窮地の策士
ありえないなんて
ありえない
配点(謀略)
Side知美
この子本当に強い・・・・・・!
底が知れない。同世代ではこれだけ強い子は初めてだ。
でも、負けられないよね!
この試合負けるつもりはない。
初めての他校との練習試合。
みんなに勝ちを教えてやる!
「負けるわけには・・・・・・いかない!」
「負けず嫌いは好きよ、私」
こちらのオフェンス。
奈那子からボールを受け取り相手と対峙する。
こちらの言葉に答えるだけの余裕。
「負けない男は好きよ。負けない女はもっと好き」
相手がこちらを見ながら言う。隙を伺う。
僅かな呼吸の乱れを見抜こうとする。
「でも、負けない私が最高に素敵!」
ボールが、私たちのボールが奪われる。
圧倒的、そんな言葉が思い浮かぶ。
「行かせない!!」
それでも諦めるわけにはいかない。
私はエースなのだ。
私が負けてどうする!
私が弱気になってどうする!
私より先に戻った雪のおかげで相手が止まった。
私も合流して、みんなが戻る。
そう。みんながいるのだから!
相手エースが合図を出す。
同時に4人が動き出す。
銀髪の子がフリーになる。
すぐにパスが繋がる。
ヘルプで奈那子が動く。
そのマッチアップ相手にパス。
それに反応した美奈が・・・・・・!
「ダメ美奈戻って!」
相手センターにパスが繋がる。
美奈以外では止められない相手だ。
美奈が慌てて止めに入る。
相手センターはそれが目に入っていないかのように飛ぶ。
飛ぶのが高すぎる。まさか・・・・・・!?
「おっしゃああああ!!」
美奈は吹き飛ばされ、たたき付けられたボールは一瞬でリングを通った。
Side健二
「ダンク!?」
俺は思わず叫ぶ。仕方ないだろう。
リングが低いとは言え小学生女子がダンクを決めたのだから。それに
「あうぅ・・・・・・」
美奈が怯えている。頑張ると言ってくれたが、あれをやられてはキツイかもしれない。
正面から飛び掛かってきたも同然だから。
しかもあれだけの雄叫びを上げながら。
ビビらないほうがどうかしている。
蓮里は毎度のように凄まじい歓声を上げている。
マズイ。ペイント内を完全に制圧されてしまう・・・・・・!
Side沢木
いやぁ。まさか初っ端決まるとは。
さすが沙耶と言ったところか。
これで向こうのセンターは無力化した。
オフェンスでも今まで通り動くなんてできないだろう。
ディフェンスはセンターの穴を埋めようと内側に寄る。
さぁ、イリヤ。出番だ。
Side喜美
沙耶のダンクでいい空気になったわ。
ここで畳み掛ける。合図を出す。
私とイリヤでボールを入れた二人、エースとポイントガードにプレッシャーをかける。
10秒。行けるなら5秒を狙う。
「奈那子!パス!」
知美が呼ぶけどイリヤをナメないで欲しいわね。
もはやドリブルすらさせないわ。
5秒が過ぎる。
こちらのオフェンス。兄さんは私かイリヤで行けと言った。私もそうするべきだと感じている。
いえ、イリヤに打たせるべきね。
そう決めて私は一気に運ぶ。
このエースも技術はなかなかのものだけど、身体能力では明らかにこちらが勝っている。
何だったら脚力だけで振り切れる。
「由梨!ヘルプ!」
「任せてッ」
目の前にちっこいのが来る。
ぐ・・・・・・?
感覚が一瞬戸惑う。
いきなりの身長差に反応できていない!?
しかしそれは一瞬のこと。
私の感覚は正しく機能し、イリヤにフックパスを飛ばした。
イリヤはマッチアップの相手の上からシュートを打つ。僅かにタイミングのズレた左からのシュート。
放たれ綺麗な放物線を描いたそれは今度こそ決まる。
「さぁ、ここからだよ!」
イリヤも来たわね。この前半、相手に勝機はない。
前半終了
蓮里19-4西条
Side健二
悪夢の前半が終わった。
最後は銀髪の子に立て続けに決められた。
これは、これは相当厳しい。
現状こちらはドリブルで突破できる選手は知美ただ一人。
ミドルレンジのシュートが打てるのは奈那子と雪。
ゴール下で戦えるのは美奈しかいない。
由梨のトリッキーな攻撃を使おうにもディフェンスが離れない。
対して相手。
知美を完全に抑え、簡単に抜いて見せるエース。
雪の頭上から左のシュートを放つポイントゲッター。
どれだけプレッシャーをかけられてもターンオーバーをしない冷静なポイントガード。
自分より遥かに身長の低い相手にも全力でディフェンスを続けるシューティングガード。
そして美奈を吹き飛ばしてダンクを決めるセンター。
そして向こうのヘッドコーチは去年の全中優勝チームのキャプテン兼コーチにしてMVPの沢木。
この状況、この戦力差をひっくり返して勝たなければいけない。
いいじゃないか。
こういう状況を俺は待っていたんだ。
どうしようもないと思うか?
勝てないと思うか?
諦めるか?
ありえない。
そんなことはありえない。
この状況。ここでひっくり返すのが1番面白いんじゃないか。
プレイヤーは完璧に仕事をしている。
なら勝たせるのが俺の仕事だ。
ひっくり返して見せる、この状況を!
Side沢木
相手は絶対に諦めない。それは確信できる。
30点差をつけてもまだ諦めなかった男だ。
最後の最後まで知略の限りを尽くすはずだ。
「こちらの動きは全て読まれると思え」
俺は思ったことを言葉にしていく。
「向こうのちびっ子とガードに警戒しろ」
俺が健二なら、この状況をひっくり返すならどうする?




