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一人舞台の演技者

孤独に

一人踊るのは

誰か

配点(女優)

side沢木


大縄跳び1人版、2人版。


ネーミングからして意味不明である。


大縄跳びってみんなで跳ぶべきものだろう?


「沙耶、これってどんな競技なんだ?」

「そうね……大縄跳びで技を競う競技ね」


意味わからん……


これは5年生以上限定の競技らしい。


当たり前か。


「5年1組!行きます!」


元気よく宣言して5年1組の演技が始まる。


まず大縄1本が周り、2本目が周り……


「ダブルタッチ。ま、基本ね」


そこに飛び込み、その少年は逆立ちをした。


「おぉ!すげぇな!」

「この程度で驚いてどうするの?跳ぶわよ」


その言葉通り、少年は逆立ちしたまま跳んで見せた。


手で地面を弾き、空中に浮く。


1本をかわし、すぐに地面に手をついて再び飛ばし2本目もかわした。


さらにそこから体を戻し、足に地面をつけながら前に体を押し込んでいく。


そのまま空中で1回転……!


しかも止まらない。

その回転は連続して止まらない。


そのまま10回転。


回り切り、外に飛び出る。


拍手と共に少年が退場する。


レベル高ぇー!

やってみてぇー!


「壮、やりたそう」

「当たり前だろ!畜生!小学校の運動会だからって馬鹿にしてたら面白いじゃねえか!なんで誘ってくれなかったんだ!?」

「こんな面白くなったの今年からだし」

「え?そうなの?」


運動会の競技なんてそんなガラリと変えられるの?


というかなんで?


「喜美がお願いしたみたい。かなり強く言ったみたいで教頭渋ったんだけど校長がOKだしてね……」


それでこれか。


「にしてはみんな適応してるなオイ!」

「蓮里は外道、人外が多いから」


咲が当然のように言う。


それにしても、喜美が変更を願い出たのは俺の体育祭に影響を受けてか?


いや、短すぎるわな。


だが、


「面白いじゃねえか……!」


保護者の皆さんも歓声あげまくりだ。


そしてその歓声は絶頂に達する。


6年1組。


1人版としては唯一の女子。


開会式にて告白に受けて答え、愛を叫んだ少女。


その煌めく白銀の髪と見るものをハッとさせる深紅の瞳。


一度見れば誰もその姿を忘れることはない。


それほどまでに強烈な印象を残す少女。


その口には余裕の笑みを称え、その瞳には悪戯っぽい光を宿している。


その一挙一投足には自信が漲っている。


一言で言えば、イイ女だ。


「おぉ……!」


とどよめきが起こる。


あれが俺の彼女だと、声を大にして言いたい。


自慢してやりたい。


「あれが俺の嫁だああああ!!」


言ってやった。


「畜生!羨ましいなぁおい!」

「逃がすんじゃねえぞ!」

「おうよ!」


答える。


イリヤがつツと上を向く。


少しこちらを見下すような上から目線。


それすら嫌みを感じさせない美しさ。


場が一気に静かになる。


「イリヤ」


静かにその言葉だけ口にするイリヤ。


零れるように出たその言葉は、全ての人の心にその名を刻んだ。


回す男子2人に目配せ。


男子2人は頷き、スッと立ち上がる。


その動作は目立つものではない。


あくまで主役はイリヤだ。


縄が2本回る。


静かな空間の中に響き渡る綱が地面に叩かれる音。


そこにイリヤがスッと入る。


静かな動作だが、確かな動作。


まず入る。


それは当然だ。


両足で跳ぶのではなく、片足でスキップするような気軽さで跳ぶ。


縄などないような気軽な動作。


しかしそれでは当然勝てない。


だからと言うようにイリヤは動作する。


その動作はポケットから縄跳びを取り出すことで成立する。


縄跳び追加……!


縄跳びが追加された。


しかしイリヤはそれを当然とする。


気軽と、そう言える表情だ。


表情には笑みを浮かべ、審査団のほうにウインクする余裕さえある。


イリヤは個人の縄跳びを回すスピードを上げる。


単純な前跳びからあや跳び、二重跳びに行き、唐突に後ろに回りだす。


後ろ跳び、後ろ二重、そして後ろハヤブサ。


ただ単純にやるだけでも至難の技。


それを2重の檻の中で達成した。


歓声が沸く。


イリヤはしかし、それだけで止まりはしない。


それでは皆と一緒だ。


イイ女というのはその先を行くのだ。


イリヤは縄跳びから軽く片手を放す。


縄の片方が自由を得て空を舞う。


しかしその片方はしっかりとイリヤに握られており、


制御されているな。


イイ女に最も必要とされる条件。


男をある程度自由にし、しかし根幹の部分は自分のコントロール下に置く。


大縄の中でこれほどの表現を可能とするか!


イリヤが縄跳びを振るう。


それは2重の檻を通り抜けたり、内で回ったり。


しかし決して檻に干渉することはない。


他の女に近づけさせはする。


しかし、決して触れさせることはない。


触れそうになればイリヤは縄を強く引き、自分の元に戻す。


そして軽く舐める。


私のこと、忘れないでよね、と。


そう男に教え込んで、再び放つ。


その際、審査団に流し目を送ることも忘れない。


そうやって男を振り回す。


制御して、振り回す。


そしてイリヤは空中での前転を成功させて大縄の檻から飛び出る。


男に纏わり付く他の女はもううんざり!


と言うように無造作な、乱暴な動作だった。


最後の最後、回る檻はイリヤに遅れて出てくる縄を捕らえようと最後の追撃を試みる。


しかしギリギリのところでイリヤは男を一気に引き戻し、手に捕らえ、軽くキスする。


もう私のものだよ、と言うように。


そして演技を終えたイリヤは観客に一礼をする。


瞬間、ワッと歓声響き渡る。


爆発するがごときの叫び声。


中央に立ち、その歓声を受け止める。


萎縮するでなく、照れるでもなく、当然のように胸を張る。


そして退場していく。


歓声に背を押されるように。


「これはまた……」

「すごいね」


採点は当然の如く10点5つの50点。


校長は10点に0を1つ加えているがそれも当然か。


圧倒的であった。


これからやる男子達が可哀相だ。


ほぼ無視も同然であり、点数も低めにつけられた。


イリヤの演技が基準となり、採点が厳しくなったのだ。


他のクラスを低い点数に落とし、イリヤが次に託すのは6年1組が誇る最強の精神的に凸凹コンビだ。

境界線上のホライゾンの2下を読んでいたせいでかなり影響されています。


個人的には浅間の「始まったと同時に終わりましたね。もはや何の悔いもないでしょう」が一番面白いと思いますよ、ええ。

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