祭場の三角関係
どうしてこんなにも
いつもどおりなのか
配点(安定)
side壮
さて、タコ焼きを食ったはいいが、次はどこに行こうか。
鉄板としてはお化け屋敷などがいい。
それで女性がキャーとか言いながら抱き着いてくれるのがいい。
「何か面白そうなところある?」
「このお化け屋敷などいかがでしょうか?」
「お、いいねぇ」
さすがだよ知美。
俺達は2ー7のお化け屋敷に行くことにした。
「では、行ってらっしゃーい」
受付の人に送り出される。
教室に暗幕を張りまくって真っ暗にして、黒いビニールで仕切って迷路のようにしている。
たぶんあの曲がり角からお化け役が飛び出して来るな。
「わぁ!」
ほぅら出て来た!
さぁ知美!
俺の胸に飛び込んで来てもいいのよ?
「フンッ!」
バキッ!
「あ、つい脊髄反射で手が出ました」
お化けの顎に鋭いキックが突き刺さった。
「……壮さん、腕を広げてどうされたのですか?何ですかその抗議の目は?」
「……戦うメイドさんってカッコイイよね?」
「わかっていただければ結構です」
知美がサッサと歩きだす。
クソ……とことん俺の調子を乱す奴だ。
side知美
それから高等部のいろいろなアトラクションを回って、中等部に行くことにした。
えぇ、見事にレベルダウンしましたね。
しかし中等部には1つ面白そうなアトラクションがあるのだ。
壮さんがそれを見逃すわけがない。
「知美?体育館に行こうぜ!」
ほら。
壮さんはウキウキしながら私の手を引いて体育館に向かう。
195の男がスキップしながら歩くのは異様だ。
壮さんの後ろなら邪魔なく進めるのでありがたい。
体育館に着くと、そのアトラクションがあった。
「フリースロー屋のマジバージョンか」
本当のフリースロー屋だ。
10本打って決まった数に応じて景品がもらえるらしい。
「やりますか?」
「お前やらないの?」
「私が先にやります」
「メイド服じゃん」
「わかっていませんね壮さん。これは冥土服なんですよ」
「冥土服!?」
「貴様を冥土に送ってやるッ!」
「カッコイイ!よし行け知美!」
「はいッ!」
アホなやり取りをしてフリースロー屋に行く。
初等部と中等部では別れているので、私がバスケ部員ふぁということを先輩はわからなかった。
「っと」
地面に足を着けて、しっかりと体勢を整えて放つ。
決まる。
それを10連続、容易いものだ。
「こんなものでしょう」
10連続成功、私はお菓子セットをもらった。
「壮さん、どうぞ」
「おうよ!」
壮さんと交代する。
と、
「あ、あの、ひょっとして沢木さん……?」
「ん?そうだけど」
「うおおおぉ!すげぇ!すげぇ!みんな!沢木さんが来てるぞ!」
「「「「「マジ!?」」」」」
そういえばこの人、有名人だった。
すぐに男子に囲まれる。
壮さんは笑いながらそれに応じている。
しかし私のほうをチラリと見ると、フリースローをしようとする。
まぁ、デートで女放っておく男もいませんよね。
まず1本目、フツーに決めた。
当然リングに当たるなどしない。
「「「「「おぉ!」」」」」
男子から声が漏れだす。
2本目、ジャンプシュートに切り替えた。
それも綺麗な放物線を描く。
おぉ!と漏れだす。
確かに、とても綺麗なフォームだ。
「見ておけよお前ら、これが全国だ」
壮さんはそう言って、目をつぶった。
まさか……!
壮さんは目をつぶったままシュートを放つ。
決まる。
おぉ!?
とどよめく。
そして壮さんが次も目をつぶったまま決める。
5本目、目をつぶったままジャンプシュートを放った。
決まる。
……無茶苦茶ですねぇ。
そのまま9本目までノーミス。
最後の10本目。
「見ておけよお前ら。これが全国No.1だ」
壮さんがそう宣言して、飛ぶ。
フリースローラインから、飛んだ。
リングに向かって一直線。
そのまま落ちず、リングに到達する。
「っらああああぁつ!」
強烈なダンクが決まった。
……人って飛べるんですね。
そのあともいろいろ楽しく過ごさせてもらい、12時となった。
「あ、私もう店に戻らなきゃ」
「あ、そう?じゃあ俺も」
と、壮さんも店について来た。
みんなに自慢できるのでいいのだ。
口は開かないでほしい。
お店に戻ると大繁盛だった。
「あ!知美ちゃん!大変だよもう!みんな知美ちゃん目当てのお客さんなんだから!」
「はぁ?」
私目当て?
自慢じゃないけど私は友達がいない。
「すいませーん!綺麗なメイドさんの搾りたてミルクを飲めるのはここですかぁ!?」
「俺は目の前で搾ってくれるって聞いたぞ!」
「俺は口移しで飲ませてくれるって!」
「俺のミルクを飲んでくれるって!」
「じゃかあしいわあああ!!」
とりあえずまとめて蹴り飛ばした。
「なんでこんな歪んだ情報になってるの!?」
「いやぁ、人って怖いね」
「ホントですよ!」
「いいじゃん。繁盛してるし」
「嫌ですよ!お客さん、ミルク飲みながらこっちの胸ジロジロ見るんですよ!?しかもため息つくし!悪かったね貧乳で!」
お客さんに靴を投げつける。
ありがとうございますッ!とか聞こえる。
クソ……追い出すに追い出せない。
「メイドさん!僕のミルクを飲んでください!」
「あの世に行きな、変態野郎」
「ありがとうございます!」
もうどうしようもない。
サービスで私がコップに入った牛乳をゴクゴク飲むとリピーターが急増した。
「これお願い!」
「ちょっと!3番のお客さんへのミルクは!?」
「ゴミ片付けてよ!」
「おっかしいなぁ?なんで俺が手伝ってんの?」
壮さんも厨房で働いていた。
といっても、ミルク注いで、出来合いのケーキとかパンを提供するだけだが。
クラスの男子や女子にゲシゲシ蹴られながら身を屈めていそいそと働いている。
まぁ楽しいからいいのだが。
しかしどうしてこんな変態がチケットを入手できたのだろうか?
それとも男が全員変態なだけか?
……そちらのほうがありえる。
「ねぇ知美ちゃん」
と、クラスメイトの女子に声をかけられる。
「何?」
「あの人って、知美ちゃんの彼氏さん?」
あぁ、そういうことか。
「違うよ」
「じゃあ友達?」
……友達か?
壮さんのほうを見る。
「昇竜拳!」
「すげぇ!天井をぶち抜いたぜ!」
「波動拳やってよ波動拳!」
「真空波動拳ッ!」
「「「おぉ!」」」
アホがいた。
「友達でもないね」
あんなのが友達なんて嫌だ。
「お兄ちゃん!肩車して肩車!」
「肩車か?よぅし任せろ!」
と、クラスで1番小さな女の子が壮さんに頼んで、壮さんの肩の上でキャーキャー騒いでいる。
「おっきい!」
「195だから」
天井にぶつからないかちょっと不安だ。
壮さんはそのまま廊下を走り出して帰ってきた。
「はーい!次私!私!」
「私だよ!」
「お兄さん、私ですよね!?」
「ちょっとみんな、接客……」
「おう、そろそろ……」
収集がつかなくなってきて、私と壮さんが声をかける。
ガンッ!!
「……」
「……」
「……」
「……」
「……」
「……店員さぁん?ミルク、お願いできないかなぁ?」
大きな鍔のついた帽子を目深に被り、サングラスを掛けて腕組みをして座っていた女性が机を蹴り上げた。
「……は、はい」
みんなの目線が私に突き刺さり、私が行くしかなくなる。
「こちら、ミル」
「そっちの男に持ってきてもらえないかなぁ?」
「……畏まりました、お嬢様」
他のお客さんも固唾を呑んで見守る。
壮さんにお盆を渡す。
お盆がガタガタ震え出す。
「……ちゃんと謝ってくださいね」
私はヒソヒソと言う。
たぶん私達が勝手に騒いだから怒ったのだろう。
しかし壮さんは首を振る。
そのままお盆を持って震えながら女性の机に向かう。
「お騒がせして、申し訳ございませんでした」
一礼して、女性の机にミルクを置く。
女性はサングラス越しにそのミルクを一瞥する。
「このミルク、妙な噂がたってるんだよね?」
「とい、言いますと?」
噛むなよ。
「何でも、デカイ男が小さい女の子から搾り取ったミルクだとか?」
「ハハハ……面白い冗談でございます」
そこまで歪んだの!?
「極東には面白い諺があるよね?火のないところに煙は立たない、だっけ?」
「……」
「だんまり?まぁいいけど。要するにさぁ」
引っ込もうとした壮さんの腕に女性の手が伸びる。
輝くほどの白い肌。
そこで私はその正体に気づいた。
帽子が落ちる。
そこから零れだしたのは輝く銀髪。
私の周辺で、そんな髪を持っているのは1人しかいない。
「ねぇ?お兄ちゃん」
「……イリヤ」
「ここではお嬢様でしょう?お兄ちゃん」
「……お嬢様」
「よろしい」
立っている壮さんのほうが大きくて、イリヤを見下ろしているはずなのに、イリヤのほうが見下げている感じがするのは何故だ?
「イリヤと壮のコンビだ……」
お客さんの1人が呟く。
「どっちにかける?」
「イリヤの勝利に100円」
「イリヤに千円」
「イリヤに三千円」
「賭けにならねぇよ!」
お客さんの間では有名らしい。
「お兄ちゃん、ねぇお兄ちゃん、お兄ちゃん」
恐怖の俳句だった。
「何でしょうお嬢様?」
「昨日私ね、婚約者と電話したんだ」
「……はい」
「婚約者は他の女と文化祭に行くらしくてね?でもまぁ、これくらいは、妻の余裕を見せないとって我慢したんだ」
「はい」
「それでまぁ、他の女とイチャイチャしないならって約束をしたんだよ」
「……」
「昨日だよね、昨日。まさか、ま・さ・か!忘れるなんてこと、ないよね?」
まさか、とないよね?の語気の落差が一層恐怖を煽る。
「……忘れていません」
「忘れていません!?よくそんなことが言えるねぇ、壮ッ!」
ビクッと壮さんの体が浮く。
「肩車、へぇ、イチャイチャしてないんだ?肩車が?股間を首に押し付けているんだよ?わかってんのかよ壮ッ!」
「……考えが至りませんで」
「へぇ、そう。ふぅん。言い逃れするんだ?逃がさないよ、壮」
「私にとってはお嬢様が1番です」
「当然のことだよ、壮」
イリヤがフンッ!と怒った顔をする。
「もぅ!壮が他の女とイチャイチャするのを見るのは嫌なんだよ?」
「ごめんイリヤ!俺が間違ってました!」
壮さん、陥落。
所要時間、30秒。
決め手、怒りからの拗ねた表情
イリヤの一本勝ちだ。
「このぶんは償ってもらうよ壮!」
「畏まりました、お嬢様」
イリヤが壮さんを伴って出ていく。
途端に声が漏れだす。
「圧倒的本妻力……ッ!」
「結婚する前から尻に敷かれて……可哀相に」
「結婚してからだ敷かれるのは不可避だからな。今しかない。今しかないんだよ少年……!」
「女房も昔は恥じらってくれたのに……」
「さらば素晴らしき日々よ!」
「飲むぞお前ら!」
「「「「「押忍ッ!」」」」」
壮さんのせいで小学生の文化祭出店、メイドカフェがメイド居酒屋になってしまった。
「ミルク!ジョッキで!」
「はいはい只今ー!」
sideイリヤ
「珍しい服装だな、イリヤ」
壮さんが早速私の服に声をかけてくれる。
「そうかな?」
「俺が買った奴だろ?イリヤには珍しいファッションだったからな」
やっぱり覚えていてくれた。
「変かな?」
「そんなことはないさ。似合ってるよ」
私は好んで白い服、フリル付きの服をスカートと組み合わせて着る。
基本、女の子らしさ全開だ。
それが今日はちょっとボーイッシュな服だった。
変装のためにサングラスと帽子を着けなければいけなかったので、じゃあもう目一杯ふざけようとなったのだ。
しかしこれが以外と似合って驚いた。
銀髪も帽子で隠し、サングラスで赤い瞳も隠した。
今は帽子をとっている。
「それにしてもイリヤ、どうしてここに?」
「いちゃいけない?そんなに知美ちゃんといたかった?」
「そういうわけじゃないけどさ。あ、知美に謝らないと」
「それは大丈夫だと思うよ。知美ちゃん、店で忙しいだろうし」
「そうかな?」
「あと今日来れたのはね、由利にチケットもらったから。それで練習を午後から午前に移したんだよね」
「午前は男子じゃなかったっけ?」
「壮、ウチには喜美と織火がいるんだよ?」
「……男子の無事を祈ります」
そんなにひどいことにはなっていなかったはずだ。
沙耶を投入しなかっただけマシだろう。
「ほら、壮。そんなこと言ってないで遊ぼ?」
「そうだなー、と。何して遊ぶ?」
「えっとねぇ……」
「楽しかったね、壮!」
「イリヤは楽しかったでしょうねぇ!」
「いやぁ、本気でゴム鉄砲撃ってる壮は笑えたよ?」
「畜生……俺にやらせやがって……」
「でも景品取ってくれたじゃん」
そう言って私は景品を壮に見せる。
それは金色の折り紙で作られた指輪だった。
いかにも小学生っぽい。
金色というのがせめてもの救いか。
しかし、
「フフッ」
私はそれに将来嵌める結婚指輪を投射する。
「どうした?イリヤ?」
「フフッ、早く結婚したいね、壮」
「そうだなぁ」
壮と手を繋ぐ。
と、忘れるところだった。
「ねぇ壮。壮の好きなコスチュームって何?」
「唐突にどうしたんだイリヤ?」
「答えて」
私のいきなりの質問にも壮は真剣に考えてくれる。
「そうだな、女子高生スタイルが好きだけどそれも見慣れたしな。チャイナ……は横浜で見たし、あんま好きじゃないし。ブルマ……もあまりなぁ?時代錯誤だと思うんだけどどうよ?」
「知らないよ」
そのあたりの男の心はわからない。
「着物……は見慣れてるし……あ」
得心した、という声だった。
「思いついた?」
「おぅ!」
壮は会心の笑み。
「ゴスロリだな!」
side喜美
「ゴスロリねぇ……」
『お兄さんも厳しいところ突いてきますね』
『私ゴスロリよく知らないんだけど』
『咲、詳しい?』
『一応は。売ってるお店とかも知ってる』
『そこは咲に任せますよ。問題は資金ですね』
織火の言葉に失笑する。
「馬鹿ねぇ織火。資金なんて必要ないわよ?」
『まさか喜美……男に買わせるなんて言いませんよね?』「Yes!そのまさかよ!」
『私、初めて喜美の特技を便利だと思ったわ』
『役に立つんだね』
『じゃあ喜美、お店の場所教えようか?』
そう言われて私は考え込む。
私一人でもいい。
久しぶりの狩りだし。
勘も鈍っているから一人のほうがいいかもしれない。
でも、
一人はちょっと寂しいわね。
そう思う自分に少し驚く。
「咲、一緒に狩りましょ?」
『え?私?』
『咲ー、狂人の言うことに従わないでいいですよ?』
『やめときなよ咲。クラスメイトの男子に告白されて3ヶ月考え込んじゃう純粋ちゃんなんだから』
『ッ!行くよ。私も行く』
イリヤ、アンタは今止めようとしたの?
完全に逆効果なんだけど?
しかし咲が来てくれるならありがたい。
「織火は来ないの?」
『もうこりごりです』
やはりそうか。
無理に誘うのもいけない。
「じゃあ今度の日曜日に行きましょうか、咲?」
『了解』
次の日曜日。
「フフフ!男なんて簡単ね!」
「すごい。これ全部で……計算不能」
咲もお手上げの成果を手に入れた。
フフフ、私の勘は鈍っていないわ!
これで文化祭の準備は整ったわね!
ようやく、ようやく蓮里文化祭編に突入しますよ。




