赤組の馬鹿
殴って
蹴って
百裂拳
配点(多射苦裟夷)
side沢木
1年生の学年種目。
名を浦玉という。
ルールはシンプル。
まず赤組と白組に分かれる。
そしてお互い両サイドに位置し睨み合う
真ん中にボールを50個ほど置く。
スタートの合図と共に駆けだしボールを奪う。
そしてそのボールを相手の陣地に置いて来る。
1度陣地に置かれたボールを排除することは不可能だ。
ちなみにそれ以外にルールはない。
何やってもOKだ。
だからヘッドキャップの着用が義務付けられている。
俺は赤組だった。
赤組大将だった。
入場して、端に寄る。
俺は真ん中のほうに進み出て白組を睨みつける。
そして赤組のほうに振り返る。
「諸君!」
「「「「「うううおおおおおおぉ!!」」」」」
「決戦である!」
「「「「「うううおおおおおおぉ!!」」」」」
「いいか!白組なんて俺達の敵じゃねえ!」
「「「「「うううおおおおおおぉ!!」」」」」
「赤組諸君!進撃せよ!進撃せよ!進撃せよ、だ!」
「「「「「うううおおおおおおぉ!!」」」」」
「ぶっ殺すぞおらああああああぁ!」
「「「「「うううおおおおおおぉ!!」」」」」
激を飛ばしてやる。
席に座っていた2年3年も立ち上がって叫び声を上げていた。
「ぶっ潰せ!」
「殺せ!」
「ぶっ殺してやれ!」
「白組全員撃滅しろよ!」
「滅白興赤!」
「「「「「滅白興赤!」」」」」
あぁ、全体主義とか軍国主義とか、こうやって形成されるんだな。
そんなことを思いながら俺は叫び声を上げる。
side喜美
私は特等席に座っていた。
「ちょっといいかしら?部長」
「あ、姐さん!」
部長の座っていた席を奪ったのだ。
「見たところ、どうかしら?」
「そうだな。戦力としては五分五分。あとは気合いだな」
「あらそう」
私は戦場に目を向ける。
火蓋が切って落とされようとしていた。
「なら、兄さんの勝ちね」
パァン!
乾いた音と共に、両軍が駆け出した。
白組は全員いっぺんに。
赤組はハッキリと分かれていた。
「「「「「突撃部隊、野球部行くぜ!」」」」」
「「「「「同じく突撃部隊、陸上部……!!」」」」」
2つの集団が先陣を突っ走る。
「おいおい、壮の奴……!」
「どうしたの?部長?」
「あいつ、クラスじゃなくて部活単位で編成してきやがった!」
side沢木
行ける。
俺は自分の奇策の成功を確信する。
クラスではなく、部活単位で編成する。
クラスの奴らよりも勝手知ったる連中で組んだほうが連携が取りやすい。
運動能力がどれくらいかわかっているので、カバーしやすいのだ。
そして部活の連中には遠慮がない。
だから、
「第2陣!テニス部!バドミントン部!パス!」
俺は声を通す。
陸上部と野球部が真ん中で相手とぶつかり、そのさい後ろへと足で蹴飛ばしたボールをテニス部とバドミントン部が確保する。
飛んだボールを捕捉するのはお手の物である。
そのテニス部バドミントン部はさらに後ろへとパスをする。
そこにいるのは、
「砲撃部隊、サッカー部!」
この浦玉のルールは、とにかく相手の陣地にボールを送ればいい。
つまり、わざわざ手で持って行かなくてもキックで飛ばせばいいのだ。
「砲撃開始!」
「「「「「かっ飛ばせ!」」」」」
号令と共にサッカー部の砲撃が開始される。
次々とキックで飛ばされ相手の陣地に叩き込まれるボール。
しかし相手も手をこまねいているわけではない。
中央に集中した陸上部と野球部を避けるように両翼からなだれ込んできた。
馬鹿め!
そこまで読んでおるわ!
「遊撃部隊!ラグビー部!」
「「「「「弾けろ青春……!」」」」」
左翼にはラグビー部が突っ込んでいく。
本職であるラグビー部は1年生ながら見事なタックルを披露しながら白組を蹴散らしていく。
白組の持っていたボールを奪い、サッカー部にパス。
サッカー部の砲撃が加速する。
右翼には文化系の部活を固めた。
質でダメなら数で勝負だ!
「「「「「俺の歌を聞けええええ!!」」」」」
「「「「「哲学、それは深遠なる宇宙……!」」」」」
「「「「「芸術は爆発だ!」」」」」
「「「「「それは囲碁とサッカーを組み合わせたまったく新しい形の遊戯……!」」」」」
「オペラ研究部、行くぜ……!」
「ローマ戦隊ゴケンテイ参上!」
途中から意味不明な部活が混じってないか?
しかしまぁそんな奴らでも集まればサッカー部だって押し返せる。
今こちらはサッカー部の砲撃によってかなりのボールを相手陣地に叩き込んでいる。
しかし中央での防衛ラインがそのぶん薄いということだ。
陸上部、野球部の防衛ラインが破られそうだ。
マズイ……あれは浦玉におけるマジノ線……!
「行くぜ特殊部隊!弓道、剣道、柔道、Go!」
だから俺は号令をかける。
「「「「「行くぜ武道組……!」」」」」
柔道部が投げまくって戦線を乱す。
そこに剣道、弓道が突っ込んでさらに混乱を広げた。
陸上部と野球部のラインが持ち直す。
ここだ!
「特殊部隊Go!」
俺は掛け声と共に走り出す。
赤組のバスケ部とバレーボール部が突っ走る。
「こっちに回せ!」
俺はボールをパスしてもらい、前を見据える。
前には野球部の背中。
「踏み渡れよ特殊部隊!」
「「「「「押忍!」」」」」
その背中に飛び乗り、足に強く力を込める。
野球部が苦悶の声を上げるが、踏ん張った。
飛ぶことになれている俺達はマジノ線を飛び越えて侵入する。
相手陣地まで10メートル。
前には今まで活躍できなくてイライラしていた敵防衛部隊がいた。
「恐れるな!突っ込め!」
「おおおおおぉ!」
「我等勝利を司る特殊部隊……!」
「チームプレーはお手の物!」
「我等こそが攻撃者!」
「赤組唯一の突撃部隊!」
だが、相手も手は抜かない。
やはりここにラグビー部が配置されていた。
「Contact!」
「「「「「GetSet!」」」」」
「touch!」
「「「「「Engage!」」」」」
突っ込んで来るラグビー部。
「うわああああ!?」
「吉田!吉田ああああぁ!」
「畜生……無茶しやがって……」
「クソッ!突破できねぇ……!」
全員苦戦を強いられている。
しかしそれでも俺達は走りつづける。
あと5メートル!
「しまっ!?」
俺はそこでラグビー部のトリプルチームにあった。
「沢木だ!潰せ!」
「コイツを潰せばいい!」
しまった……一瞬の油断が……!
「させるかあああ!!」
だが、それは防がれた。
「植松!松田!深沢!」
「ここは俺達に任せて先に行け!壮ッ!」
「植松……なんでだよ!?なんで俺を守ったんだよ!俺1人が犠牲になって、お前ら3人がトライを決めればよかったじゃねえか!」
「馬鹿野郎……そんなこと、できるわけねぇだろ」
「なんでだよ!?」
「「「俺達は、浦高バスケ部だぜ?」」」
爽やかな笑顔でそう言われた。
「早く行け……ここは俺達が食い止める!」
「壁ぐらいにはなれるぜ!」
「行くんだ壮ッ!俺達のぶんまでトライしてこい!」
「お前ら……ああ!わかったぜ!」
「そろそろいいか?」
「あ、はい。どうぞどうぞ」
ラグビー部が確認して、そこでラグビー部対バスケ部の対決が生じた。
俺はそれを避けて相手陣地に突っ込みに行く。
と、
「沢木いいいいぃ!まだだ!まだ終わっとらん!」
「クソ……」
最終防衛ラインがいた。
1年生にしてすでにレギュラーを取っているという天才ラグビー部員、宮田だ。
ポジションはフルバック。
さらに周りから運動部が飛び出して来る。
相手も温存していたのか!
畜生……負けるわけにはいかないんだ……あいつらのためにも!
やるしかない!
ここであの技を使うしかない!
side喜美
私はそのとき、すぐにわかった。
「兄さんまさか……!」
「どうした?姐さん」
疑いから確信に変わる。
「兄さんダメ!その技はダメよ!兄さん!」
しかし兄さんは行った。
「喰らえ……沢木流奥義!」
一瞬のタメから放たれる。
「トンファーキッーーク!」
「「「「「トンファー関係ねえええぇ!?」」」」」
ドゴォ!
トンファーキック。
トンファーを持ちながらキックを繰り出すという荒業。
禁術指定にもなっている危険な技だ。
「まだだ!喰らえ!トンファー百裂蹴!」
「「「「「やっぱトンファー関係ねぇ!?」」」」」
ドゴォ!
「我がトンファーは天地に一つ。ゆえにトンファーはなくともよいのです」
「「「「「本格的にトンファー関係ねええええぇぇ!?」」」」」
ドゴォ!
「トンファー置きっ放しブレーンバスター!」
ドゴォ!
「トンファームーンウォーク!」
ドゴォ!
「トンファー何もしない!」
ドゴォ!ドゴォ!ドゴォ!
「フッ……また詰まらぬものをトンファーしてしまった」
ドゴオオオオオォ!
兄さんの周りにいた全ての白組が倒れていた。
ピクリとも動かない。
兄さんは悠々とトライを決める。
兄さん……本気ってことね!
sideイリヤ
「納得いかない」
「急にどうしたんですかイリヤ?」
織火に言われて、私は織火をにらみつける。
「なんで私たちお留守番なの!?おかしいでしょ!?」
「いやぁ、喜美が来ないほうがいいって言ってたしね」
沙耶が答えてくれるが、それも理由になっていない。
今私たちは壮の家にいた。
壮の体育祭の応援に行こうかなと思って訪ねたら、みんなも来ていたので驚いた。
それで喜美に行こうって言ったら断られてさらに驚いた。
「どうして喜美だけ行くの!?おかしいでしょ!」
「だって喜美が珍しくマジだったんですもん」
織火が仕方ないでしょというように言う。
しかし私は当然納得できない。
だって婚約者だよ私?
将来の妻だよ?
奥さんだよ?
なんでダメなのか理解できない。
「えぇっと……『アンタ達が来たら犯されそうで怖いわ』でしたっけ?そんなエキサイティングなことあるわけないですよねー」
織火がのほほんと言う。
「いくら男子校と言っても、クソ親父みたいにレイパーばっかりなわけでもないし。怖いから行かないけど」
「そう、そこだよ!その理由が意味不明なの!」
私は叫ぶ。
「いやまぁ、確かに強引ですけど。いまどき日本で犯すとかないと思いますけど」
「……」
「どうしました?咲?」
「なんでもない」
「っていうか!犯されるって何?意味わかんないんだけど!」
「「「え?」」」
私の叫び声に織火、咲、沙耶がギョッとする。
「え?えぇっと……イリヤ、知らないんですか?」
「何が?犯すって他動詞でしょう?目的語がないじゃん!何を犯すの?人権?」
「「「えぇっと……」」」
織火が落ち着けと合図して喜美に電話をかける。
『どうしたのよ、織火。今戦争中だから後にしてほしいんだけど?』
「喜美、イリヤが犯すの意味わかってないんですけど。どうしましょう?」
『……任せたわ』
ブチッ!
「喜美!畜生!私に面倒ごと押し付けて行きましたね!?なんで小学生が性教育しなきゃいけないんですか?ちょっと!喜美とお兄さんのお母さーん!」
…………
「というわけだね」
「あうぅ……」
「はい!お母様の恐ろしくわかりやすいエロ講義ありがとうございました!」
「でも本当に喜美がそう言ったのかい?喜美がアンタらを置いていくとは思えないんだがね」
「やっぱり変ですか?」
お義母様から見ても変なのかな?
「何がしたいんだか……イリヤをわざと置いてけぼりにしてからかっている……ってぐらいかな?」
喜美がそんな陰湿なことするわけ……
「ありえますね」
「あるね」
「喜美ならやりかねない」
「否定できない」
喜美は何をしてもおかしくない。
「悪戯に気合い入りすぎたのかな?」
「ちょっとお仕置きが必要ですね、これは」
織火が珍しくそんなことを提案する。
「お仕置き?」
「えぇ。ちょっといいですか?」
織火が私たちを集める。
「ちょっと喜美を、泣かせてみましょうか」
なにやら不穏な動きが……
そして体育祭編が長い!
蓮里の運動会、文化祭のついでの話のはずなのに。
静まれ……僕の右腕!




