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回想場の親子

建前なく

義務でなく

ただ感謝を込めて

配点 (プライスレス)

side織火


皆が行ってしまって少し経つと、お兄さんが帰ってきた。


「いや、奇跡的に父さん助かってたよ。ビックリ」

「そんなことが日常茶飯事の沢木家に私はビックリですよ……」


兄妹だけでなく、一家揃って頭オカシイ。


「みんなは?」


「どっか行っちゃいましたね」


「織火はお留守番か。いつも通り」


「なぜか損な役回りが回って来るんですよねー」


「ハッハッハ、偉い偉い。偉いぞ織火」


と、お兄さんが頭を撫でてくれる。


まぁ、お留守番の駄賃はこれで良しとしますか。


「お?カレーじゃん。織火ママン特製?」


「ウチの母、料理は上手いんですよ」


「へぇ、一口食べていい?」


「そう言うと思っていっぱい作ってもらいました」


「おぅ!さすが織火だ!」


あれ?


ひょっとして私たちイイ雰囲気?


見られたらヤバい系?


修羅場系?


「やっぱ美味いな、織火!」


「私じゃなくて母ですけどね」


「でも織火も料理上手いだろ?パン作り競争出るんだし」


「まぁそうですけどね。一応できるつもりです」


「ハッハッハ、織火はいいカーチャンになりそうだ」


「私カーチャンですか。まぁ自分でもカーチャンタイプだと思ってましたけど」


だがお兄さんはやはり私をそういう対象として見てないようで、アッサリとそんなことを言うのだ。


まぁ、そりゃそうですよね。


さらば私の初恋。


いいんです。


初恋は成就しないものなんです。


「なぁ、織火?」

「何ですか?」

「カレー味のウン」


ソッコーでお兄さんを頭からカレーに叩き込んだ。


「カレー食ってる人に何を言い出すんですか!?」


「いや、人類の永遠の命題について話そうかと」


「嫌ですよ!少なくともカレー食ってる相手にする話題じゃないですよねソレ!?」


「ダメか」


「ダメですよ!もうこのカレーがう○こにしか見えないじゃないですか!どうしてくれるんですか!?」


「俺が全部食ってやるよ」


「え?本当ですか?お兄さんも優しい……いやいやいや!騙されそうになりましたけど違いますからね!?お兄さんがカレー食べたいだけですよね!?」


「ばれたか」


「騙そうとしていたと認めましたね!?」


「それだけカレーが食いたかったってことだ」


「それだけ言われたら母も本望でしょうねぇ!」


嗚呼、私はこんな人に初恋してしまったのか。


というか恋なのでしょうか?


ただの憧れな気もしますけど……


隣でバクバク食っているお兄さんを見ながら思う。


そこでフと思い、話してみることにした。


「お兄さん、実は私たちの中で喜美を泣かそうという計画がありまして」


お兄さんが噎せた。


「喜美を?何で?」

「ええ。体育祭の日に私たち置いてかれたじゃないですか」

「ハッハーン、それで恨んで泣かそうってわけだ」


うわぁ。


聞いてみるとなんと子供っぽいことか。


「いいんじゃね?俺も1回見てみたいし」

「え?お兄さんも見たことがないんですか?」

「そうだなー、赤ん坊のときはよく泣いていたけれど、もう幼稚園のころから泣かなかったなぁ」


何ですかその不気味な少女は。


小さい頃からアレだったんですか!?


「あ、でも参考になることはあるかも」

「え!?本当ですか!?」


ぜひ聞きたい。


喜美の弱点だったら一番聞きたい。


今のところお化けが苦手以外に対抗策を持っていないのだ。


「実は昔、俺と喜美と知佳で母さんを泣かせたことがあってなぁ」

「え?お兄さんのお母さんをですか?」


あのお母さんが泣いた?


それは確かに気になる。


どう考えても泣きそうにないあの人を泣かせたなら、その方法を使えば喜美だってなかせられるかもしれない。


「教えてくれませんか!その話!」

「そうだな。少し長い話になるけれど、みんな帰ってこなそうだから喋ろうか」


そういえばみんな遅いですね。


でも確かに喜美のいないこの機会を逃すわけにはいかない。


「お願いします」

「そうだな。アレは俺が小学5年生にころだったかな」


そこからお兄さんの語りが始まった。






「あれは俺と知佳が5年生のときだ。喜美は小学校に入ったばかりだったな。織火とはもう友達だろう?」


「ええ、迷惑かけられっぱなしでしたけどね……!」


「で、まぁ。その時のことなんだがな?


ウチは旧家、名家といっている割にはそこまで金持ちなわけじゃない」


「ええ、そうでしょうねぇ。常識の範囲内だと思いますよ?」


「でも他の人たちよりはいい暮らしをさせてもらっているわけだ。


というのもな、母さんの管理が厳しくてな」


「またお兄さんのお父さんが不憫な話になりそうですね」


「公園の水道水をペットボトルに詰めて職場に行ってたらしいぜ。と、そんなことはどうでもいい」


「どうでもよくないですけど、続きをどうぞ」


「母さんは他人に厳しいけれど、自分にはもっと厳しいんだよな」


「リアル侍みたいな人ですね」


「自分のことに関してはとにかく金をかけないんだ。母さんは。服とか10年くらい平気で着ているしな」


「物持ちがいいってレベルじゃないですね」


「だから服とか、スリッパとか、丁寧に使っていて、修理もしているんだけれどやっぱりボロボロになるんだよな」


「まぁ、当然ですよね」


「子供心にそれが可哀想でなぁ」


「子供に心配されるレベルだったんですか」


「だから母さんの誕生日に、せめてスリッパをプレゼントしようぜってなったんだよ」


「お兄さんと、喜美と、知佳お姉さんですか?」


「そう。知佳も家族の一員みたいなものだったからな。でも俺たちその時小学5年生。持っている金なんてたかが知れているわけよ。確かみんな合わせて千円だったな……」


「そんなものですかねぇ」


「お小遣いもほとんどなかったからな。でもプレゼントするなら良いものあげたいじゃん。母さんは和風が好きだったからさ、底の部分が畳になっているスリッパをプレゼントしたかったんだ」


「あぁ、ありますね」


「本物の畳のな?」


「高いですよねぇ」


「幸い俺の友達に畳屋の娘がいてさ」


「またお兄さんの人脈もすさまじいですね」


「その子になんとかお願いして、割引で売ってもらうようにしたんだよ。特別製のスリッパ」


「すごいですね」


「でも6000円とか無茶でなぁ」


「確かに、小学5年生には少し厳しい金額ですね」


「だからお金集めるしかなくなったわけよ。それで3人で会議開いたんだよな。そこで喜美が天才じみたことを言い始めてさ」


「喜美は昔からそうだったんですよね。人の想像を斜め上に超えていくという」


「マッチ売りの少女を読みながらさ、『お金がないならマッチを売ればいいじゃない!』とか言い初めてな」


「喜美!小学1年生にしてその口調ですか!?」


「まぁマッチはないけど、そのアイデア自体はいいかもと思った。要するに、安い原料で高い商品を大量に作って売れば儲かるわけだ」


「商売の基本ですね」


「そこで俺は考えた。知佳は料理がすごく上手い。お菓子作りも完璧だ。だからクッキーを作ることにしたんだよ」


「確かにクッキーなら安く、大量に作れますね」


「20個セットで50円。安いッ!」


「本当に安いですね」


「まぁ原料も安かったからな。それで知佳の家で大量にクッキー焼きまくって、俺がラッピングして、駅の前に持っていって売りさばいたわけだ」


「どれくらい利益でたんですか?」


「計算面倒だったから、1袋売れるごとに10円儲かるようにした。それで1日20袋ぶんくらい焼き上げてな」


「1日200円の売り上げですか」


「5日で1000円だ。それに土日は調子に乗って一杯焼いたから、もっと儲かった」


「よくそんなに売れましたね」


「まず俺たちが町内で知らない人はいない有名人だったこと、そして喜美と知佳がその美貌を駆使して男に売りさばいてな」


「男って馬鹿ですねぇ」


「それでかなりの金を稼いだな。あと足りない分は犬の散歩引き受けたり、掃除したりして補って、6000円を稼いだんだ」


「すごいです。ホントにすごいですね、お兄さんたち」


「まぁ昔からウチは放任主義だったから。何でも試せたっていうのはあるな。それでその畳屋からスリッパ購入して、すでに職人の域に達した俺がラッピングしてな。それで母さんの誕生日にプレゼントしたんだ」


「感動ですね!」


「『アタシのためにそんなにお金使うんじゃないよ!』って怒られたけどな」


「おぉう……厳しい……」


「ハッハッハ、まぁ今思うと照れ隠しだったんだろうな、アレ。実際その後号泣しちゃってなぁ。喜美と知佳に抱きついて『もう、ホントにこの子たちはねぇ……』ってな」


「忘れ去られた人が約一名いません?」


「まぁ俺は母さんのそんな様子が見れただけでよかったさ。達成感もあったしな」


「達成感ですか」


「で、アレから5年か。母さんあのスリッパ以外履かなくなってな。もうボロボロなのに絶対に買い換えないんだ、あの人」


「『まだ持つから大丈夫だよ』とか言うんですよね?」


「まったくもってその通り。まぁ俺たちも成長して、母さんの照れ隠しってわかってるけどな。それが母さんを泣かせた唯一の事例かな。金稼ぐの目茶苦茶大変だったから、もうやらなくなったんだよなぁ」


「なるほど……達成感、うーん……いっそ自作で?」


「何か参考になったかな?」


「はい。なりました。ありがとうございます」




お母さん嬉しかったでしょうね、それは。


私もいつか


「お母さん!いつもありがとう!」


とか言われながらプレゼントもらいたいものです。


手作りだったら泣きますね、ええ。


それで


「織火、いつもご苦労様」


ってお兄さんに言われてプレゼントもらってですね。




「織火、織火?」

「はうっ!?あ、現実に帰ってきましたか」


妄想の世界から復帰した。


でもある程度の方針は決まった。


喜美を泣かせる計画、本格的に始動ですね……!

織火と壮がいい感じで話しているのに、他の4人は関係最悪という。


織火と壮が話している間に、咲とイリヤの対立が発生、喜美は咲の側にについて、沙耶は中立で観戦している状況ですね。


織火の壮への思いは恋というよりは興味のような、憧れのようなものです。


しかし修羅場の種には違いないという。

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