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未来への踏み出し者達

迷い無く

前を見て

踏み出す者達

配点 (これから)


side知美


校舎を見上げる。


私はこれから3年間、親元を離れてここで過ごすことになる。


この選択に後悔はない。


手に持った荷物を肩に担ぐ。


正門には、2人の金髪の少女が待っていた。


「……行きますか」


そして私は、春沼中学校に足を踏み入れた。






side壮


「続きまして、バスケ部です。バスケ部、お願いします」


「はいッ!」


アナウンスの声に大きな声で返事をして舞台袖からステージに歩く。


ステージ中央に立ち、ズラッと並んだ1年生のほうを向く。


お、アイツ背が高いな。


あの茶髪ヤロウ、中々よさそうだ。


おぉ!すげぇガタイのヤツがいる!


あれはラグビー部と争奪戦になるだろう。


そんなことを思いながら、マイクのスイッチを切る。


そしてマイクを投げ捨てる。


ゴンッという音に何人かがビビる。


これくらいでビビッてちゃぁ、この学校ではやっていけないぜ?


不敵に見回して、ニヤリと笑う。


1年、お前らに期待してるぜ。


そう思い口を開く。


腹の底から、全力で。


「お前らあああああああああああああああああぁ!!バスケ部に来いやあああああああああああああぁ!!」


「「「「「……」」」」」


「返事は押忍ッ!だろうがああああああああああああッ!!」


「「「「「お、押忍ッ!」」」」」


「俺らと一緒に、もう1度全国制覇、してみようかああああぁ!!」


「「「「「押忍!!」」」」」


「声が小せぇッ!」


「「「「「押忍ッ!!」」」」」


「腹の底から声出せええええええぇ!」


「「「「「おおおおおおおおおおおお押ッッッ忍!!!」」」」」


「よおおおおおおおし!バスケ部は!フレッシュメンを求めているッ!初心者でも大歓迎だあああああぁ!今日の放課後、体育館に来いッ!!全国1の練習を体験させてやるぞおおおおおおぉ!」


「「「「「おおおおおおおおおおおおおお押ッッッ忍!!」」」」」


「っしゃあああああああああ!以上だオラァ!」


スポーツにおいてもっとも難しいとされる、連覇。


その難行への1歩目を、浦話高校バスケットボール部は踏み出したのだった。







side楓


「入学式っつってもあんまドキドキしねぇよなぁ」


「校舎、ほとんど同じですもんね」


「周りの連中全員顔見知りってどういうことだよ」


「そんなもんですよ、小中高大一貫校なんて。でも、新しく来た人もいるじゃないですか。ほら、この前練習に来てた横松さんとか」


「でもなぁ、フレッシュな気分じゃねぇよなぁ。しかもまた先輩出来んのかよ。私後輩かよ。あぁウゼェ……」


「先輩たち、ほとんどイイ人だからいいじゃないですか」


「ごく少数の嫌なヤツがホントに嫌なんだよ」


「ま、適当に上手くやってくださいね」


「あああぁぁ……また梨花とか人間関係下手なヤツのフォローしなきゃいけねぇのか。あぁ……」


「まぁまぁ。私もサポートしますから」


そういわれて、改めて隣の少女を見る。


平凡な顔立ちながら、目には強い光を宿している。


「あぁ。美紗がいるなら、いいかもな」


「百合ッ!楓もついにそっちへ走ってしまって……」


「ちげぇよ馬鹿」


美紗の頭を先生たちに見つからないように叩く。


「次変なこと言ったらスカートめくるぞテメェ」


「な、なんという脅し……」


ワナワナと震える美紗に、苦笑する。


「ま、また私と美紗でスターターの座を奪い取るか」


「で、全国優勝まで一直線と」


「あぁ。今度こそ、全国に行くぜ」


美紗と拳を突き合わせる。


と、校長の話が終わったのでおしゃべりをやめる。


ま、ここからまたスタートだな。


心の中で呟く。


名門栄光の復活劇が、ここから始まる。






side琴美


「いやぁ!同じクラスやなぁ、あーちゃん!」


「中学まで来て琴美と同じクラスとは……腐れ縁やなぁ」


「ええやんええやん、腐れ縁!ここまで来たら2人で突っ走るで!」


新しい学校、新しいクラス。


みんな緊張して口数も少ない中、私とあーちゃんだけは空気を読まずにハイテンションで話していた。


「あ、もうバスケ部勧誘された?私さっきそこで部長にされたけど」


「私もされたよ、琴美。たぶん桐生院上がりは全員勧誘されてるやろ」


「そうかそうか。これはまた、面白いチームになりそうやなぁ!」


「先輩も……一風変わってたしなぁ」


「あー、楽しみや!はよ放課後にならへんかなぁ!」


「琴美、少しは落ち着き……」






side横浜羽沢


「ふぅ」


「よ、疲れたか?」


「いや、全然。というか、入学式当日に練習させるってどうよ?」


「最高だな」


「そうね」


横浜羽沢では、2人の大型新人がすでに存在感を出していた。


全国から腕に覚えのある猛者達が集まっている中で、なおこの2人は埋もれない。


「私、フォワードにコンバートしてもらおうかな……」


「sgじゃ勝てない……」


そんな声が1年生の間から漏れているが、2人はそ知らぬ風に練習を続ける。


王者、横浜羽沢。


狙うは全国優勝のみ。


「うんうん、いい空気だよねぇ?」


「貴方がいると途端に空気悪くなるんだけど……」


菫が振り返った先、ニヤニヤと笑う少女がいる。


東福岡から単身やってきた林檎が、そこにいた。


「ほらそこ1年!しゃべってるんじゃない!」


「はいはーい」


先輩の声も、そんな返事で受け流す。


こいつは大物だと、改めて菫は思う。


もーちゃんは抜けてしまったけど、林檎が来た。


私、松美、林檎。


この3人なら、今度こそ手が届く。


全国の頂点に。


王者横浜羽沢は始動している。






side知佳


「あー、なんでこう沖縄は毎回はぶられるのかなぁ?全国上位が全然来なかった……」


新学年早々、うなだれながら歩く。


「いやいや、気を落とすわけには行かないって!大丈夫。私の沢木流地獄特訓を課せば、みんな強くなるって!よっしゃ!」


私の高校に入ってくる新しいバスケ部員が地獄行き決定になった瞬間であった。


「そういえば、中学のほうに誰か来てたっけ?ま、いいか、どうでも」


なにやらアメリカ出身の化物みたいな女子が来たそうだが、あまり私には関係ない。


こっちは壮君と違って、自分のことで忙しいのだ。


「さて、どんな特訓にしようかなぁ」


部員たちの地獄の行き先を考えながら、少し顔を上げて歩く。


今年の夏は、再び最高に熱くなりそうだ。






side蓮里


「示し合わせてもいないのに、全員同じタイミングで校舎に着くとは……なんかもう不気味なんですけど」


「いやぁ、全員が遅刻ギリギリ主義だからね。そりゃ会うって」


「そもそも私と沙耶、家出てすぐ会ったし」


「そうそう。腐れ縁ね」


新しい校舎の前、私たち5人は揃って立っていた。


遅刻スレスレの時間なので、周りに人はあまりいない。


ましてこんな豪胆な1年生など、他にいるわけが……


「や、やっと着いたぁ……」


いた。


私たちの後ろ、校門から入ってくる影が1つ。


大柄な女の子だった。


手汗でシワシワになったプリントを握り締め、膝に手を当てて呼吸を整えている。


「……わぉ、いたね、私たちよりすごい子」


「これは大物ですね。入学式当日に遅刻してくるとは」


イリヤと織火が喋ると、その女の子がこちらに気づいて駆け寄ってくる。


「あ、あの先輩!」


「先輩?」


「私たちのことでしょ」


「勘違いされてもしょうがないよねぇ」


女の子はどう勘違いしたのか、私の前まで来て頭を下げる。


見たことがない顔。


少なくとも蓮里出身ではない。


「なに?」


「遅刻、してないですよね?大丈夫ですよね私?」


そう言われた瞬間、パッと閃いた。


「フフフ、なに言ってるの遅刻よ」


「そ、そんな!」


「でもね、私の素晴らしい権力で不問にしてあげることができるわ。ま、条件があるけどね」


「条件ですか?わ、わかりました。何ですか!?」


「それはね」


ゆっくりと言って、ニヤリと笑う。


「我が女子バスケットボール部に、入部することよ」


「え?バスケット?は、はい。わかりました!」


「よし!」


新しい環境。


新しい仲間。


未知の領域に、私は足を踏み入れる。


「じゃあ、行きましょうか」


「「「「押忍」」」」


「お、押忍?」


これからは、今までよりもっと面白くなる。


そんな確信を、抱きながら。


桜舞う日、私たちは新たな1歩目を踏み出す。

これで蓮里小学校女子バスケットボール部、完結です。


約1年間続いてきた作品、どうだったでしょうか?


自分としては、女性の強さを中心に書いてきたつもりです。


喜美の言動に、それがあらわれていると思います。


また、自分の目標として敵もできる限り魅力的に書くというものがありました。


春沼などどうだったでしょうか?


春沼のほうが好き、という人がいてくれるなら作者としては本望です。


どういう物語にしようなど考えず、勢いだけで書いてきた作品ですが、多くの人に読んでもらい、ありがたい限りです。


恐らく蓮里シリーズはこれで終わりとなりますが、他の作品は書いていくつもりです。


他の作品も読んでもらえると嬉しいです。


それでは、蓮里小学校女子バスケットボール部を読んでいただき、ありがとうございました。

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