浜辺の競争者
on your mark
get set!
配点 (よーいどん
side沢木
「お兄ちゃーん!!」
「おーう」
現在、合宿最終日。
地獄の特訓を乗り越えた俺達は海に来ていた。
人はある限界点を突破すると逆に元気になるらしい。
「体が軽い!軽いぞうひゃあああ!」
「アハハ水だ水だあああ!!」
元気になるというより、気が狂うのかもしれない、
俺達は最後の最後で遊ぶことを許可されていた。
しかし海ということで、トラウマ持ちの俺は砂浜で美女5人の水着姿を見るしかないのだった。
「フフッ!お兄ちゃん、どう?イリヤ可愛い?」
「最ッ高だね!さすが我が嫁!」
イリヤは薄紫の水着だ。
大きなオパーイを小さな布が包んでいる。
要するにビキニである。
小学6年生にしてこんな大人水着が似合うとはさすがイリヤ。
「フフフ、兄さん。イリヤに見取れているのもいいけれど、他の女の子も褒めなさい」
と、左から喜美が迫ってきた。
喜美の水着はギリギリ勝負の白のマイクロビキニである。
ただでさえ学校1の豊満な胸のくせしてそんな水着を着るのだ。
よっぽど自分に自信がないと着れないよな、こんなの。
「コーチ、私はどう?」
と、沙耶が視界の上から入ってくる。
黒い水着で、イリヤ喜美と同じくビキニなのだが。
フリルとかついて可愛らしくなっており、普段の沙耶とのギャップが凄く、いわゆるギャップ萌えである。
しかも下から見上げる形になるので、オパーイの下の……こう……何と言いますか。
「いい下乳だ」
「コーチ、1回天国行ってみる?」
「もうここが天国みたいなもんだ」
「なんて清々しい変態なのかしら」
沙耶がため息をつく。
「フフッ、はーい、沙耶。お兄ちゃんを誘惑するのはそれくらいね?」
「え?誘惑って?ちょっ!イリヤ!ストップ!ストップ!!ストーーーーップ!!」
沙耶がイリヤに腕を掴まれてそのまま視界から消える。
海のほうから断末魔が上がったが怖くて見れない。
「壮、どう?」
「どう、とは?」
「……楽しんでる?」
「楽しいなぁ」
咲がやって来た。
咲はパレオか。
蓮里の中では子供っぽさの残る咲に似合いまくりの水着だ。
「じゃあもっと楽しくしてあげようか?」
「咲、イリヤがすごい顔で睨んでいない?」
「沙耶を飛ばすので忙しそう」
どうなってるの!?
海では何が行われているの!?
「うふん、アンタも好きねぇ」
「……喜美、お前か?こんな言葉を教えたのは」
しかしまぁ、咲的には大人っぽく妖艶に演技しているつもりなのだろうが、子供っぽさ全開だ。
「私ならもっと過激なセリフ教えているわよ。こう、『ピー』が『ピー』で『ピー』しちゃってるわよ?フフフ、みたいな」
「もはや何言ってるのかわからねぇ……」
咲は歳相応の胸しかない。
他3人の戦力がおかしいだけなのだが。
どうしても比較してしまう分、咲は小さく見えてしまうのだ。
いや、小さいというわけでは決してないのだが。
「触ってみる?」
「イリヤに殺される」
「じゃあしょうがない」
「しょうがないな、うん」
咲との独特の会話が終わって、咲は海に走って行った。
……アイツ泳げたっけ?
「ちょっと咲ー!準備運動したんですか!足攣りますよ!」
「フフフ、このカーチャンうるさいわね」
「だ、誰がカーチャンですか!」
織火が上から視界に入ってきた。
仰向けで寝ている俺を踏み潰す勢いだったがギリギリど止まってくれた。
「……」
「?どうしましたかお兄さん?」
「……いやぁ、空が見えるなぁ」
沙耶の時は見えなかったのに。
立派な山が2つあったのに。
「胸、気にすんな」
「やかましいわッ!」
顔面に足をぶち込まれた。
side喜美
うん、兄さんも可哀相に。
胸に関しては容赦ないのよね、織火。
「まったく、私だって好きでペッタンコになったわけでは……」
ブツブツ言っている織火が可愛らしい。
「せ、せっかくお兄さんに見てもらえると思って水着を新調……いやいやいや!別にお兄さんのためではないですけれどね!」
兄さん寝ている間にそんなツンデレ発言しても意味ないわよ。
どうしようかしら?
からかうのも面白そうだが、兄さんに任せて観戦しているのも面白そうだ。
からかうのはいつもやっているし、観戦するとしよう。
「フフフ、織火。どうでもいいけど、兄さん大丈夫?」
「あれ?そういえば起きませんね。あの、お兄さん?大丈夫ですかー?」
織火が慌てて兄さんの顔の側に正座してペタペタ触っている。
ヤバい、可愛い。
なんか慣れていなくておっかなびっくりになっているところとか可愛い。
「あ、あのーお兄さん?大丈夫ですか?」
涙目になっていくところとか可愛い。
いつもはストッパー役の織火が誰かを失神させるなどないことだ。
どうすればいいのかわからないのだろう。
人を殴ることや投げることに慣れている私とは違うわね!
「う……うーん……」
「あ、起きました!起きましたよ喜美!」
「そう、よかったわね」
しまった!
王子様の目覚めにはキスが必要なのよ、とか言えばよかった!
なんてこったい賢い私がそんなミスを!
「あの……喜美、いきなりブリッジして、頭大丈夫じゃないですね」
「フフフ、いきなり断定とか調子いいわね!」
と、兄さんが完全に覚醒した。
「……おお、織火」
「お兄さん!」
「可愛い水着だな」
そのタイミングで言うとか兄さん流石ー!
「そ、そうですか?えへへ……」
「ああ、ペッタンによく似合う水着だ!」
「えへへ……死にます?」
兄さんもう色々と流石ッ!
sideイリヤ
沙耶を海に向けて放り投げると、
「頼もーう!」
とか咲が来たので足払いからの当て身で吹っ飛ばした。
うんうん。強くなってるよね。
と、お兄ちゃんのほうを見てみると織火がベタベタお兄ちゃんにくっついていた。
「フフッ、また織火かぁ!」
織火はお兄ちゃんによくべたつく。
いつもは真面目な織火が甘えられるお兄さん、ということだろう。
いつもなら絶対に見せないような甘えっぷりだ。
喜美の次に強敵かもしれない。
いつもは凛々しい子が自分にだけ甘えると男は堕ちるって言うしね!
お母様に習ったもん。
フフッ、織火?
そんなにくっついたらお兄ちゃんに織火の臭いが移っちゃうでしょ?
ダメだよー?
お兄ちゃんは私のものなんだから。
side喜美
海から殺気が来た。
殺気が少女の形を作っている。
「おーりーかー!!」
「ひぃっ!?イリヤ!?」
「お兄ちゃんに何をしているのかなぁ?」
「え、えぇっと……これはですね、そう!お兄さんがいつものように喜美に投げられて失神したんですよ」
この女、私のせいにしてきたわ。
「ふぅん、それで?」
イリヤ、ニッコリ継続。
「ええ、介抱しようと思いまして、介抱ですよ介抱!仕方ないことですよね!」
「へぇ……」
イリヤ、だんだん無表情に。
「それで顔を触れば大丈夫かなぁと」
「……」
「……すんませんっした!」
結果、イリヤの貫禄勝ち。
織火は土下座して許しを請う。
「ねぇ、織火」
いつもならイリヤはここで許して兄さんに移る。
しかし、今日のイリヤは一味違う。
イリヤは織火が土下座するその目の前に不良座りで座り込む。
「……」
「あのね、お兄ちゃんが優しいのはわかるよ?お兄ちゃん優しいもんねー。カッコイイもんねー?」
「……」
「返事」
「はい……」
怖ッ!
嫉妬に狂う女怖ッ!
「仕方ないことだよね、女ならお兄ちゃんに惚れちゃうよね?」
「はい……」
「はい!?織火、お兄ちゃんのこと好きなの!?」
「いいえ……」
「いいえ!?織火、お兄ちゃんなんて嫌いなんだ!」
「……」
やめて織火。
私を涙目で見ないで。
地震雷火事女
嫉妬に狂った女は親父の100倍怖い。
「イリヤ、それくらいにしなさい」
しかし私が止めるしかない。
なにせ未来姉である。
今のうちに制御しておかなければ後々ひどいことになる。
「……喜美がそう言うなら」
よし!私で制御できた!
「フフッ、でも織火。わかってるよね?これからお兄ちゃんとベタベタしたら……」
「だったら何ですか?」
げ、織火が逆ギレモードになった。
いけない。
いつも真面目な織火がダメな方向に行くと、驚くほど頑固になる。
「フフフ、そうよねぇ。そこは兄さんの自由よね?」
ああ、なんで私が調停役に……
いつものように暴れるんだった。
「お兄さんとどうしようと私の勝手じゃないですか!」
「お兄ちゃんはイリヤの婚約者なんだよ!」
「関係ないです!」
ああ、織火が完全にマジになった……
もう知らない。
というかアンタ達、兄さんの腹踏みながら言い合っているから、兄さん白目剥いて失神してるんだけど……
「あれ?どうなってんのコレ?」
「なんかすごいことに」
「ああ、沙耶、咲。どうしましょ?」
「うわぁ……」
2人は状況を一発で理解したようだ。
私はアイコンタクトで合図する。
2人が頷く。
「はーい、アンタ達集合!」
「「あぁ!?」」
「ほらほら!」
無理矢理2人を呼ぶ。
「やっぱ私達なら、戦って決めるのが1番でしょ?」
「「「「どうやって?」」」」
「そりゃせっかく海に来ているんだから……」
と、言いながら周りを見る。
泳ぐのは……イリヤの独壇場になるからダメ。
だったら……
「フフフ、ビーチフラッグで勝負しましょ?」
「「「「望む所ッ!」」」」
side沢木
目が覚めたら賞品になっていた。
何がどうしてこうなった。
「勝者には兄さんを1日自由にしていい権利を!」
「「「「っしゃあああ!やったるわああ!!」」」」
俺の人権は無視かお前ら。
喜美に事情を聞いて大体のところはわかった。
「5人一斉に行くわよ、いいわね?」
というわけで、蓮里小学校女子バスケットボール部ビーチフラッグ大会が開かれることになった。
大本命は喜美だろう。
兄としての身内贔屓を差し引いても最強だろう。
スタートの瞬発力、序盤の加速力、そして終盤まで加速し続ける持久力。
スタート及び最後のフラッグの取り合いは乱戦になることが予想されるため、戦闘慣れしているというのも大きなポイントである。
しかし俺を自由にするなど毎日やっているようなもので、優勝に懸ける意気込みはない。
しかし負けず嫌い且つ手加減の出来ない性格なので、あからさまに手を抜くことはしないはず。
本命は沙耶
その強靭な肉体から繰り出される突進を止めるのは難しい。
運動神経も抜群で、単純な走力なら5人では2番目だ。
戦闘慣れはしていないが、その巨体がハンデを補って余りあるだろう。
優勝に懸ける意気込みはあまりない。
どうせ俺に飯を奢らせるとかそこらへんだろう。
俺としては沙耶に優勝してほしい。
たぶん一番俺の負担が軽い。
次点でイリヤ。
フィジカルでは上位2名には及ばないものの、瞬発力は喜美を上回る。
スタート時点で抜け出せるかもしれない。
さらにこの1週間で相当訓練を積んだらしく、戦闘慣れしている。
意気込みは十分というか怖いですイリヤさん。
言ってくれれば大抵のお願いは叶えてあげるのになぁ。
次点で織火。
フィジカルでは上位3名とかなり差を開けられている。
単純な競争では間違いなく負ける。
何かしら策を練ることが必須。
しかし今のカッカ来ている織火にそれができるのだろうか?
意気込みは十分過ぎて空回りしそうだなぁ。
大穴は咲
普通に戦えば最下位は必至。
というか争えないレベル。
しかし咲の性格として、諦めることはない。
一発逆転の大技を使って来るか?
咲が優勝すれば
「あのキーホルダー可愛い」
とかテキトーに見つけた小物をねだるだけなのでそれはそれでありがたい。
咲、頑張れ!
旗が砂浜に刺さり、5人はそこから50メートル離れる。
自衛隊の皆さんも観戦に来ていた。
「やっぱ喜美姉様だろ!あの凛々しい姿!妖艶とした立ち振る舞い!小学生とは思えない大人びた発言!」
「はぁ!?マジメキャラがキレると恐ろしいんだぜ!?織火ちゃんだね!」
「いやぁ、ここはイリヤちゃんが愛の力で優勝だろ。そして『お兄ちゃん、お願いがあるの。あのね、イリヤに……』萌えええええぇぇ!!」
「うわぁ!?メディック!来てくれ!出血多量で死にそうな奴が!メディック!メディーック!!」
「でもこういう争い得意そうな元気キャラ沙耶じゃね?実際あのガタイは脅威だろ。小学生であの戦闘力……喜美姉さん、イリヤちゃん共々、小学生とは思えない見事な戦闘力だ……」
「お前素直にオパーイって言えよ」
「はっ!でかい胸にしか目がいかない男に紳士は名乗れない!小さい胸を愛でることこそ、真の紳士である。織火ちゃん!応援してるぞ!」
「じゃっかあしいわ!誰が小さいですか!」
織火、この合宿では散々な扱いだよな。
咲も同じくらい胸がないのに、この弄られようの差はなんだ?
いよいよ始まる。
俺がスタートのピストルを撃つことになっている。
ちなみに、マジのピストルである。
「位置について」
5人がスタートの体勢になる。
咲、喜美はクラウチングスタートの構え、他3人は立ったままだ。
「よーい」
5人が構える。
一瞬、全ての音が消える。
その瞬間を狙って、俺は発砲した。
「スタートッ!」
「死ねえええええ!!」
「テメェがな!」
始まった瞬間に喜美が下から上に足を振り上げる。
不意打ちの強烈なキックは見事沙耶の首を捉えて打ち倒した。
沙耶がギリギリで気づいて対処しようとしたが、まさかここまでいきなり仕掛けてくるとは思わなかったのだろう。
結局そのまま砂浜に沈んだ。
あーっと!ここでまさかの本命が脱落!
先頭を走るのはイリヤ!しかし後ろから織火がタックルだあああ!!
しかも的確に水着の紐を掴んだ!
自衛隊全員が前かがみになった!
「俺の嫁の裸体を見るんじゃねええ!!」
俺はスタートで使ったピストルを発砲して警告しておいた。
イリヤが座り込んでしまう!
イリヤここで脱落ーッ!
誰にも妨害されなかった咲が先頭を走る!
しかしそれを織火が追い上げる!
そしてその2人を獣かというスピードで喜美が追う!
「フフフ、織火にはここで埋まってもらうわ」
「なっ!?裏切るつもりか!喜美いいいいぃ!」
「アンタを優勝させるのだけは避けたかったのよ!これで私の勝ちね!」
喜美が織火をぶっ潰した!
まさかまさかの……
「イェイ」
咲が優勝だあああ!!
やったぜ!ありがとう喜美!
お前は話のわかる妹だ!
そんなイベントを最後に、俺たちは鳥取大砂漠から帰ることになった。
咲のことだから帰る途中に何かをねだるのかと思ったら、我慢した。
いったい何に使うつもりなのだろうか?
そういえば勝負の時、咲がやけに真剣だったような……
まぁいいや。
9月に入ってすぐに、喜美たちの修学旅行だ。
先生から『喜美を抑えてください!』ってお願いきているんだよな。
京都か、はぁ。また京都か……
鳥取大砂漠編完結!
微妙に伏線を残して、舞台は秋の京都へ!
京都で怨霊の封印が解けた!?
蓮里女バスが怨霊封じのために京都を所狭しと駆け回る!
そして咲から衝撃の告白が……!!
ますます加速する恋の鞘当て合戦。
乞うご期待!
※嘘です




