試合途中の会議者
大事な試合
その途中に
笑えるということ
配点(余裕)
side沢木
さて、1Qも終わりか。
点数は
蓮里34ー18西条
ダブルスコアにできなかったのが残念だ。
まぁ咲が早々シュートタッチを取って決めてくれたのがこの点差の原因だった。
しかし外からのシュートが全て落ちたとしても負けるとは思えない。
知美もあそこでよく喜美から点を奪ったが、それも1回だけだった。
あとは完璧に抑えた。
ペイント内は完全に制圧している。
引っ込み思案な美奈が凶暴な沙耶とマッチアップというのは可哀相な話だ。
「まだ取れるわよ」
喜美が開口一番そう言った。
出てきた言葉がそれかよと呆れる。
ホントに目線が高い奴らだ。
満足するってことを知らない。
「兄さん、次はどうするの?」
「好きにしろ」
本心からの言葉だった。
面倒だからではない。
イヤ、ホントに。
「織火、お前が考えろ」
「え?そこまで決めていいんですか?というかコーチの仕事じゃないんですか?職務怠慢じゃないんですか?馬鹿ですか?死にますか?」
「お前そんな俺のこと嫌いだったの・・・・・・」
ショックだった。
「まあそれは置いといて」
置くなよ。俺の尊厳に関わる問題だぞ。
「コーチにだって考えはあるはず。うん。きっとある……?」
なんだろう。俺そんなに信用無いのかな?
「お兄ちゃんなんだから何も考えていないようで考えているかもしれないはずだよ!」
「イリヤ!俺のことをわかってくれるのはもうお前だけだ!」
イリヤに抱き着く。
さすがだよ我が嫁!
「うんうん。そうだよ、お兄ちゃん。お兄ちゃんのことをわかっているのはイリヤだけなんだから、他の女はお兄ちゃんのこと何にもわかってないんだから。お兄ちゃんはそんな奴らについて行っちゃダメだよ?」
「はい!もうイリヤしか見ません!」
「よしよし」
イリヤに撫で撫でされて天にも昇る気持ちになる。
「喜美、お兄さんが陥落しましたけど」
「無血開城も同然じゃない」
「他の女って私も?」
「えぇ!?ちょっと!私たちまで標的に入るの!?」
「ヤンデレモードのイリヤを相手にするのはちょっと・・・・・・」
「というかあれってイリヤが兄さん好きってことなの?」
「それもはっきりしないわよね。ツン・・・・・・ツンヤン?」
「最悪ッ!それ最悪!」
他の奴らが俺とイリヤの仲のよさをねたんで何か言っているな。
「あの、試合始まりますよー?」
織火の言葉で俺達は今が試合中だということに気づいた。
2Q
side織火
さて、お兄さんにはあんなこと言ってしまいましたけど、一応理由はわかっている。
お兄さんだって現役の選手。
いつだって私たちの試合についているわけではない。
大切な試合の日にいないかもしれない。
そんな時、お兄さんがいないことを言い訳にして負けるなどあってはならない。
私たちだけでも勝て。
お兄さんはそう言いたかったんだろう。
もっとも、私がお兄さんのことわかっているみたいは発言したらイリヤが……!
前を見たら奈那子が迫って来ていた。
「咲!」
咲にボールを飛ばす。
咲がわずかに触れてボールの軌道を変える。
そのトリッキーなパスに西条は動くことができない。
「ナイス!」
沙耶がそれを受け取りダンクを決める。
この事実は大きい。
今私たちは喜美とイリヤ抜きで決めたのだから。
「ナイス、咲」
「織火のパスがよかった」
「3人とも、よかったよ!」
イリヤに言われてさらにうれしくなる。
もうこのチームは喜美とイリヤのダブルエースチームなどではない。
私も勝利に貢献していると胸を張って言える。
side知美
まだまだっ!
疲れはまったく無い。
アドレナリンが分泌されているのだろう。
よく知らないけれど。
蓮里の攻撃は私の心に薪をくべているようなものだ。
気合の炎がさらに燃え上がる。
面白い。
本当に、面白い。
負けているんだけれど、みんな苦しそうなのだけれど。
みんなには本当に申し訳ないけれど、面白い!
何をしても止めてくる。
どれだけ思い切りぶつかっても揺るぎもしない。
なんて懐の深い……!
もっと、もっと!
「奈那子ッ!」
ボールを受け取り、切り込む。
前回と同じからめ手を使ってみる。
美奈をスクリーンにして喜美をこそげ落とそうとする。
「スイッチ!」
喜美の叫び声で沙耶が私のマッチアップに付く。
美奈ほども身長がある。
そしてその威圧感は美奈の比ではない。
本当に、蓮里は1人1人が面白い。
しかしこの身長差はさすがに覆そうにない。
「奈那子」
奈那子に返して、私は右に寄る。
そして雪をスクリーンにして一気にペイント内に侵入した。
それを見ていた奈那子がパスを飛ばしてくれる。
前はこれで決まった。今は、
「フッ!」
イリヤが目の前にいる。
かまわない。正面から打ち倒すまでのこと。
side健二
「すごい……」
思わずそんな言葉を漏らすような攻防だった。
知美が上手くパスをもらい、リングに向かう。
そこをイリヤが止めに来た。
知美は思い切りぶつかっていき、ほとんど押しのけるようにしてスピンムーブでかわそうとする。
しかしイリヤはそれを同じくファールぎりぎりの押し具合で抑えようとする。
イリヤのほうは僅かにボディーバランスを崩せば即ファールだろう。
喜美のような安定感はないけれど、ぎりぎりの綱渡りを続けていた。
しかしここでは知美に軍配が上がる。
知美はスピンムーブをフェイクとして使い、途中で逆にスピンしてイリヤを抜いた。
トニー・パーカーが得意とするスピンムーブフェイク。
かなりの技量が必要なのだが、もう驚かない。
このコートでは何が起こっても不思議ではないのだ。
「よっしゃああ!!」
知美が咆哮する。
喜美相手ではないけれど、同じくらいクセモノのイリヤを抜いたのだ。
少年漫画的には相手のエースじゃないんだけど強敵っぽく描写されてる奴を倒したときみたいな。
知美はこの勝負まったく諦めていないし、当然他のみんなも諦めていない。
20点差がなんだ。そんなもの3pプレイ7連発であっという間に逆転じゃないか。
「止めるよみんなっ!」
「おうっ!」
「わかってるわ」
「相手を止める!」
「次はもう、決めさせません!」
プレイだけではなく、声でもチームを引っ張る。
今の知美は完全にエースだった。
「フフフ、いいわね。でも、勝つのは私よ」
それに対峙するのは相手エース。
知美VS喜美
本日何度目になるかわからないようなエース対決の火蓋が切って落とされた。




