第78話 3人娘の怪人マッチ 3
翌日、私だけB級の会場に行き、試合をしていく。
とりあえずこのランク帯だと触れてしまえば勝ちが確定する。
というか私に触れたら負けるってわかった対戦相手も触れない様にするが、私から半径2メートルはアイテムが無くても指向性を持って電気を飛ばす事が出来るし、肉体の電気を操ることで、肉体のリミッターを外してパワーやスピードを上げることも出来る為、一瞬で近づいて電撃を浴びせるのは容易かった。
まぁ全く映えないので5連勝した時点でようやく昇格の話が来て、午後に昇格戦に挑むことになった。
昇格戦に来るようになると、B級でも上位の実力があるため、低電圧だと耐える人物が出てきたが、私の初期の頃の全力である500アンペアくらいの電流を流すと、流石に耐えられなくて失神して倒れてしまった。
1日でA級に昇格となったが、ここから先はA級……Kさんの見立てではA級相当の実力と言われていたので、成長した今の私はS級に届くのか……頑張らないといけない。
A級になると1日1試合しか興行の関係で挑む事が出来なくなる。
で、S級に挑むには10試合中5勝もしくは5連勝するか、審判がA級の器では無いと判断し、興行が成り立たないとなった場合は両方の資格を満たす事なく昇格戦に挑む事が出来る。
早速今日レグと超は1戦戦ったらしいが、普通に瞬殺し、1勝ずつ勝ち取ったとのこと。
レグ曰くまだA級であればビームが効くので時間さえかければ倒せるらしい。
まぁ今日の試合は瞬殺だったらしいが。
「ビーム効かない敵ってだいたいミサイルやガトリング砲クラスの物理攻撃は普通に効かない事が多いのよね……Kおじさんとかまさにそれだし」
食事をしながら私、レグ、超はウルフさんとテレキさんも踏まえて作戦会議をする。
「これが実戦であるなら博士にエネルギーを増幅させる拡張パーツを取り付けたりすることが出来るけど、武器禁止だからビームが効かなくなったらいよいよだわ」
「でもレグも十分に怪力と言える力があるじゃん。それで何とかならないの?」
「そういう時に一番威力が出せる足が私には無いからねぇ」
そう、レグの一番の弱点は足技が使えない点である。
その分反重力エネルギーで浮いているのであるが……。
「まぁA級は突破できそうだけど……超はどうなのよ」
「うーん、僕はこのクラスなら余裕っすね。能力だよりの戦いでも十分に戦えているし……というより僕の能力冷気を操ったり、青い炎を使ったりだけじゃないし……本質は変化っす」
超がそれの一端を見せたのがレグとの試合。
毛玉を矢に変えて放ったがそうである。
狐お得意の化けるという能力とスピリチュアル的な力を会得しており、それを攻撃に転じたのが口から放った螺旋状のビームである。
「まだ7割程度しか力を出してないっす。それでA級は圧倒できるからS級でも十分にやりあえるんじゃないっすかね?」
とのこと。
それでいて博士曰くまだまだ成長の余地が沢山あり、覚醒もしていない。
覚醒したらどんな強さになるのだろうか……。
まぁ私も覚醒をする可能性があるし、なんか博士が覚醒を促す薬が出来たと言っていたので今度飲んでみることにしよう……どんな風になるんだろうか……。
するとテレキさんが
「明日からはイエローもA級でマッチングすることになる。だいたい今の時期にA級の階級戦に毎日出ている層は500人くらいだ。昇格戦に挑んでいるのは15人程度まで少なくなるが、3人なら昇格戦までは確実にいけるだろう……まぁ会社の抑止力としてはA級でも十分に担えるが……人造ヒーロー達はほぼS級の実力がある怪人になると思うから先輩の意地としてS級になっておかないとな」
「「「はい!」」っす!」
「それに超とレグレスは見たか今日のファイトマネー」
「いや、見てないっす」
「私も見てないわ」
「驚くなよ……これぐらい入ってる」
今日のファイトマネーで1戦で100万ドルもの金が入金されたと、一時的にファイトマネーを管理しているテレキさんのスマホに表示されていた。
バニーさんと約束した取り分だと、7:3で自分達が7なので70万ドルも個人資産として入ったことになる。
日本円に直すと超とレグの取り分だけでも1億500万である。
「A級戦でこんなにお金が入るんだったら、ここで怪人を稼がした方がいいんじゃないっすか!」
「事実そう。だからウルフが前までA級戦で稼いでいたし、稼ぐ目的で怪人マッチに参加する大企業も多い。まぁ負ければファイトマネーは数万円程度しか貰えないがな。S級の試合になると、これが1試合で10倍から数十倍に増えるぞ」
「「「おぉ……」」」
つまり私達に与えられた期間は1ヶ月。
なのでS級に上がればA級同様に毎日1試合したとして勝率5割でも10日かつ10倍として5000万ドル……7割取り分でも3500万ドル……日本円で約52億5000万円……そこらでちまちま稼ぐより稼げてしまう。
「50億近くあったら一生暮らしていけるわ!」
「まぁバニーさん的には稼ぐよりも会社の箔付けの為に3人に頑張ってもらいたいんだろうがな」
まぁそれも勝てればの話。
まずはA級を突破しないと。
「ほらちゃっちゃと飯を食べて早く寝るぞ! 明日も試合だからな」
「「「はい!」」っす!」
さてと、うん、体中にエネルギーが行き渡る感覚……いつも通り調子は良い。
私……レグレスは成長力においてイエローや超に劣ると思っている。
「ギャァァァ!?」
「勝負あり、勝者ブラックカンパニー所属! レグレス!」
「お疲れ様でした」
今日の試合も無事に勝つことが出来た。
ビームが効く相手だったから勝ててはいるがどうなることやら……。
例えば超……試合では氷の壁を作りビームを屈折させていたが、彼女の肉体の防御力であれば、私は本来傷を付けることすらできない。
前の試合は私に華を持たせてくれた戦いだ。
私だって戦車の装甲並の防御力はあるが、それでも超の拳は私の表面装甲を貫いた。
私は成長によってビームの出力やビットの増加といった制圧力は高くなっているが……本当の強敵を倒せる様な意外性が無い。
兵器化と言えるような怪人になった以上これは宿命であるが、その拡張性とも言える成長力も超に一瞬で抜かれ、イエローも急激な成長を見せている。
電気の持つ無限の可能性が力に変換出来るようになってきたからである。
生体電気を操り、肉体のリミッターを外すことで筋肉を傷つける。
それを増幅した自然治癒力で強制的に超回復を促し、より強い肉体とより高電圧に耐えられる身体を作り、発電量をどんどん上げている。
遂には雷に匹敵する電力を身につけることができている。
それを戦闘力に100%転換することが出来れば私は簡単に倒されてしまうだろう。
「そうならない為にも私はもっと強くならないとねぇ〜」
同期の2人に置いていかれる訳にはいかないのだ!