いや、誤解だから
お久し振りです!
お気に入りされてる限りは完結までいこうと思います。
進むペースが早くなりますが、完結させたいと思います。
「……ん?」
俺は目を覚ます。
「って、美雪!?」
隣で美雪が寝ていた。……俺は仰向けに寝てるので、左腕に抱き着くような感じで。
「……うぅん?」
俺が声を出したせいで、美雪が起きてしまった。
……よしっ。バレても何もやましいことなんてない。美雪が勝手に入ってたんだ。
「……おはよ、賢人」
俺の顔を見て目が覚めたのか、俺の腕を離して距離を取る。
「……」
布団に入ってきといて、見つかったら誤魔化そうとするとは。
「……言い訳させて」
「いや。寝惚けてたか、親だと思ってたか、昨日のことで不安だったかのどれかだろ」
二番目はさすがにねえな。
「……そうよ。昨日のことで不安だったのよ。賢人の傍にいれば安全でしょ?」
照れてるのか、俺から目を逸らして言う。
「ま、それならしゃーないな」
いきなりあんな目に遭ったら不安にもなる。
「……今何時?」
「さあな。俺って寝坊魔だから」
普通に昼まで寝てるようなヤツだし。
「……自信ありげに言うことじゃないわね。時間は……七時ね。良かった。寝坊じゃないわ」
美雪は床に置いてあったスマホを見て言う。……おぉ、意外に起きれたな。
「じゃあ、俺が朝飯作ってる間に身支度しとけよ。女子ってそういうの長いんだろ?」
「そうね。そうさせてもらうわ」
美雪は自分の身支度が長いのを思ったのか、頷いた。
「美雪は和食と洋食、どっち派?」
「いつもは洋食だけど、久し振りに和食が食べたいわ」
派閥にはこだわらないらしい。今でも和食派と洋食派に分かれて議論が交わされてると言うのに。
「……いや、中華もイタリアもあるな」
食の派閥争いは激しいのだ。
「……何ブツブツ言ってるの? ま、期待しておくから」
「デザートはいるか?」
「ジャイアントチョコパフェでお願い」
難易度たけぇ!
「……まあ、善処する。のんびり準備してこいよ」
ちょっと夫婦みたいな感じだな、と思ったが、それだと俺が主婦の方になるイメージだ。
「さて、気合い入れて作るか」
俺はエプロンを装着し、キッチンへと立ち向かった。
▼△▼△▼△▼△
「……何、それ?」
美雪が身支度を終えたらしい。
「早かったな。もうちょい待ってろ? ……あとはここの装飾が」
「何作ってるの?」
ん?
「ジャイアントチョコパフェだが?」
最後の生クリーム装飾を終え、俺は顔を上げて美雪を見る。
「……ホントに作ったの?」
「何言ってんだよ。美雪がデザートに食べたいって言うから作ったんだぜ?」
「まさかホントに作れるとは思ってなかったから、冗談だったのよ」
マジで!?
「……そんな。一生懸命作った俺の努力は……?」
「た、食べるわよ。だからそんな悲しそうな顔しないで」
……おぉ、良かった。俺の最高傑作が無駄にならなかったぜ。
「じゃあ、いただきまーす」
「いただきます」
ご飯、味噌汁、焼き魚、おひたし、牛乳(美雪は一リットルパック一つ)。
そして、真ん中にドーンと置かれたジャイアントチョコパフェ。
……張り切り過ぎたな。
「まあ、どんどん食べろよ」
言いながら、俺も箸を進める。
「んっ。結構いける!」
俺は飯を食べ終え、デザートに移っていた。
「初めてでこれくらい作れれば、上出来だな」
何の気負いもなくその言葉を口にしたのがいけなかった。
「……初めて?」
ユラリ、と黒いオーラが立ち上っている美雪。
「あ、ああ。パフェって大体こんなもんかなって」
材料が揃えば飾り付け。簡単に言えばパフェはそんな感じだ。プロのパティシエだったらこう思わないかもしれないが、結構簡単だ。
「……何で?」
「ん?」
「何で適当に作ってこんなに美味しいものが作れるのよ! 私なんか料理本見て分量通りにやっても失敗するのに!」
美雪が涙目で怒鳴る。……いや、それで失敗する方がよくわからん。
「……大丈夫だって。俺が教えてやるから」
俺は涙目の美雪をあやすように頭を撫でてやる。
「……うん」
こくん、と小さく頷く。
……やっぱ、立候補で委員長になった真面目ちゃんには見えねえな。
まあ、俺が勝手に決めつけてただけだが。
▼△▼△▼△▼△
そんなこんなで登校中、俺と美雪が同じ家から出てきて一悶着あったが、特に問題はなかった。
「死ねぇ!」
教室に着いた途端、宏介が俺に殴りかかってきた。
「おわっ」
それをやや危なっかしく避ける。
「何だよ、宏介」
「何だよじゃねえよ! この裏切り者が! 俺達は非リア充同盟としてやってきただろ! 委員長とねんごろになってるってどういうことだよ! お前、委員長の家から一緒に出てきたらしいじゃねえか! 一夜を共に過ごしましたってか? はっ! 汚らわしい!」
……うぜぇ。
「大体お前は前からーーぶへぇ!」
最後のは俺が宏介の顔を殴って吹っ飛ばした時のだ。
「うるせえよ。誤解だって何度言ったらわかるんだ」
「「「何度も言ってねえ! 初耳だ!」」」
おや。ってか、このクラスノリいいな。ツッコミ入れてくるとか。
「まあ、落ち着け。何もやましいことなんてねえよ。ーーそれよりお前ら、一昨日のこと覚えてるか?」
俺は急に真剣な口調で言うと、教室が静まり返った。
「一昨日って、あの化け物のことでしょ?」
一人、平然と言い放つ声があった。
一昨日審判もやってた、坂井理奈だ。
「……そういや、いたな。ぼんやりとしか思い出せねえけど」
それを聞いた皆も、ぼんやりとだが思い出せるらしい。
……テネスだったヤツは完全に忘れてるな。自我を持つようになったのは昨日か。で、無関係なヤツが覚えてられるのも昨日から。
……坂井理奈。要注意人物だな。皆がぼんやりとしか思い出せねえのに、あいつだけは即答出来た。鮮明に記憶に残ってるからか。
テネスのことを覚えてられたのは、アウラとおっさんと相手の科学者。あと、アウラをサポートする諜報員にはそういう機械を渡したって言ってたな。
「坂井理奈、ね。覚えとくぜ」
俺は小さく呟く。
「えっ?」
美雪には聞こえたみたいだ。
「何でもねえよ。ーーん?」
急に教室が暗くなった。
「ひっ!」
クラスの男子が怯えたような声を出す。
「……おいおい」
俺は呆れて半笑いになる。
外には、街並みがプラモデルに見える程大きな、巨人型テネスがいた。




