挨拶前の相談者
いつのまに
どうしてこんなに
大きくなって
配点(息子娘)
side沢木
3日目くらい静かに過ごしたい。
そんな願いが神に伝わったのか。
3日目は思ったよりゆったりすることができた。
「デカイ!デカイよ!」
沙耶が大仏を見て歓声を上げている。
「これはすごいわね……」
喜美も驚嘆の声を上げた。
昔の人の執念と言ってもいい。
「喜美、この大仏を作るのはすごく大変でな?何人もの人が死んだんだと。今でも出るらしい」
「フフフ!聞こえない!私には何も聞こえないわ!」
喜美をからかって遊んだりした。
そして和菓子作り体験ツアーへ。
「ふぅ、こんなものかしらね?」
「貴女、ウチに来ないかい?」
本気を出した喜美が誘われていた。
「壮、見て見てー」
「ん?へぇ、咲も上手いな」
咲の作ったものは丁寧で、綺麗にまとめられていた。
喜美のような馬鹿げた上手さではないが、愛情を感じられる一品であった。
「よっしゃどうですか!」
「わ!織火ちゃん上手い!」
織火も和風なことは得意なので、他のクラスメイトから感心される程度には上手い。
「お兄ちゃん、私のは?」
「イリヤのは可愛いなぁ!」
お手本を完全に無視して兎をつくっているあたりが何とも言えない。
「だああ!めんどくさいわね!こんなの丸めてポイッと口に含めば美味ッ!」
こういうのが苦手な沙耶はキレてそのまま食ってしまった。
「ぐぅ?喉に詰まった!水!」
「何やってるんだ……」
そこでお菓子を大量に買い占め、京都タワーに行く。
「へぇ、こんなビルの中に埋まっているのね」
京都タワーと言うのだから東京タワーみたいなものだと思っていたらしい。
思ったよりしょぼくてちょっとがっかりというところか。
スカイツリーもこんな感じだよな。
しかし上がってみるとこれが絶景である。
「すごい!」
沙耶が歓声を上げる。
確かにここからの光景は絶景だ。
あまり高い建築物のない京都だ。
すべて見通すことができる。
「お兄ちゃん、綺麗だね!」
「ああ、夜に来たらもっとすごかったかもな」
「じゃあ今度来よう?今度は2人で!」
「もぅ!イリヤは可愛いなぁ!」
「うわぁ、バカップルが1組。どうします?」
「男を突き落とせば?」
「引っこ抜けばいいんじゃないですかね」
「割礼!割礼!」
「おぉい!危険な単語が聞こえたぞ!?」
「お兄ちゃん、割礼って何?」
「そぉい!?」
まさかの京都タワー展望台で割礼の意味を説明するという羞恥プレイをすることになった。
しかし、当然神様もそこまで甘くはない。
「あ、壮!遅いで」
「悪い悪い。今来たトコ?」
「待ってたんやで?」
「イリヤ、ステイステイ」
「ドウドウ」
「私の扱い何!?」
「ふっふーん!壮、デートする言うたやろ?」
「いや、お前が言ってきた」
「言うたやろ?」
「言いました……」
琴美と京都駅でデートすることになっていた。
といっても、そんな甘いものではない。
イリヤが許したことからもわかる通り、琴美は俺をそういう対象として見ていない。
というか、デートとは何かがたぶんわかっていない。
「壮!あれ食べたい!」
「またか!?太るよ!?太っちゃいますよ?もうここらへんでやめようぜ!やめてくれませんか!?お願いします!」
ただの買い食いであった。
しかも2人きりではなく、みんなで。
おかで俺の財布がどんどん軽くなる。
やめてくれ。
「いやぁ、デートって楽しいなぁ!」
「トイレ」
「もうちょっと言葉を選べ、お前」
そろそろ京都駅での自由行動も終わろうかという時間。
咲がトイレに行くと言い出した。
「フフフ、私も行くわ!」
俺の合図を受けて喜美もついていく。
side喜美
「どう?修学旅行は?」
「楽しかった。ホントに、こんな幸せな旅行は初めて」
「フフフ、それはよかったわね」
兄さんからある程度の事情は聞いている。
咲を養うことになったと。
父さん、母さんには出世払いということで決着がついた。
マッスルな方々だから大丈夫でしょう。
「あー、ここ」
咲がトイレに入っていこうとする。
可愛い妹みたいな感じかしらね?
咲を見ながらそんなことを思った。
フフフ……弄れる対象ができたわ!
と、その時私の本能が警告する。
私は咄嗟に周りを見回す。
1人のオッサンが咲に近づいている。
迷いのない動き。
それに……
「ナイフ!?」
私は迷わず踏み出した。
咲を突き飛ばすようにトイレに入れて、ナイフをつかみ取る。
そのままナイフをへし折り、手首を掴んで地面にたたき付けた。
「喜美!?」
「ええ、大丈夫よ咲」
オッサンを男子トイレに蹴り込みながら咲にそう伝える。
「早く帰りましょう。バレたみたいだわ」
「了解」
咲は理解したというように頷いて急いでトイレを済ませる。
私は警戒を最大限まで引き上げた。
「……」
周りを睨みつける私を訝しむ人達もいるが、気にしていられない。
早く兄さんと、クラスのみんなと合流したほうがいい。
あの女狂いのことだ。
誰を狙って来るかわからない。
「終わった」
「OK、行くわよ」
「ゴメン、喜美」
咲が謝る。
私は一瞬咲を抱きしめてやる。
「もう私とアンタは家族よ。遠慮しないでちょうだい」
「……うん」
side沢木
「兄さん!」
「喜美、大丈夫だったか?」
「やっぱりそちらにも襲撃が行っていたのね。こっちは撃退したわ。早く帰りましょう」
「喜美、そっちに行ったのは瀧澤だったか?こっちは別の所から襲撃受けたんだが」
「瀧澤が漏らしたんでしょう?私たちなんて最優先殺害対象でしょう?狙われているのは私たちよ!」
「わかったから落ち着け」
喜美が興奮している。
旅行先で襲撃されて落ち着けというのは無理か。
そうして最後は結局、慌ただしく帰る羽目になったのだった。
「畜生!瀧澤の奴!覚えていろ!」
俺は見事な捨てぜりふを吐いて京都を後にした。
side喜美
「母さん、大事な話があるんだけど。いいかしら?」
「なんだい?またオパーイでかくなってブラジャーつけられなくなったかい?」
「あの時の悲しみと言ったら……今まで買った可愛いブラジャーが全て無駄になるんだから」
「喜美、話が逸れてるよ」
「ああ、そうだったわ。母さん、兄さんのことなんだけど」
「今度のエロゲのジャンルはなんだい?そろそろ義母モノは止めてくれないかねぇ。私が辛いんだよ」
「母さんも苦労しているわね。妹モノ発見した時の私の苦しみを味わうといいわ……母さん、真面目な話よ」
「わかってるよ。なんだい?」
「兄さんに彼女ができたわ」
「……そうかい?別に構わないが」
「フフフ、顔がニヤついているわよ?息子に彼女ができてそんなに嬉しい?」
「馬鹿言うんじゃないよ。あんな男に彼女なんて、どんな物好きかと思ってね」
「相当な物好きよ。でもね、兄さんとその子、婚約しているのよ」
「……なんだって?」
「婚約よ、婚約。意味、わかるでしょ?」
「親を試すんじゃないよ。意味くらいわかっているさ。はぁ、イリヤだろう?」
「さすが母さん」
「あんなもん見ればわかるよ。しかし婚約までかい……それは少し憂鬱だね」
「叔母さんを殺した身としては?」
「女々さんのことはそこまで思っていないよ。あれは私と女々さんの勝負で、対等だったからね」
「フフフ、まさか私の心配?」
「それこそまさか、だね。喜美の心配なんざしていないよ。生きようが死のうがアンタ次第だ」
「フフフ、なんて母親かしら。尊敬するわ」
「親なんだ。当然だろう?それより、イリヤには試練のことは話したのかい?」
「話したわよ。覚悟も決めたみたいだし」
「ホントかねぇ。甘いんじゃないのかい?」
「私から見ても甘いわね」
「でも剛志と遊んでいたのはそういう訳かい。なるほどね。喜美、お前から見てどうだい?」
「瞬殺、にはならないでしょうけど、結果は同じね。殺してしまいそうだわ」
「まぁそこはアンタらの領域だね。挨拶の日取りはある程度決めているのかい?」
「10月の中旬。10月に入る前に正式に発表するわ」
「向こうの親御さんへの挨拶は?」
「すぐに兄さんが行くことになっているわ」
「許可取れそうかい?」
「お義母は許可してくれたから大丈夫でしょう?」
「ま、女を説得できたなら大丈夫だね。男は殴れば解決だからね」
「またアグレッシブな……」
「ま、わかったよ。喜美。先に話してくれたのは正解だね」
「フフフ、そうだろうと思ったわ。先に女だけで判断しておいたほうがいいわ」
「フン、喜美もだいぶわかるようになってきたね。わかったよ。それじゃあその前に向こうさんに挨拶に行かないとね。あと、試練の準備もしておかないとね」
「フフフ、嬉しそうね」
「馬鹿言うんじゃないよ。息子を取られる母親の気持ちって言うのを悟りな。辛いもんだよ」
「母さんが手塩にかけて育てた息子を取られるんだから。辛いわね?」
「ニヤニヤしていっても説得力ないよ。まったく」
「厳しくするのは私の役目。母さんは優しくしてあげて頂戴」
「フン、わかってるよ。それじゃあ壮を呼んできな。いろいろ話さなきゃいけないことがあるんだ。婚約のことと、今回の京都での騒乱のことをね」
「わかったわ。呼んでくるわ」
sideイリヤ
「貴方、大切な話があるの」
「お父様、大切な話があるの」
「なんだい?」
「「イリヤに、婚約者ができた」」
「……は?」
修羅場……ッ!
圧倒的……修羅場……ッ!
次回……修羅場……ッ!
アカギ……おもしろい……ッ!




