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03:不協和音のフィナーレ ~音楽家の最期~

 ギルバートの葬儀は、王都の教会で厳かに執り行われた。騎士団長の嫡男であり、次期団長と目されていた青年のあまりに早すぎる死を、多くの人々が悼んだ。

 公式には「訓練中の不慮の事故」として処理されている。だがその死があまりに凄惨で、唐突であったため、人々の間では様々な憶測が囁かれていた。


 葬儀の席で、リリアナは黒い喪服に身を包み、ただ俯いていた。彼女の心は、罪悪感という名の重い鉛に潰されそうだった。

 ギルバートの死は、自分のせいだ。

 あの夢のことを伝えていれば、彼は死なずに済んだ。

 そんな思いがまるで毒のように、彼女の全身を巡っていた。


 そんな彼女の隣で、アレクシスは毅然とした態度を崩さなかった。しかし、その横顔には深い悲しみの影が落ち、強く握りしめられた拳は白く変色している。親友を失った悲しみと、リリアナの衝撃的な告白が、彼の心を激しく揺さぶっていた。


「リリアナ、君は疲れているんだ。ギルバートの死のショックで、悪い夢と現実が混同しているだけだ」


 葬儀の後、アレクシスはそう言って必死にリリアナを慰めた。セオドアもルーカスも、表向きはそれに同調した。


「そうだぜ、リリアナ嬢。あんたのせいじゃない。あいつは、騎士として生きて、騎士として死んだんだ。きっと、本望さ」


 ルーカスが無理に明るい声を出したが、その瞳は赤く腫れている。

 彼らは皆、リリアナの告白を「心労による幻覚」だと片付けようとしていた。

 いや、そう信じたかったのだ。

 もし、彼女の言葉が真実だとしたら?

 ギルバートの死が本当に「予知」されていたとしたら?

 それは彼らが進もうとしている道に、あまりに不吉で、理解不能な暗い影を落とすことになる。彼らの理性はそんな超常的な現象を受け入れることができず、頑なに拒んでいた。「予知」なんてものはありえない、と。


 ただひとり、フェリクスだけは違った。


 彼は教会の片隅で、誰とも言葉を交わさず、じっとステンドグラスを見つめていた。その芸術家らしい繊細な感受性が、リリアナの言葉の裏にある、尋常ではない何かを鋭く感じ取っていたのだ。

 ギルバートの死は、単なる事故ではない。あれは、まるで緻密に計算された不協和音のように、完璧なタイミングで奏でられた、破滅への序曲なのではないか。

 そんな考えが、彼の心を支配し始めていた。



 ―・―・―・―・―・―・―・―



 ギルバートの葬儀が行われた日の夜。

 リリアナは再び悪夢に苛まれた。


 今度の舞台は、王宮の音楽堂だった。

 壮麗な装飾が施されたその場所で、フェリクスがひとり、銀の竪琴を奏でている。そのメロディは、悲しく、美しく、そしてどこか諦めに満ちていた。まるで、自らのためのレクイエムを奏でているかのようだ。リリアナは、またしても透明な傍観者として、その光景を見つめていた。


 フェリクスの指が、最後の和音を奏でた、その瞬間。

 キィィ、と、天井から金属が軋む音がした。

 見上げると、巨大な水晶のシャンデリアが不気味に揺れていた。音楽堂の中央に吊るされたそれは、何百もの水晶が光を乱反射させ、まるで巨大な蜘蛛の目のようにきらめいている。


 ブツリ

 ブツリッ


 そのシャンデリアを吊るす太い鎖が、一本、また一本と、まるで糸が切れるかのように断裂していく。


『フェリクス様、逃げて!』


 リリアナの叫びは、やはり音にならない。

 フェリクスは、なぜか天井を見上げようともせず、ただ静かに目を閉じ、自分の運命を受け入れるかのように座っていた。

 そして、最後の鎖が切れた。

 巨大な金属と水晶の塊が、ほとんど音もなく、しかし圧倒的な質量を持って、フェリクスに向けて落下していく。

 地上に落ちると共に、シャンデリアは粉々に飛散する。

 きらめく水晶の雨が、彼の美しい顔を覆い隠す―――。


「いやああああああっ!」


 リリアナは、自分の悲鳴で目を覚ました。心臓はまたしても激しく高鳴り、全身は汗で濡れていた。窓の外が白み始めている。


 まただ。

 また、見てしまった。

 今度はフェリクス様が……。


 これは、ただの夢ではない。

 これは、「死の宣告」なのだ。


 リリアナは、ギルバートの時に犯した過ちを繰り返すまいと、ベッドから転がり落ちるようにして部屋を飛び出した。髪は乱れ、寝間着のままだったが、そんなことを構っている余裕はなかった。



 ―・―・―・―・―・―・―・―



 早朝の王立学園、学生寮の廊下を、リリアナは必死に走った。淑女らしからぬなどと言っている余裕はない。

 早起きをした学生たちが、彼女の姿を見て驚きの表情を見せる。貴族の令嬢、寝間着姿で男子寮の廊下を掛けているのだ。何事かと訝しげな視線を向けるのも無理はない。しかし彼女に、それらを気に留める余裕はなかった。

 フェリクスの私室の前にたどり着くと、彼女は扉を叩き壊さんばかりの勢いで連打する。


「フェリクス様! フェリクス様、いらっしゃいますか!?」


 しばらくして、中から眠たげな声と共に、扉がゆっくりと開かれた。


「リリアナ嬢……? こんな朝早くに、一体どうしたんだい」


 寝間着姿のままのフェリクスは、驚きに目を見開いている。

 リリアナは、彼の無事な姿を確認すると、安堵のあまりその場にへたり込みそうになった。しかし、今はそんな場合ではない。


「音楽堂へは……! 今日、絶対に音楽堂へは行かないでください!」

「え……?」

「お願いです! 信じてください! 私は見たんです……! あなたが、音楽堂で……!」


 リリアナは、途切れ途切れに、しかし必死に夢の内容を伝えた。シャンデリアが落下し、彼を押し潰す、と。

 フェリクスは、彼女のあまりの剣幕に気圧されながらも、その話を聞いていた。彼の顔から、次第に血の気が引いていく。他の者たちのように、これをただの幻覚だと笑い飛ばすことが、彼にはできなかった。ギルバートの死の直前に、リリアナが同じような「夢」を見ていたという事実が、彼の心を重く捉えていた。


「……分かったよ、リリアナ嬢」


 しばらくの沈黙の後、フェリクスは静かに頷いた。


「君の言う通りにしよう。今日は一日、部屋に籠って作曲でもしているよ。音楽堂には、決して近づかないと約束する」


 その言葉に、リリアナは心の底から安堵した。

 良かった。今度こそ、間に合った。

 運命は、変えられるのかもしれない。


「ありがとうございます……! 本当に、ありがとうございます……!」


 涙ながらに礼を言うリリアナに、フェリクスは力なく微笑みかけた。

 しかし、その瞳の奥には、リリアナにも見せない、深い諦観の色が宿っていた。


 彼には、分かっていたのかもしれない。一度奏でられてしまった破滅の旋律は、誰にも止めることはできないということを。


 その日、リリアナを送り返した後、フェリクスは約束通り自室に籠っていた。

 しかし、彼の心は少しも休まらなかった。五線譜に向かっても、浮かんでくるのは陰鬱なメロディばかり。親友であるギルバートの死の衝撃と、リリアナの不吉な予言が、彼の繊細な神経をじわじわと蝕んでいた。


(ギルバートは、本当に事故で死んだのか? それとも、リリアナ嬢の言う通り、何らかの運命によって……?)


 考えれば考えるほど、フェリクスの思考は袋小路に迷い込む。


(もし、本当に運命なのだとしたら、俺は今日、死ぬのか? シャンデリアの下で?)


 死への恐怖が、冷たい手のように彼の心臓を鷲掴みにする。


(だが、音楽堂へ行かなければ、シャンデリアは落ちてこない。そうだ、運命など、自分の意志で変えられるはずだ)


 彼はそう自分に言い聞かせる。

 だが心のどこかで、抗えない巨大な力の存在を感じていた。


 それは、まるで完璧に構成された交響曲のようだ、と彼は思った。

 ギルバートの死という、衝撃的な第一楽章。

 そしてこれから訪れるであろう、自分の死という、悲壮な第二楽章。

 すべては見えざる指揮者のタクトによって、完璧なタイミングで奏でられていく。思考に耽れば耽るほど、フェリクスの精神は昏い何かに苛まれていく。


 時間が経つにつれ、彼の精神は鬱々としたものになっていった。部屋に閉じこもっていること自体が苦痛となり、耐え難くなってくる。息が詰まる。壁が迫ってくるような圧迫感に襲われる。


「……少し、外の空気を吸おう」


 フェリクスは、耐えきれずに立ち上がった。

 約束は守る。王宮の音楽堂には近づかない。

 ただ、学園の中庭を散歩するだけなら、問題ないはずだ。

 彼はそっと部屋を出た。


 死の運命の歯車は回り始める。

 彼が部屋の扉を開けた瞬間から、静かに、しかし確実に回り始めていた。



 ―・―・―・―・―・―・―・―



 フェリクスが部屋を出たのと時を前後して。


 音楽堂の屋根裏では、一匹のネズミが壁の隙間を走り回っていた。探しているのは、冬に備えて蓄えるための食料だ。

 キョロキョロと辺りを見回していたネズミは、梁の上に置かれた小さな燭台を見つけた。それは昨夜、点検に来た管理人が置き忘れていったものだった。燭台の受け皿には、溶けて固まった蝋が少量残っている。

 ネズミはその蝋を齧ろうと燭台に近づいた。カリカリ、と小さな音を立てて蝋を齧り始めたネズミ。だが、どこかで鳴った物音に驚いて飛び跳ねる。


 その拍子に、燭台がバランスを崩し、コトン、と音を立てて梁の上を転がった。

 そして、受け皿に残っていた蝋の塊が、ぽとり、と真下へと落下した。


 その真下にあったのは、巨大なシャンデリアを天井から吊るしている、太い鎖を巻き上げるための滑車装置だった。

 蝋の塊は、滑車の歯車と鎖が噛み合う隙間に、ぴたりと嵌り込んだ。

 誰も気づかない、本当に些細な出来事。

 しかし、この小さな蝋の塊が、やがて巨大な悲劇の引き金となる。


 同じ頃、音楽堂の中では、ひとりの若い侍女が掃除をしていた。

 彼女は恋人と喧嘩をしたばかりで、ひどく気分が落ち込んでいた。溜息をつきながら、窓を磨いていた彼女は、遠くで鳴った正午を知らせる鐘の音に、はっと顔を上げた。


「もうこんな時間! 彼との待ち合わせに遅れちゃう!」


 侍女は、慌てて掃除道具を片付け始めた。そして、自分が磨いていた窓を、ほんの少しだけ開けたまま、音楽堂を飛び出していってしまった。普段なら決してしないような、うっかりミスだった。


 学園の中庭を散歩していたはずのフェリクスは、気がつけば王宮まで足を延ばしていた。そして無意識のうちに、音楽堂の扉の前に立っている。


(入ってはいけない。リリアナ嬢と約束したんだ)


 彼は固く心に誓っていた。しかし、中から漏れ聞こえてくる、風が奏でる微かな音が、彼の足を縫い付けた。開け放たれた窓から吹き込む風が、譜面台の上に置かれた楽譜をパラパラと捲り、まるで誰かが演奏しているかのような音を立てていたのだ。


 その音は、彼がギルバートを追悼するために作曲していた、未完のレクイエムの旋律にどこか似ている気がした。


(少しだけ……。中には入らない。扉の外から、少しだけ)


 まるで魔物に誘われるかのように、フェリクスは音楽堂の重い扉に手をかけた。

 ギィ、と音を立てて開いた扉の隙間から、彼は中の様子を窺う。

 がらんとした音楽堂。誰もいない。

 そして、中央の天井には、あの巨大なシャンデリアが、静かに吊るされている。


(……大丈夫だ。何も起きていない)


 フェリクスは安堵の息を漏らす。やはり、リリアナ嬢の考えすぎだったのだ。

 そう思った瞬間だった。


 侍女が開けっ放しにしていた窓から、一際強い風が吹き込んできた。

 その風は譜面台の上の楽譜をさらい、ひらひらと蝶のように舞い上がらせた。

 彼はそれを、心血を注いで書き上げたギルバートのためのレクイエムの楽譜だと錯覚する。


「あっ……!」


 フェリクスは、思わず声を上げた。楽譜は、まるで彼を誘うかのように、音楽堂の中央、シャンデリアの真下へと、ゆっくりと落ちていく。


 あの楽譜を失うわけにはいかない。

 あれは、亡き親友に捧げる、唯一の手向けなのだから。


 リリアナとの約束は、一瞬で頭から消え去っていた。

 彼は、ためらうことなく音楽堂の中へと足を踏み入れた。


 シャンデリアの真下にたどり着き、床に落ちた楽譜に手を伸ばそうと身を屈めた、まさにその時。


 ゴォォォン……!


 遠くの教会で、時を知らせる鐘が鳴り響いた。

 重く、荘厳な鐘の音が、王都の空気を震わせる。

 鐘の音の微細な振動が、音楽堂の古い建物を、ほんのわずかに揺らした。


 その振動が、決定的な一撃となった。

 屋根裏の滑車装置。蝋が詰まって動きが鈍っていた歯車。

 そこに、鐘の振動による負荷が掛かった。


 ギチッ、と嫌な音が鳴る。

 蝋の塊が、圧力に耐えきれず粉々に砕け散った。

 その瞬間、抑えられていたシャンデリアの全重量が一気に滑車へと圧し掛かる。


 バチンッ!


 滑車は蝋によってなめらかさを取り戻し、急激に回転を始める。

 その衝撃で、長年の金属疲労を起こしていた鎖の一番弱い部分が限界を迎えた。

 一本、また一本と鎖が次々と断裂していく。

 まるで呪いの糸が切れるかのように。


 フェリクスは、床の楽譜を拾い上げ、ふと顔を上げた。

 キィィ、という金属の軋む音。


「っ!」


 見上げた彼の目に映ったのは、自分に向かって落下してくる巨大な水晶の塊。

 何百もの水晶が、光を乱反射させながら迫ってくる。

 それは息を飲むほどに美しく、まるで夜空から星が降り注ぐかのようだった。


 フェリクスの脳裏に、リリアナの必死の形相が浮かんだ。


(ああ……君は、正しかったんだね……)


 次に浮かんでくるのは、ギルバートの屈託のない笑顔。


(すまない、友よ。今、俺も……そちらへ行くよ……)


 フェリクスの表情から、恐怖が消えた。

 そこには、ただ、静かな諦観だけがあった。


 彼は目を閉じる。

 自らが作曲したレクイエムの最後のフレーズが、頭の中で静かに鳴り響く。

 それはあまりに完璧で、あまりに美しい、不協和音のフィナーレだった。


 ドッシャアアアアアアンッ!!!


 凄まじい轟音と衝撃が、音楽堂を揺るがした。

 巨大なシャンデリアは、フェリクスが立っていた場所に叩きつけられ、無数の水晶片と共に粉々に砕け散った。


 その下には、もはや人の形を留めていない、赤い染みが広がっている。

 彼の手に握られていたはずの楽譜だけが、血の海から少し離れた場所に、奇跡的に無傷のまま落ちていた。そこには、インクの代わりに、彼の血が一滴、まるで最後の音符のように滲んでいた。



 ―・―・―・―・―・―・―・―



「……原因は、老朽化した鎖の金属疲労でしょう。そこに、ネズミが落としたと思われる蝋が滑車に詰まり、鐘の音の振動が引き金となって、一気に破断した……。いくつもの不運が、不幸にも同時に重なってしまった、としか……」


 音楽堂で発生した、巨大シャンデリアの落下事故。

 それに巻き込まれたと思われる、宮廷音楽家の卵であるフェリクスの圧死。

 事故の報告を受けて駆けつけた王宮の役人は、音楽堂の検分を行った上で、そう結論付けた。ギルバートが事故死した時と同じだ。

 「不運」と「偶然」が重なった、痛ましい事故。

 誰がどう見ても、そうとしか思えない。


 しかし、アレクシス、セオドア、ルーカスの三人は、そんな言葉を信じることはできなかった。音楽堂の惨状を前に、彼らはただ凍り付いていた。


「フェリクス……お前まで……」


 ルーカスの顔からは、血の気が完全に失せている。

 セオドアは、震える手で眼鏡の位置を直しながら、唇を噛みしめていた。


「……リリアナ嬢の、言う通りになった……」


 その呟きは、誰に向けたものでもなかった。

 だが、その場にいた全員の心に、鉛のように重くのしかかった。


 これは、事故ではない。

 これは、「呪い」だ。


 アレクシスは、確信した。

 リリアナの予知夢。そして計画に加担した仲間の事故死。ひとり、またひとりと、不自然過ぎる「事故」で死んでいく。偶然で片付けるには出来すぎている。


 何かが、自分たちを殺そうとしている。

 婚約破棄を計画した、自分たちを。

 彼らはそう思わずにいられなかった。



 ―・―・―・―・―・―・―・―



 フェリクスの死は、すぐにリリアナの耳にも届いた。

 彼女は自室のベッドの上で、身体を丸めて震えていた。


 警告したのに。

 約束したのに。

 それでも、彼は死んでしまった。


 運命からは、逃れられない。

 私の夢は、ただの夢ではない。

 変えることのできない、死の筋書きそのものなのだ。


 絶望が、彼女の心を完全に覆い尽くしていた。

 次に死ぬのは、誰?

 セオドア様? それとも、ルーカス様?

 彼らの顔が、次々と脳裏に浮かび、消えていく。

 そして、その先には――アレクシスがいる。


「いや……いやぁ……っ!」


 リリアナは、頭を抱えて悲鳴を上げた。

 この悪夢を終わらせなければ。

 この死の連鎖を、止めなければ。


 しかし、どうすれば?

 見えざる敵の正体も、目的も、何も分からない。

 ただ、親しい人たちがひとりずつ、無残に殺されていくだけ。


 彼女の心に、初めて「死」そのものへの、原始的な恐怖が芽生え始めていた。

 それは、愛する人を失う悲しみとはまた違ったもの。

 冷たく、粘りつくような、絶対的な恐怖だった。



 -つづく-

■フェリクスを襲った「死のピタゴラスイッチ」

1.音楽堂の屋根裏で、ネズミが燭台を倒す。

2.燭台の蝋が、シャンデリアを吊るす鎖の滑車部分に落ちる。

3.音楽堂を掃除していた侍女が窓を閉め忘れる。

4.締め忘れた窓から風が吹き込み、楽譜が舞い上がる。

5.楽譜を拾おうとした瞬間、遠くで鳴った教会の鐘の振動が建物を揺らす。

6.振動で滑車に挟まった蝋が砕け、滑車の回転が勢いよくスムーズに。

7.急激に負荷が掛かり、金属疲労を起こしていた鎖が断裂。

8.巨大な水晶のシャンデリアが、楽譜を拾おうと屈んだフェリクスの真上へ落下。

9.彼は無数の水晶片ごと、凄まじい音と共に床に叩きつけられる。




 ※第4話の更新は、7月26日(土)の朝8時になります。

 ※今作の更新は、週末ごとになります。

 ※感想や評価などいただけると励みになります。よろしくお願いします。


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