表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
蓮里小学校女子バスケットボール部  作者: ジェイソン
インターハイ本戦編
44/251

南国の冴え者

盛り上がってきたあああ

配点 (テンション)

side沢木


現在、俺の姿は成田空港にある。


なぜかというと、明日からインターハイだからだ。


インターハイ


全国1千万(大嘘)の高校生バスケットボールプレイヤーの頂点の戦い。


今日、その前日であった。


「あ、沢木」

「おはようございます、井上先輩」


俺は集合場所に1番に来ていて、皆が来るのを待っていた。


そして最後の2人のうち1人、井上先輩がやってきた。


さて、なんで俺たちが飛行機を使わなければいけないのか。


今年のインターハイは沖縄で行われるのだ。


暑いぞインターハイ!


キャッチフレーズである。


小学生でも考えられる。


「なんで海に行かなきゃいけないんだろうな」


と井上先輩が荷物を地面に置きながら話しかけてくる。


「大丈夫です。見るだけなら……」

「俺は見るのも嫌だ」


そこに別の声が割り込む。


「あ、部長」


部長であった。


これで浦話高校バスケット部が全員揃った。




普通、遠くでインターハイが行われるときにはすこし早く現地に行って、体を休めたりアップしたりするのが普通だと思う。


しかし俺たちはギリギリで出発することになった。


なぜか。




浦高は金がないことで有名だ。


公立のくせに県内で唯一エアコンのない高校である。


ちなみにストーブも壊れていて役目を果たしていない。


そんな学校からお金が出るわけがなく、親もそんなに負担することはできないのでこういう日程になってしまった。


強豪なんかは3日前くらいから現地入りして体を慣らしているみたいだ。


「そろったの?じゃあ行きましょ、兄さん」

「ああ……なんでお前いるんだよ」


俺の隣には喜美がいた。


「応援に決まってるでしょ、どうせ浦高に応援来ているわけないんだから」


沖縄まで来るよう奴はいない。


「フフフ、腐れ兄貴が世話になってるわ。沢木喜美よ、よろしくね?」

「「「「「よろしくお願いします、姐さんッ!」」」」」

「……兄さん、浦高には変態しかいないのかしら?」

「答えにくいから俺に振るな」





そして人生初の飛行機に乗り、沖縄に飛ぶ。


飛行機の中で、空港で買ったバスケ雑誌を読んだ。


「『あの沢木壮のチーム!台風の目になるか!?注目のダークホース!』って……まぁ確かにその通りだが」

「兄さん、1回戦の相手はどこなの?」

「1回戦は北大阪の千里山、2回戦は愛知の愛和学院、3回戦は……たぶん第1シードのコイツだな」


俺は雑誌を喜美に示してやる。


「神奈川の横浜羽沢高校……?強いの?」

「さぁて、やってみないとな」


自分でやらなければ何とも言えない。




沖縄に着いて、俺達は民宿に行った。


すごいボロ家だったが、臨海学校を経験した俺達からすればまだまだだ。


今日はとりあえず休息を取ることにする。




食事をして、ミーティングを終えて、俺たちはみんなでテレビを見ていた。


「あ、高校生クイズやってる」

「ホントだ。浦高出てるじゃん」


みんなでテレビを見ていたら高校生クイズをやっていた。


クイ研は浦高の中ではけっこう認知度が高い。


そしてけっこう人気だ。


理由は、クイ研が優勝すればその賞金でクーラーが買えるかもしれないからだ。


「2年前に優勝したときは扇風機が各教室に導入されたな。安物だったから1年持たずに壊れたけど」

「意味ないじゃないですか」


2年前の優勝を知る部長がそんなことを言った。


「第1問、白人奴隷とい」


ピンポン!


「マルムーク!」


ピンポンピンポン!


「意味がわからねぇ……」

「俺わかったけどね」


部長、流石ッス。


浦高は早押しではその強さを発揮したが、準決勝の筆記ではだいぶ苦戦していた。


もともと浦話体育学校の異名を持つ浦高だ。


一昔前のように渓流下りをしてみたりすればウチが勝つ。

体力ならどの進学校にも負けない。


だが頭脳勝負で開盛やサラールみたいな名門に勝てるわけないじゃん。


「隕石が落ちてきて、それが起こす波の高さ?……おいおい、浦高に理系の問題は無理だって」


準決勝でそんな難問が出され、テレビの中のクイ研は悩んでいた。


そして突然スッキリした顔になると答えを書くボードに数字を書いた。



「さぁ、それでは回答をどうぞ!まずは浦話高校!」

「13キロや」


先輩が無言でテレビを消して、俺達は解散した。


とりあえず、今年クーラーが導入されることはない。




side健二


インターハイ本戦がそろそろ始まる。


見たかったが、沖縄で行われるということで断念した。


しかし何とかして見たい。


そんな俺の様子を知美は見ていたみたいだ。


インターハイ本戦が目前に迫ったある日の朝食で、知美は突然切り出した。


「健二さん!喜美がビデオ撮って送ってくれるそうです!」

「え!?」


聞けば、喜美に頼み込んでビデオを撮って送ってもらうようにしたそうだ。


「兄さんの出る試合しか撮らないわよ?」


ということだったがそれでもOKだった。


それを知った時の俺の喜びようと言ったら半端じゃなかったらしい。


母さんの証言によると知美に抱き着いてしまったそうだ。

それくらい嬉しかった。


全国の実力を見られる!


そしてインターハイ本戦の初戦が終わった次の日、さっそく1回戦のビデオが届けられた。


俺は知美と一緒にそれを見ることにした。




1回戦は北大阪の千里山。


誰もが知っている強豪であった。


「あ、始まりますね」


喜美のビデオは試合開始した瞬間から回りはじめた。


ボールがトスされ、壮が弾いてそのまま自分で持つ。


「壮さんってポイントガードなんですか?」

「いや、たしか壮はフォワード……ということになってるよ。実際は1番から5番までこなすユーティリティープレイヤーだ」


そのボールハンドリングの上手さ、驚異的な運動能力の高さ、さらに高い身長。


あらゆるポジションで活躍できるタイプだ。


壮から植松へボールが回る。


植松から井上へ。


そして島田へ。


あの千里山を相手に翻弄している。


恐ろしく息のあったパスワークだ。


島田がシュートを打つ。


3pからのシュートは見事に決まった。


「あれだけプレッシャーかけられているのに……!」


知美が驚く。


ビデオの中で喜美の歓声が響く。


千里山のオフェンスになるが、千里山のエースは完全に壮に抑えられていた。


猿のように、といえば悪口にしか聞こえないが、ホントに猿みたいなディフェンスだ。


野生味あふれており、アグレッシブに行く。


結局千里山は1度も中に切り込むことができなかった。


外から打たされたシュートはリングに当たることもなく浦話の部長が取る。


そして壮にパスが渡る。


ファストブレイクだ!


壮が3pライン付近でボールを取る。


その時点で千里山は4人が戻っていた。


突っ込むのは厳しい。


壮もそう思ったのか、左の植松にパスを出す。


「へ?」


知美が間の抜けた声を出す。


しかし俺は反応することさえできなかった。


植松は飛んできたボールを、まるでバレーボールのように、手で弾くようにして上にトスを出す。


ノータイムで繋げられたパスに、しかし壮は反応してみせた。


千里山が全員唖然として見ている中で、壮はトスされたボールをバレーボールのスパイクのようにリングに叩き込んだ。


「っしゃああああ!!」


っしゃああああ!!じゃねえよ。


なんだそのでたらめなコンビネーションは。


一瞬で反応した壮もだが、そのようなパスを出そうと思った植松もかなりのものだ。


パスの一点特化か……。


もしかしたら今では植松のほうが俺よりポイントガードとしては上かもしれない。


「い、今のって……」


知美も声を震わせる。


「ああ」


俺はこれしか言えなかった。


「これが、全国だ」





side沢木


よっしゃあああ!!


練習の時に、


「植松!バレーやろうぜ!」

「はぁ?なに言ってるんだお前?」

「はいトス!」

「お、おう・・・・・・」

「はいドーン!!」


とかやっておいて甲斐があったぜ!


まさかバレーの頭文字のVサインを出しただけで考えが伝わるとも思わなかったが。


「いや、ぶっちゃけパス出した自分が1番驚いているんだけど……」


植松が言いながら戻る。


千里山は明らかに浮足立っている。


千里山はランアンドガンを得意としているチームだ。


早い話が超攻撃的チーム。


そんな攻撃的なチームへの対策は2つある。




俺は昨日、ミーティングを開いていた。


「1つ目は、こちらが時間一杯で攻撃をして相手の勢いを削ぐことです」


「まぁ常識だわな」


井上先輩が頷く。


「セオリーというか定石というか……」


島田先輩もそう言う。


「まぁ、そうですよね。でも今回はこれはやりません」

「は?なんで?」

「1つ、千里山はそのような相手には慣れていること。全国区の強豪ですから、経験はかなりあるはずです」

「ふむ」

「2つ、これをやるためには必然的にハーフコートオフェンスをしなければいけない」


俺は指を2本立てながら言う。


「千里山はディフェンスもしっかりしています。時間をかければ、相手に余裕を与えるだけです」


3本目。


「3つ、だってそんなの詰まらないじゃないですか」


「「「「賛成!」」」」




というわけで、止めるのではなく、加速させる。


浦話はそれを選択した。


「クソッ!沢木ッ!」

「ハッハッハ、成長してねえなお前」


相手エースは俺が中学2年の時に破った奴だった。


今2年生みたいだが、まるで成長していない。


その相手エースからガードへボールが戻される。


「っと」


植松がすぐにつく。


千里山はここで冷静になるべきだった。


しかし試合に夢中になっている高校生のその判断は酷だ。


ガードは無理に突破しようとして、一瞬で植松と島田先輩に囲まれた。


植松がボールを奪い取り、前に思い切りぶん投げる。


俺はボールが放たれる直前にスタートを切った。


いきなりのターンオーバーに千里山は反応できていない。

俺は楽々ボールを取ると、リングにボールをたたき付けた。


「ッシ!!」


思わず咆哮を上げたら千里山にタイムアウトをコールされた。





タイムアウト


「いいですよ!相手浮足立っています!このまま潰しましょう!」

「おう!島田!お前の相手、沢木がボール持ったらそっちに目がいってる!チャンスあったら裏からもらえ!」

「押忍ッ!」

「っしゃあ行くぞお前ら!」

「浦高!」

「「「「ファイッ!」」」」

「浦高!」

「「「「ファイッ!」」」」

「浦高!」

「「「「ファイトッおおおおおおお!!」」」」




side喜美


1Q残り2分。


現時点で兄さんが28、相手が23とか、どんだけハイスコアゲームなのよ。


絶対に100点ゲームになるわね、これ。


試合が再開される。


相手のオフェンスからだ。


相手のオフェンスも流石で、個人の力で抜いていく。


相手が1本返した。


相手方の応援団が大騒ぎしている。


負けないわよ?


「1本、獲るわよ!}


声を凛と通す。


植松がこちらを見て親指を立てる。


そしてそのまま上がる。


速い速い!


相手に体勢を立て直す暇を与えない。


兄さんは植松と併走するように走りこんできた。


植松が兄さんにアリウープのパスを出す。


しかし兄さんのマッチアップ相手が飛び上がって、なんとか兄さんの侵攻を阻もうとする。


兄さんは飛び上がって何とかボールは確保したが、相手が邪魔でアリウープができない。


どうするか。


兄さんは空中から下にパスを出した。


上から少し下に押すようにパスを出す。


緩やかに落下するボール。


その予想外な軌道に千里山の足が止まる。


しかし浦話はそれを当然というような様子だ。


2段パスでフワリと下がってきたボールを植松が取る。


そのまま飛び上がって、ダンクを決めて見せた。


……ああ、なるほどね。


これがいわゆる、空中戦ってわけね?


植松もキチガイじみた強さだな……

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ