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星祭の天女

歌って

笑って

踊って

配点(祭)

side沢木


帰ってきてから1週間ほど、部活はオフになった。


休むという意味もあるが、この期間で切り替えろという意味が強い。


そんなわけで、時間たっぷりあるじゃんとなり、最近の蓮里はずっと1日練習だ。


「はいはいはいはい!吐いても気にせず次行こう!」

「行けるかッ!」


沙耶がトイレから戻ってきてこちらに飛び蹴りを放ってきた。



「はぁ……はぁ……」



夏休みの間は、ずっと地味な練習をしている。


フットワークを強化し続け。ディフェンスを強くしようとしているのだ。


「甘えてんぞ咲!自分追い込めよ!」

「押忍!」

「イリヤ!そんなの繰り返したところでなんの意味もねぇよ!!無理なら休め!意味がねぇよそんなの!!」

「ご、ごめんなさい!」


嗚呼、胸が張り裂けそうだがバスケで妥協はできない。


そんな中、織火が頑張っていた。


非常に集中して練習に打ち込んでいる。


「よし、お疲れ!」


現在夜の9時。


とは言っても最後の1時間半はストレッチとマッサージに当てている。


今日のウェイトは軽めで行こうということになった。





「マズイ!味に改良がなされていない!」

「なんでマッスルドリンクこんなにマズイの!?」

「フフフ、沢木家に代々伝わるマッスルドリンクよ?味がそう変わるわけがないでしょう?」


喜美もそう言いながら泣いている。


いったい誰が開発したのかわからない。


父さんが子供のときにはフツーにあったらしい。


たぶん色んな人が味の改造に挑戦して、失敗していったのだろう。


喜美なら将来改良できるかもしれない。


俺達はそこから食事に移った。


「あ、あの、お義母様!お、お手伝いしましょうか!?」

「うん?イリヤちゃんはお客さんなんだから座ってな。これくらいアタシがやっておくよ」

「いえいえ!是非ともやらせてください!」

「そうかい?そこまで言うならしょうがないね。助かるよ」

「いえいえ!」


最近イリヤが母さんを手伝うようになった。


以前からお手伝いしようとしていたのだが、その時は断られたらすっぱり諦めていた。


それが最近、断られても食らいついて手伝い、母さんとよく話すようになっている。


俺はテーブルで料理を待ちながら頑張って料理をしているイリヤを見る。


可愛い。チョー可愛い。


一生懸命頑張っている姿が新妻みたい。


慣れない台所で慌てている様子とか超最高。


と、視界に母さんが入ってくる。


「あー、ちょっと母さん。もうちょっと右に寄ってくれない?視界に入る」

「寝てな」


母さんが麺棒をぶん投げて俺の顔に直撃させた。


畜生!投げる瞬間さえ見えなかった!


相変わらずなんてチートババアだ!


「お、お義母様!これでどうでしょうか!?」

「お母様なんて言葉、アタシには似合わないよ。善喜でいいよ」

「いえいえ!是非お義母様と!」


イリヤさん。


ぶっ倒れた婚約者はスルーですか。


「フフフ、いい空気ね」


喜美が俺とイリヤを見てそんなことを呟いた。





食事が並び、みんなで食べ始める。


「あの、いいですか?」


と、食事中に織火が戦闘を止めて言う。


俺は沙耶のさらに突き込もうとしていた箸を戻して続きを促す。


「どうした?」

「明後日に近くで夏祭りがあるんですけど、行きませんか?」


瞬間、織火の手首が隣のイリヤに握られていた。


「フフッ!フフフッ!!織火もけっこう大胆だねぇ!?」

「あ!違います違います!私とお兄さんの2人で行こうとかそういうことではないですよ!?」


イリヤが手を離す。


織火の手首にはクッキリとイリヤの手形が残っている。


怖い!怖ぇけど嫉妬してくれて可愛い!


「みんなで、行きたいなと思いまして」

「あら?いいんじゃない?」

「行きたいね」

「いいじゃん。行くわよ!」

「そうだね、イリヤもみんなで行きたいな。ね、お兄ちゃん?」

「そうだな。じゃあ明後日は3時間早めて、朝6時から練習開始にして、夕方5時には切り上げるか」

「「「「「練習時間は減らさないのね!?」」」」」


そこまで甘くない。


「いいんじゃないかい?ねぇアンタ」

「ああ。楽しんで来いよ。壮、お前がキチンと見ろよ」

「わかってるよ」

「壮、お前の小遣いからこの子達の分出せよ」

「わからねぇよ!?」


俺はイリヤの分しか払わねぇぞ!


「ねぇ、浴衣で行きましょうよ。みんな持ってる?」

「あ、私持ってます」


織火が手を挙げる。


「私も一応あるわよ」


と沙耶も手を挙げる。


「じゃあイリヤと咲がないのね?母さん、貸してもいいかしら?」

「ああ、いいよ別に。何だったらアタシが着付けしてあげようかね?」

「お願いします」

「お願いします」


イリヤと咲がお願いして、浴衣で行くことになった。


え?俺?


一応和服は持っているけどなぁ……


なんか男で和服ってなぁ……


「イリヤ、俺は洋服と和服どっちがいいと思う?」

「お兄ちゃんの和服見てみたい!」

「よし来た!任しておけ!」


イリヤの意向が最優先です。





ということで夏祭り当日。


5時半にイリヤと咲の着付けが始まっていた。


喜美は手慣れているので一瞬で着てしまえる。


もはや普段着だしな。


俺のほうも慣れたものだ。


そして母さんと喜美が、イリヤと咲の着付けをしている。


「ヒマだな……」


集合は6時だ。


30分間もある。


植松にイタ電でもしてやろう。


「おう、どうした壮?」

「ちょっとちょっと植松さーん。困るんですよねぇこういうの!借りたもんはちゃんと返さなアカン言われてきませんでした!?」


切られた。


かけ直す。


「ちょっとビックリした?」

「心臓止まるかと思ったよ馬鹿野郎!」


確かに、トップクラスで貰いたくない電話だ。


「というかどうしたんだ?」

「暇つぶし」

「切るぞ」


冷たいな。


「イリヤと咲が着付けしてるからヒマだ」

「知るか。というか着付けって……夏祭りにでも行くのか?」

「ああ、そうだな」

「写真頼む!」

「貴様!イリヤは俺の嫁だ!テメェのオカズにはさせないぞ!」

「んなこと言ってねぇよ!姐さんのだ姐さん!」

「喜美の?なんで?」

「いや、ただでさえ和服が似合っている姐さんの浴衣姿を見てみたい。なぁ、壮たの」


電話をブチ切った。


「兄さん、できたわよ」


と、ついに喜美から声がかかった。


「おーう」


と振り返ると女神が1人、美少女1人、狂人が1人、鬼が1人だった。


イリヤは薄紫の浴衣だった。


綺麗な花が咲き乱れている柄で、落ち着いている。


イリヤにしては大人しいが、髪を纏めて簪を刺し、よりいっそうおしとやかになった今のイリヤには似合っていた。


「可愛いなぁ!イリヤはさすが可愛いなぁ!」

「フフッ、ありがとう、お兄ちゃん」

「さすが母さん!人に着せるぶんには最高だな!人に着せるブフッ!」


拳を叩き込まれた。


今のは見えなかった……さすがだ。


咲の浴衣は色とりどりの金魚が泳いでいるものだった。


いやぁ、喜美もセンスがいいな。


これも可愛い。


10人が6人振り返る美少女だ。


咲は髪が長く、よく俯いて物静かなので目立たない。


「咲も可愛いぞ」

「……サンキュー」


しかし今日はいつもよりはテンションが上がっているみたいだ。


いや、静かだけど。


「フフフ、私のセンスが光ったわね」


喜美が自画自賛しているが、それにも頷いてやれる。


ちなみに喜美のほうは、白を基調とした、しかし黄金の糸でふんだんに刺繍が施された豪奢な着物を着ている。


豪華絢爛という言葉をそのまま現したような着物だ。


ちなみに、金額のほうは目が飛び出るようなものだ。


喜美は先祖に感謝したほうがいい。


実際それ、家宝クラスだから。


それだけの豪華な着物を着ていて、しかし喜美自身もそれに負けず劣らずだった。


というか圧倒的に勝っていた。


家宝の着物を普段着同然に着こなしているその神経が素晴らしい。


長い髪を纏めて結わえている。


いつもと違う妹に、しかしドキッとすることはない。


もはや可愛いとかいうレベルを超越して神々しい。


そんな妹と寝食共にして11年だ。


もう慣れている。


「フフフ、それじゃあ行きましょうか?」


ということで俺はイリヤと手を繋いで、喜美は咲と手を繋いで歩き出す。




「あ、お兄さーん!こっちです!」


駅前に行くと織火と沙耶がいた。


織火は赤色を基調にした激しい色の浴衣だ。


織火のイメージとは正反対だが、それがどうしてか似合っている。


沙耶のほうは薄いピンクを基調にしている。


朝顔が咲いている柄なのが、夏っぽくてとても趣深い。


綺麗な髪を結わえていて、見えるうなじが色っぽいです沙耶さん!


「お兄ちゃん?そんなジロジロ見たら失礼でしょ?」

「はい、イリヤ様」


イリヤがギュッと手を握ってくれる。


可愛いなぁもう!


「喜美!喜美!お兄さんの手が握り潰されていません!?」

「フフフ、兄さん喜んでるから別にいいんじゃない?」

「コーチ……変態性に磨きがかかってきたわね……」


皆が嫉妬する仲の良さだ。


「それじゃあ行くか」


という俺の一言で会場に向けて歩き出す。





「あら、射的ね」


会場に入って、とりあえずブラブラ歩いていると喜美がそれを見つけた。


「ねぇ兄さん!久しぶりにやりましょうよ!一緒に射的!」


喜美が珍しくはしゃいでいる。


スタイル良くて、見事な服を着こなして、大人っぽい表情の喜美が無邪気に言うものだから、周りの男達が20人ほど恋に落ちた。


可哀相に。


コイツの狂った内面を知らないんだ、お前らは。


「射的か?まぁいいけど」


確かに、喜美と一緒に射的なんて久しぶりだ。


2人で来た時は花火だけ見ていたからな。


こんなふうに遊ぶのは久しぶりだ。


「むぅ……喜美なら、仕方ないね」


イリヤの許可も出たので俺は喜美と射的で遊ぶことになった。


射的屋のおっちゃんに金を渡して銃とコルクをもらう。


弾を詰め、コッキング。


「2人とも、えらく手慣れていますね……」


俺達の動作はほとんど無駄な動作がなかった。


おっちゃんの目が細まる。


「何を狙うの?」


沙耶のその質問に俺と喜美は失笑する。


「沢木に何を言っているの?」

「沢木が狙うのは常に1番だ」


俺はライフルを構えて、放つ。


てっぺんにあった熊の巨大なぬいぐるみの額を撃ち抜く。

1発で大きく傾いたが、倒れはしない。


しかしその向こうへ行った瞬間に喜美が次弾を放つ。


吸い込まれるようにその弾は熊の顔面をとらえ、向こうへ落とした。


「お前ら……沢木の2人かよ!」


おっちゃんが悔しそうに叫ぶ。


「本職スナイパーが射的やるんじゃねえよ!」

「フフフ、ありがたくもらうわ。可愛いものは大好きよ」


喜美がニッコリと笑ってぬいぐるみを取る。


その微笑みだけでおっちゃんは骨抜きにされた。


「いやぁ、さすがですね。喜美」

「フフフ、当然でしょ?」


このあと織火と咲がやりたいと言い、次にデカイぬいぐるみをゲットした。


「持ってけ泥棒……」

「人聞き悪いですね!」


おっちゃんがガックリしたので、悪いと思いそれ以上はとらなかった。





「あ!イリヤ金魚掬いやりたい!」

「よーし!俺とやろうか!」

「うん!」


ということで第2ラウンドは金魚掬いとなる。


「フフッ、可愛い!」


イリヤがひょいひょいと金魚を掬っていく。


なにげにすごいな。


俺のほうも負けまいと金魚を掬っていく。


「あー、破れちゃったなぁ」


ついにイリヤの網が破れた。


10匹近く掬っている。


ちなみに俺は20匹ほど。


網?とっくに破れてるけど何か?


「兄さん。そのへんでやめときなさい」

「そうだな。じゃああと2匹をひょいひょいっと!」


屋台記録26匹を打ち立てて俺達は意気揚々と次のアトラクションを探しに行く。


「あ、力比べですね」


織火がそれを見つけた。


ハンマーでシーソーの片方叩いて、もう片方に乗っている鉄球をとばすやつ。


力自慢ということで、俺と喜美と沙耶が挑戦することになった。


俺は当然のように最上級。


俺の前のラグビー部みたいなガタイの奴がやって、半分ほどとんだ。


ハッハッハ!かませ犬ありがとう!


おかげで俺のすごさがわかるってもんだ!


「イリヤ!俺に惚れろよ!」

「うん!頑張ってお兄ちゃん!」


イリヤの応援をもらった俺は勇気100倍。


俺の本気の一撃は、球を飛ばすどころか、ハンマー自体を粉々に砕いてしまった。


「はいすんませんでしたーっ!」


空中で体を捻って斜めに1回転して土下座して許してもらえた。


日本では基本DOGEZAをすれば許される。


沙耶はその怪力で中級の球を空高く吹っ飛ばし、喜美は力の使い方がうまく、一点に集中させて打撃することで成功させた。





「どうですか?」

「ああ。面白いな。こられてよかったよ。ありがとう、織火」

「いえいえ!楽しんでいただけたなら幸いです!」


織火は自分で参加することはなかったが、楽しんでいる俺たちを見ていて、とても嬉しそうだった。


誰でも自分が企画したイベントで他人に楽しんでもらえたなら、それに勝るものはない。


「織火、ありがとうな」


俺は織火の頭を撫でてやる。


真面目な織火のことだから、事前に色々計画していたのだろう。


そういうことを思うと、思わず撫でてしまう。


隣のイリヤもしょうがないなぁお兄ちゃん。という表情だった。


イリヤは肝心なところでは絶対に外さない子だ。


いつもいつも嫉妬ばかりしているわけではない。


と、


『これから、花火大会を始めます』


という無機質なアナウンスと同時に花火が打ち上がる。



パァーン!



という音を立てて花火が打ち上がる。


「フフフ、綺麗ね。一瞬鮮やかに空を照らし、そしてすぐに消える。花、火、とはよく言ったものだわ。そして、それを綺麗だと思えることが、いいわね」


喜美がそう言った。


「外国にも花火はあるけど、なんか違うよね」

「日本の花火は鎮魂の意味があるのよ。祝うだけの外国とはそこが違うわね」


一瞬でその全てを燃やし尽くす花火。


喜美は昔から花火が大好きだった。


俺が肩車してやって、喜美は一心不乱に花火を見ていた。


花火を見ているときの喜美は年相応の子供で、見ていて微笑ましかった。


さすがに小学6年生になったのでやらないみたいだ。


花火が打ちあがり続ける。


「綺麗だねぇ、お兄ちゃん」

「フッ、俺にはイリヤのほうが綺麗だよ」

「もう!お兄ちゃんったら!」


「喜美ー、なんか熱くない?いや、暑いんだけど、それ以上に熱くない?」

「熱いですねえ。砂吐きそうになりましたよ私」

「ヒューヒュー」

「真顔で言える兄さんに戦慄したわ、私」


他のみんなが何か言っているが、聞こえない。


俺はイリヤの顔だけを見ている。


花火に一瞬だけ照らされるその顔は、たまらなく可愛かった。


「ねぇ、お兄ちゃん……」

「うん?」

「大好き!」


と、イリヤが俺に抱きついて、ちょん、と俺の口にイリヤの唇を当ててきた。


「!?」

「……フフッ!」


イリヤは恥ずかしそうにはにかんで、空に目を移す。


4人はその時、特に大きな花火を見ていたので気づかなかったみたいだ。


俺はイリヤの頭を軽く撫でてやる。


まったく、かわいいなぁ!


一瞬だけ夜空を照らす花の光を受けるイリヤを見て、そう思った。





帰ってきたら、父さんに呼び止められた。


「壮、今年のぶんのキャンプできたぞ」


父さんに紙を渡される。


「おう!やっとできたか!」


その紙を見る。


1番上にデカデカとこう書かれていた。


『人気自衛隊員と行く!6泊7日のドキドキ鳥取砂丘キャンプ!』

ようやく全ての話が投稿できました。


西条と栄光もこれから絡めていけます。


これからもよろしくお願いします。

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