第97話 T1怪人化……名をパンター!
「いやはや! 怪人化に成功であります!」
ベテラン戦闘員であったT1の怪人化に無事成功した。
耳を覆う様にヘッドフォンをしており、手を握るとベレー帽が出てきてそれを被った。
その他の印象を言うと黒猫……いや、黒豹を擬人化した様な見た目に変化した。
「これまた独特な変化をしたな……」
俺がそう言うとT1も嬉しそうにしている。
早速幹部メンバーで名前をどうするか話し合うと、パンターというドイツ語で黒豹という意味の名前が出てきて、ミリオタでもあったT1はパンターという名前が気に入り、パンターという名前に定着した。
「ドイツの戦車の様に戦場を駆け抜けるであります!」
ビシッと敬礼する姿も似合っている。
そんなT1ことパンターに早速任務としてロシア軍基地の偵察をお願いした。
元々戦闘員としての経験も豊富であり、ヘマすることは無いと思っての人選であり、パンター以外にもベテラン戦闘員から怪人になっていた他の4名も同じ任務に協力して行うように要請した。
1週間後、パンター達元ベテラン戦闘員の怪人達は任務を完遂し、情報を持ち帰ってきてくれた。
ロシア軍の基地は主に戦闘機等が置かれている空軍基地、戦車等の陸上戦力が配備されている陸軍基地、そしてコルサコフという街に海軍基地があり、駆逐艦が3隻と潜水艦が2隻停泊していることを確認したと報告された。
しかもパンターは闇夜に紛れて空軍基地と陸軍基地の詳細な内部情報を入手し、データジャックした衛生写真と見比べながら内部構造を解析していった。
まず空軍基地であるが、全盛期のロシア軍は複数箇所に航空基地を置いていたが、極東方面の予算減額の煽りを受けて、1箇所の民軍兼用の基地が稼働しているに留まり、戦闘機が25機ほど配備されている。
陸軍基地の方は3000人の1個連隊が詰めており、戦車も複数確認されたが、最新式の戦車は無く、四半世紀前の旧式戦車かつ航空機もそうであるが共食い整備が頻発しているらしく、廃棄された航空機やヘリ、戦車や戦闘車両の残骸が至る所にあるらしい。
「練度も見たところ低く、一応軍人達は超人化薬を使ってある程度の強化は行っているっぽいですが、正直常用している日本の一般人の方が接種しているかと思うであります」
「強行偵察悪かったな」
「いえ、これをやれる練度があるのは我々しかブラックカンパニーでは居ないと断言出来るであります」
「言うねぇ……」
実際出来そうなのはあとウルフくらいで、下部組織の人員やイエロー、レグレス、超に元人造ヒーロー達も潜入偵察を頼める人員は居ない……とまでは言わないが、成功率を担保出来そうなのは今回の5名とウルフ、それに俺くらいである。
これを基本情報として作戦を立てていく。
まだ侵攻の決行は半年近く時間を有するが、作戦は練っておいた方が良いだろう。
ちまちま作戦計画を俺は練っていくのであった。
「くううう!」
「流石に重力20倍はホワイトでも厳しい?」
「ま、まだまだ〜!」
重力ベルトを使ってホワイトとオクタがプールでトレーニングしている姿が目に入った。
ちなみに俺はいっつも重力100倍でトレーニングしているが、怪人じゃなくて重力20倍で動けるのは流石としか言いようがない。
重力20倍でよくトレーニングしているのはイエローやレグレスクラスなので十分に凄かったりする。
「お、頑張ってるな」
「あ、お父様」
「こんちは~Kさん!」
プールのコースを仕切るコースロープに体を預けながら2人にどんなトレーニングしているか聞くと、ホワイトがまだ体の動かし方が慣れてないので、プールで体を色々動かして、刷り込まれた知識を体への経験に転換している作業をしているらしい。
「例えば知識ではご飯が主食として知っているし、味もおおよそは見当がつくけど、食べてみたら味が思っていたのから少し違ったりするから知識とのズレを修正していかないといけないと思って……」
「ホワイト健啖家で好き嫌い無く色々食べるんだけど、その姿が人造ヒーローとして産まれたばかりの私達と似ていて可愛いんだよ〜!」
「は、恥ずかしいですオクタさん」
「今日ホワイト夜空いているか? 良かったら何か料理作ってやるよ。食堂で六姉が作る飯で腹いっぱいになるならやめておくが」
「いや! 食べる!」
「ねぇKさん私も食べちゃだめ?」
「いや、オクタも良いぞ。何か食ってみたいのあるか? 家庭料理の難易度でだが」
「食べてみたい……」
「私すき焼きがいいな〜! なかなか食べられないし!」
「ホワイトもそれでいいか?」
「うん! すき焼き私も食べたい」
というわけですき焼きを俺は作ることになった。
一方でプールの中では、覚醒したカツオ怪人のスジとクリオネの怪人クリネが水中戦闘をしていて、魚雷が格闘戦しているような迫力がある。
「地上でも強くなったが、2人はやっぱり水中戦に強くなったか」
漁業やるとしたらこの2人に任せようと強く思うのであった。
「乾杯」
「「「乾杯!」」」
俺とバニーの家なのですき焼きパーティーにホワイトとオクタだけでなく、バニーも参加していた。
使う肉は海外で育てられる和牛のパチモンであるが……。
「なんで和牛じゃないの?」
「和牛を今の日本が育てられる環境じゃないから……」
日本内戦の影響で、日本ブランドの作物は壊滅的打撃を受けており、そういう食材は内で食べられてしまい、闇市場にも出回る量が激減していた。
なので今回はオーストラリア産ワ牛を購入してすき焼きを作る。
今回するのは関東風の割り下で牛肉を煮る方である。
溶き卵に肉をくぐらせてご飯と一緒に食べる……これが幸せである。
「ワ牛も悪く無いわね」
「まぁ口の中で溶ける本物とは違うがな」
バニーが畜産も手を広げるべきかしらとぶつぶつ言っているが、俺は気にしないで、ホワイトとオクタに旨いか聞くと、美味しいです! と元気な返答が返ってきた。
あんまり意識しないようにしているが、どうしても自分の娘ということで無意識に優しくしてしまう傾向がある。
社員達の手前あんまり露骨に贔屓するわけにもいかないが……こうして喜ぶ姿を見るとこっちまで嬉しくなる。
「そう言えばオクタ、同期の奴らとは仲良くやってるか?」
「うん! 人造ヒーロー組は皆仲良くやっているよ! まぁ一部の男達が風俗通いをしているのは少し思うところもあるけど」
「それくらい許してやれ。オママのところで女性向けの性サービスもあるから行ってくれば?」
「うーん、私は良いかな。興味ない」
「そうか」
人造ヒーロー達は全員怪人になったが、性格が大きく変わることは無く、風俗通いをしている2人はつい先日からウルフと一緒に怪人マッチに出場しており、今B級昇格戦を戦っているのだとか。
「ワンとジオツーが怪人マッチで好成績残せば私達のランクも大まかに分かるから頑張ってほしいな〜」
とのこと。
俺はホワイトにトレーニングのアドバイスをしたり、オクタに元人造ヒーロー達の現状の確認をするのだった。