再戦場の制止者
止めて見せろ
配点 (リゾンベ)
side沢木
第1試合の栄光Bが終わり、次は西条だった。
あれから1ヶ月。
はたして実力の差は広がったのか、狭まったのか。
少し休憩を挟んで試合に入る。
「お前ら、やることはわかっているな?いいか!あんなの相手じゃねぇ。蹴散らすぞ!」
「「「「「押忍ッ!」」」」」
side健二
あれから1ヶ月。
目標にしてきた相手との試合だ。
先ほどの栄光との試合で自信はつけさせてもらった。
知美たちは弱くない。
それがはっきりとわかった。
今なら、手が届くかもしれない。
蓮里のメンバーにも、あの男にも。
「みんな、思い切り、楽しんでいこう!」
「「「「「はい!」」」」」
声をかけるとみんないい返事を返してくれる。
みんなのやる気は十分だ。
「行くぞ!」
特に知美が。
前の試合では喜美に完膚なきまでに抑えられた。
果たしてリベンジができるのか。
こういう展開、すごく好きだ。
ライバルに挑むような。
少年ならみんな好きだろう。
だからここでかけるべき声は
「倒して来い!知美!」
「はい!」
落ち着かせるのではなく、むしろ奮い立たせる。
ポイントガードは奈那子がやってくれる。
なんの縛りも無い。
思い切りぶつかって来い!
side知美
あの試合以来、片時も忘れたことは無い。
同世代の相手に負けたのはあれが初めてだった。
完全に押さえ込まれ、完全に抜かれた。
ほとんど喜美の掌の上で踊らされたような試合だった。
あれから必死で練習した。
健二さんにも協力してもらって、いっぱい練習した。
確かに喜美ちゃんの170の身長は脅威だ。
でも、私だって健二さんをずっと相手にしているのだ。
小さい背丈で大きい相手を倒す術はたくさん持っている。
「フフフ、いい顔ね。よろしく」
「よろしくお願いします!」
キャプテン同士の挨拶をする。
今日、私は喜美しか見ない。
喜美を何とかして止めてみせる。
それはみんなに申し訳ないことかもしれないけれど、
私にだって、プライドがあるん。
同世代なら私が最強。
こんなこと恥ずかしくて誰にも言えない。
世間知らず、井の中の蛙など、色々言われるだろう。
でも、確かにこの胸にはそのプライドが宿っている。
私が1番強い。
誰にだって負けたくない。
どんな相手にだって負けたくない。
そんな強烈な対抗心が胸の中で燃え盛る。
前はこの炎のせいで疎まれた。
今は違う。
みんなわかってくれる。
私のこういう一面も、わかってくれる。
だから、思い切り行かせてもらうッ!
side喜美
相手からのプレッシャーが半端なものではない。
知美、気合入ってるわね。
諦めない女の子は好きよ。
無様に地に伏しても起き上がるその根性、気に入ったわ!
思い切り地面に叩きつけてあげる!
side健二
少し練習して、ついにボールが上がる。
「ハイッ!」
「あ……」
美奈も思い切りとんだが、それ以上に沙耶がとんだ。
身長は同じくらいなのだが、タイミングとジャンプ力が段違いだ。
ここは仕方ない。
とめればいいだけの話だ。
相手コーチの壮が何を仕掛けてくるのかはまったくわからない。
それでも、前よりは肉薄できるはず!
「織火、ちょうだい」
「はい喜美」
喜美にボールがわたる。
すばやく知美がディフェンスにつく。
すばらしい。僅かな隙も無い。
知美のこの試合にかける意気込みが伝わってくるというものだ。
「ヤッ!」
「あら!?」
さらにスティールを仕掛ける。
喜美が焦った様子でなんとかボールをキープする。
ドリブルを始めて、知美を肩で押す。
「チッ……イリヤ!」
「任せて」
喜美からイリヤにボールがわたる。
それを止めるのは雪の役目。
「抜かせねえ!」
「やってみなよ!」
イリヤが一気にトップスピードに持っていく。
ほとんど抜かれかけたが、ぎりぎりのところで押しとどめた。
かなり進攻されたが、まだ守れる範囲。
「沙耶!」
というのはさすがに甘かったようで。
止まると同時に右で持っていたボールを背中を通して左に送る。
バックパスを受け取ったのは一気に突っ込んできた沙耶だった。
「っしゃあああああ!!」
きっちり押し込まれて、先制点を取られる。
うぅ……やはり一筋縄ではいかないか。
イリヤもかなり脅威だ。
雪がイリヤをどこまで押さえられるか。
side知美
喜美ちゃんに攻撃はさせなかったけれど、結局決められた。
私がヘルプに行っていれば……。
思うが、無理だろう。
私は3p付近で喜美をにらんでいなければいけなかった。
ローポストでの戦いはみんなに任せるしかなかったのだ。
大丈夫。前とは違う。今の私には仲間がいる。
「知美ッ!」
奈那子からボールをもらう。3pで再び喜美と対峙する。
「フフフ、いいわ。かかってきなさい」
「行きます」
言ってから、突っ込む。
当然止められる。
「まだっ!」
そこから一気にターン。
喜美の左を抜いて、そのままレイアップで決める!
「さぁ、どうするの?」
それでも一瞬で反応してコースを塞ぎに来る。
なんだか、反応が早すぎるような……?
「まだまだっ!」
さらにそこから止まって、シュートフェイクを一個混ぜる。
「ッ!」
喜美はとばなかった。
ここで飛んでくれたらどれだけ楽だったか……。
もう1回フェイクを入れてもしょうがない。
私は喜美に背中を向けて由梨を呼ぶ。
「由梨!」
「任せて!」
由梨がこっちに来てくれる。
後ろで喜美の体が緩むのがわかった。
「そこ!」
その隙を突いてターンアラウンドのフェイダウェイショット。
「甘いわ!」
それでも後出しでとんだ喜美に弾かれた。
やはりこの身長差は厳しい……!
エアボールになり、駆け込んだ織火が掬い取る。
「イリヤ!」
織火が叫んでイリヤにボールが飛ばされる。
飛ばされる……?
「速攻!」
言っても遅い。
ロングパスは完璧に通り、咄嗟のことに反応できなかった雪はイリヤにおいていかれ、ドリブルなしでシュートを決められた。
私のせいだ。
私が……!
顔を思い切り叩く。
何を考えているの知美!
弱気になってどうするの!
喜美に勝つんじゃなかったの!?
「次は取る!」
だから言うべきはゴメンという後ろ向きの言葉ではない。
次に目を向けた言葉だ。
「おう!ガンガン行くぜ!」
「思い切りやっちゃって!」
「どうしてもやばかったら、由梨に任せて」
「リバウンドは私が頑張って取るから、思い切り!知美ちゃん!」
そう答えてくれる仲間がいるのだから。
side喜美
知美、前回とは別人のような迫力だ。
あそこでは由梨にパスをすると思った。
まさか自分で打ってくるなんて予想外だった。
ぎりぎりで反応してくれたけれど。
また奈那子から知美にわたる。
「いいわ、何度でも挑みなさい。高嶺の花に」
「行きます!」
といって突っ込んでくる。
速いが、愚直。
感覚が反応できる。
「奈那子!」
と、パスアウト。
それもそうか。
私との1対1にこだわりがあるといってもバスケは5人でやるものだ。
「はいはいっと……雪!」
「由梨!」
ボールが流れるように回る。
ホント、チームワークは完璧ね。
ほんの僅かでもフリーになった選手を見逃さない。
それにお互いがどこにいるのか完璧に把握している。
「そこッ!」
と由梨がノールックで右後ろにバウンドパスを送る。
そこにいるのは先ほど由梨にパスを送った雪。
パスを送って、美奈をスクリーンにしてイリヤを落としてフリーになっていたのだ。
「っと」
気負い無く決める。
2pだけれど、キチンと決めた。
でも、パス回しが多いということはそれだけターンオーバーの危険があるということ。
甘いパスはすぐにカットするように練習している。
織火が一気に攻めあがって、私にパスをよこす。
知美と対峙する。
さてさて、どうしてやろうかしらね。
思い、走る。
全力の一歩目をぶち込む。
一気に引き剥がしてリングに向かう。
飛び上がる。
後ろで知美も飛び上がるのがわかった。
私は慌てずに一度シュートに行こうと上げたボールを下げる。
さっきまでボールがあった場所を知美の手がすり抜ける。
「よっと」
私はそれを確認するよりはやく再びボールを上げていた。
そのまま決めてやる。
「今の……ダブルクラッチ!?」
知美がこちらを睨み付けて叫ぶ。
さて、止められるかしら?
この私を!




