おう、これでわかったか?
説明回です
「ふーっ。食った食った」
我ながら腹一杯になる程食ったぞ。
「それで、料理教室の件だけど」
料理教室って……。
「ん?」
「いつやるの? 今日は夕飯食べたから出来ないけど、かといって平日は夕飯の時ぐらいしか作れないわよ」
そうだよな。
「う~ん。じゃあ、まあ無難なところから教えるから、土日に美雪ん家来て教える。んで、自分で美味いと思ったら俺に食べさせてくれればいい」
楽だし、美雪も集中出来るだろ。
「そうね。わからないところがあったら?」
「まあ、電話かメールでもしてくれれば答えるからいいんじゃないのか?」
「メアド交換する?」
「ああ。赤外線は?」
「あるわよ」
なら良かった。
「んじゃ、はいよ」
俺はポケットからスマホ(黒)を出す。
「ちょっと待って。取ってくるから」
美雪はリビングを出て階段を上がっていった。
「そういや、あん時はなかったな」
テネスに服破かれて、ケータイ持ってたらぶっ壊れてたし。
「お待たせ。私が受信でいい?」
「ああ」
送信っと。
「オッケ。んじゃ、何かあったら連絡な」
「……わかった」
う~ん。何から教えるかね。考えると難しい。
「まあ、今日はいいわ。……それで、色々聞きたいことがあるんだけど」
「……」
美雪が真剣な表情をして言うので、大体見当はつく。
「下校中のこと、教えてくれるんでしょうね?」
まあ、そうだよな。
「……ふぅ。ああ。んで、何から聞きたい?」
仕方なく、頬杖を着いて言う。
「全部。賢人くんの知ってること全部」
……そうか。
「じゃあ、どこから話して欲しい?」
色々あってどこから話していいかわかんないしな。
「賢人くんの正体は?」
「……まあ、普通の高校生だな。春休みん時に変なおっさんに会ってな」
「変なおっさん?」
「そ。深夜まわってんのに、街中に俺を待ち伏せしててな」
「……深夜に街中にいたんだ? 賢人くん」
俺かい。
「……まあ、それは置いといてな。んで、そのおっさんが正義の味方になれ、っつって言ってきたと思ったら、なってた」
「……。言われたらなってたってこと?」
「そういうこと」
オッケーしてないのにな。
「それから最初に敵に襲われた時にな、またおっさんが現れて、ちゃんとした説明をくれたんだ。俺に与えられた、正義の味方の力はアウラ、さっきみたいな敵がテネスっていうらしい。俺のはアウラの内のアルファっていう力らしい」
らしいばっかで曖昧だが。
「アルファ? あの黒いのが?」
「ああ。カードを差し込んで様々な効果を得られる。他には、βとθ、ζがいるらしいが、会ったことはないな」
聞いたこともないし。
「テネスだが、何か、アメ食ってなるんだよな。そのアメは怪しいおっさんの古い知り合いが作ってるんだとよ。元科学者の仲間らしい」
ありそうな話だ。
「……大人の勝手な事情に巻き込まれたみたいね」
美雪が他人事のように言う。……いや、皆巻き込まれてるから。
「まあそれはそれとして。一応ほとんど説明したけど、何か聞いたことあるか?」
「……そうね。賢人くんは怖くないの? そんな危険なことに捲き込まれて」
ん?
「そうだな。正義の味方は弱音を吐かないもんだが、俺は普通の高校生だしな。折角だから言うと」
「言うと?」
「やっぱり怖いよな。いくら好奇心旺盛でポジティブな俺でも、怖い物は怖い」
「……」
美雪は黙ってしまう。やっぱ、幻滅したかな。
「好奇心旺盛でポジティブなら怖くないと思うけど」
……それで黙ってたのか。
「いや、いくら強くなったって、いくら俺が強いからって、怖い物は怖いぞ」
「……強かったら悩まずに戦えるでしょ。まあ、恐怖があって真の強さらしいけど」
そうなのか?
「まあ、邪魔するヤツはぶん殴る、ぐらいの気持ちで」
結局、それが一番だよな。
「全然正義の味方っぽくないのね」
美雪は笑って言う。
「ああ。結局は俺は俺、ただの高校生だからな」
笑って言う。……もう話すことがない気がするな。
「そう。まあ、頑張って」
頑張るけど。
「でも、これで賢人くんの弱みを一つ握れたわね」
「へ?」
美雪さん?
「何かお願いする時は正体をバラされたくなかったら、っていう脅しが使えるわ」
「……」
この人、何気に黒いわぁ。
「まあ、脅されなくても多分協力すると思うけどな」
断る理由なんて、ほとんどないし。
「……そろそろ寝る時間ね」
あっ、ホントだ。
「じゃあ、寝るか。俺はどこで寝ればいい?」
「そうね。私の部屋でもいいわよ?」
……うん、それは遠慮しとこう。
「他は?」
「客間の敷き布団とか」
「そっちでよろしく」
即答する。美雪の部屋で悠々と寝られる程神経は図太くないハズだ。
「そう。じゃあ、こっちよ」
大して反応せずに案内する。美雪なりの冗談だったのかもしれない。
「んしょ、っと。自分で敷いてくれる?」
「はいよ」
美雪を手伝う。まがいなりにも、世話になってる身だしな。
「おやすみ」
「ああ。明日、起こしてくれると助かる。おやすみ」
情けない話だが。
「わかったわ」
電気を消して、美雪は去っていく。
「……ふぅ」
疲れる一日だったぜ、全く。




