。
ヴゥン、と言う音がしたかと思うと、巨大テネスの右拳が黒く輝いているのが見えた。……死ぬかもな、こりゃあ。
「ツー!」
それは左拳よりも速く、そして強く、宙を舞う俺に、叩き付けられた。
俺は呻き声を漏らす暇もなく、一瞬の内に吹っ飛ばされる。
T字路の突き当たりにある大型ショッピングモールを抜け、さらにいくつかの建物を突き抜けて飛んでいき、どこかでやっと、壁にめり込む形で止まった。
……さっきと同じ、かよ……。
意識が掠れていく。身体はもう動かない。
「……君に、力を与えよう」
どこかで聞いたことがある声が、聞こえた気がした。




