第83話 動き出す日本
「バニーさん、俺達樺太に逃げたのは正解だったかもしれねぇなぁ」
超達が事務所から自分達の家に戻った中、俺は日本で変換が起こっていることを話した。
「正解って?」
「俺の知り合いの悪の組織が3つ壊滅したっぽい。ヒーロー達の襲撃を受けたみたいで、B級相当のヒーロー30人の襲撃だったらしい。会社が壊滅して路頭に迷ってる奴らが居るんだが、呼んでも良いか?」
「私とは面識が無い感じ?」
「若だったら知ってたんじゃないかな?」
「何人くらい?」
「怪人は3人、生き残った戦闘員が複数人居るらしい」
「わかったわ。客人として持て成しましょう」
「じゃあ座標を送るわ」
「いやぁK助かったゼヨ!」
「本当Kに足向けて寝れないわ」
「た、助かったぁ……」
上からゼヨゼヨ言っているのがカツオ怪人のスジ(スジガツオからの命名らしい)、オカマのスライム怪人ピンクモンスター……あだ名はピクモン。
安堵の表情を浮かべているのはクリオネの怪人クリネ……女っぽい見た目であるがふたなりである。
皆戦闘力で言うとC級の怪人で、はっきり言って弱い。
「いや~本部がいきなり襲撃されたゼヨ。20……いや30人くらいのヒーローの本格的な襲撃だったぜよ。うちのボスも窓際に居たから、初撃で吹き飛ばされてしまって、統制が取れなくなっているうちに壊滅したゼヨ。他の2人は?」
「私のところもそんな感じ、いきなりヒーロー達が乗り込んできて小さい事務所だったから抵抗虚しく強い怪人達が皆倒されてしまって……私は逃げれたし、外回りしていた戦闘員達を回収して信頼出来るKに連絡した感じだわ」
「ぼ、僕はたまたま外回りで、帰ったら本拠地が灰燼になっていて……路頭に迷って……あ、ちなみに襲撃受けたのは昨日です」
纏めるとスジとピクモンが今日、クリネが昨日ヒーローの襲撃を受けて、小さい会社だったからセーフティハウスも無く、本拠地が壊滅して幹部や社長が死亡。
どうしたものかと考えていたら怪人マッチのランキングでブラックカンパニーの名前があり、ブラックカンパニーが復活しているし、俺と面識があるから匿ってもらえると思い連絡を入れてみた……という流れらしい。
「小さい事務所を潰すのにヒーロー30人近く投入ねぇ……」
「本当ゼヨ」
「いや、疑ってるわけじゃねぇよ。実はヒーロー側が人造ヒーローを作っているの知ってるか?」
「は? なにそれ?」
「え? ヒーローがクローン人間作り始めたってこと?」
「クローンじゃねぇが、似たような感じだな。体外受精した受精卵を人工子宮で培養し、青年くらいの年齢になるまで急速に成長させる……襲ったヒーロー達って若かったんじゃないか?」
「確かに高校生くらいの顔立ちだったゼヨ」
「決まりだな。いよいよ人造ヒーローをヒーロー側は実戦投入してきたってわけか」
「強さはB級程度でも実戦経験を積んでいったりしたらどんどん成長していくことになる……となると使い捨て出来るヒーローを大量に運用できる事になるわね」
「ま、と言ってもヒーロー側も資金問題があるし、表の倫理に明らかに抵触している行為だ。出来上がっても100名程度だろう。運悪く3人の悪の組織が手頃な強さだったから襲撃されたんだろうな」
「Kさん詳しいですね……何かしっているので?」
「あぁ、先行量産型の人造ヒーローを設備ごと盗んできた」
「わぉ……」
「やるスケールがでかいゼヨ」
「なんで施設を壊滅させなかったの!」
「ブラックカンパニーの立て直しの為に人材が欲しかったんだよ。それでたまたま人造ヒーローの情報を知っていたから襲った。壊滅させるには時間が無かった……ただそれだけだ」
「えっと女の子っぽい怪人さん、Kを責めても何もならないし、Kも……というよりブラックカンパニー自体が一度壊滅に等しい被害を受けているのよ。それに、私達は今追い出されたらまた路頭に迷うことになるの」
「そうそう。会社という後ろ盾を無くした怪人は悲惨ゼヨ。B級以上の実力がある怪人ならスカウトしてくれる会社もあるけど、C級は辛いゼヨ」
「うぐ! うぐぐ!」
「まぁ気持ちは俺も理解出来るが、落ち着けよクリネ。とりあえず飯にしよう。社員食堂で良かったら戦闘員達にも食わせるから」
「ありがたいゼヨ」
「助かるわ!」
「いただきます……」
とりあえず3人と連れてきた戦闘員達に飯を食わせ、そのまま大浴場で体を洗う。
戦闘員達には仮として社宅の空き部屋と寝具を提供し、俺はバニーの家に3人の怪人を招き入れた。
「すみません。食事だけでなくお風呂まで」
「いや、クリネも大変だったな。さてと、改めて自己紹介だ。俺は皆知っているから良いとして、ブラックカンパニーの新総領のバニーで俺の妻だ」
「ブラックカンパニーの総領……まぁ社長のバニーです。皆さんが知っている前総領は私の兄で、本拠地が壊滅した時に亡くなったので私が引き継ぎました。よろしくね」
「ゼヨゼヨ訛って申し訳ないがこのまま行くゼヨ。小生はスジ。見ての通りカツオの怪人ゼヨ。エラ呼吸出来たり、泳ぎが速い程度しか能力の無い激弱怪人ゼヨ! よろしく!」
「私はスライムの怪人、ピンクモンスターよ。皆からはピクモンって呼ばれているわ。口調で分かると思うけどオカマよ。怪人化に伴って市販の怪人化薬を飲んだせいでスライムになってしまったわ。一応スライム娘みたいな感じで人型にはなれるけど、戦闘能力はほぼ無いわ」
「ぼ、僕はクリオネの怪人のクリネです……戦闘員の頃は女だったんですが、怪人化したら竿が生えまして……クリオネなので光る事が出来たりするくらいで戦闘能力は戦闘員並です……はい。ふたなり女子って分類でしょうか……」
「相変わらずお前ら癖が強いな」
「そういう怪人と仲の良いKはこちらとしたら本当得難い存在よ」
「そうぜよ」
「うんうん」
「昨日や今日の襲撃事件は闇サイトでも少し取り上げられている程度で注目度は低いニュースになっていた。でだ、ブラックカンパニー的にはお前らが希望があるなら戦闘員もセットで雇う用意がある」
「「「おぉ!」」」
「バニー良いよな?」
「まぁKに任せる。Kの知り合い達だし」
「うん、うちの事業で今度漁業したり、炭鉱の採掘したりするんだけどそれの従業員が欲しくてな。戦闘には出さないからそこで働いてくれね? 月50万は約束するから」
「いや、マジでありがたいわ!」
「僕もその条件でお願いします」
「俺も!」
「OK、住むところはとりあえず当分は社宅の空き部屋使ってくれ。怪人として家用意するから」
「そんなに好待遇で良いゼヨ? 俺達弱いよ」
「弱くても使い道は色々あるし、今この会社の怪人達殆ど20歳未満よ。クリネはともかく2人は社会経験長いから事務作業とかそっちでも活躍してもらうから」
「あい、わかったゼヨ!」
「持つべきものは良縁ね」
「でも人造ヒーローが量産されるとなったら日本の中小企業は危ないんじゃ……」
「とりあえず3人とも交友のあるオママに拠点の移設をしないか聞いてみるわ。オママの施設無くなったら困るだろ皆」
「「「うん」」」
こうしてブラックカンパニーに逃げ込んでくる弱い怪人も現れ始めるのであった。