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第7話 戦闘員K泳ぐ! 町内案内

「自分のペースで良いから2キロ泳ぐぞ」


 地下にある社員用プールで戦闘服を着て泳ぐ。


「これも戦闘服から怪人になるための素養を引き出すため?」


「戦闘員M(前沼)いい質問だ。水泳が求められるのは普通に仕事の為だ」


「仕事っすか?」


「戦闘服と共に戦闘員の生命線、ワープベルト……屋外だと特定の場所にワープすることが出来るんだが、ヒーローによってはジャミングしてくることもある。そうなると逃走するのが求められる」


「それと水泳がなんの関係が?」


「走るのも良いが時と場合によっては川に飛び込んだ方が早く逃走することが出来る。あとは政府が結構な予算をかけて作った地下水路に逃げ込むこともある。地下水路は広いし、汚水だからヒーローが入るのは戸惑う。戦闘員はマスクを被るが、うちの会社のマスクには濾過機能もあるから十分に逃げることが出来る」


「まぁとにかく逃げるために泳げるってのは重要なんだ。戦闘員MとF(藤原)は泳げるなら少しでも早く泳げるように、戦闘員Aアリスも泳げないなら早く泳げるようになれるように頑張れ」


「「「はい!」」っす!」


「ちなみにKさんはどれぐらい泳げるんっすか?」


「まさかおじさんは泳げないって事はないわよね〜」


「あ? ちょっとお前らプールサイドで見てろ」


 俺は煽られているか実力を疑われていると思ったので泳ぎを見せることにした。


 こういう時に実力差を見せつけておかないとガキ達は増長するからな。


 スタート台から飛び込むと俺は泳ぎ始めるのだった。









 Kさんがスタート台から着水するとジュボボボと真っ白な線が水中に出ていた。


 水上バイクの様に……いや、速さからして魚雷みたいな感じで進んでいき、一瞬で50メートルのプールの端に到達するとターンする。


 Kさんが進んだ事で波ができてターンしただけで津波みたいなのが発生していた。


 今度はバタ足を背ずにターンの蹴った衝撃だけで潜水しながら進んでいく。


 するとザバンと音と共に水中からジャンプしたKさんが反対側のプールサイドに立っていた。


「誰が泳げないだ?」


「「……」」


 僕達は黙るしかできなかった。


 それから僕達は黙々と泳ぎ、泳げないアリスにKさんがマンツーマンで泳ぎのレッスンをし、3時間近く泳ぐのだった。









「うぇ……」


「全身が痛い……」


「筋肉痛と成長痛だな。うちの戦闘服に慣れてないやつはだいたいこうなる。ほれ超人化薬飲め。少しは楽になるぞ」


 ゴキュゴキュと3人が飲んでいく。


 文句は言うもののちゃんとやるべきことはやる。


 3人共真面目っちゃぁ真面目だ。


「お前ら今日はこれで切り上げるぞ」


「え? 午後まだありますけど」


「戦闘員A、休むのもトレーニングだ。戦闘服脱いで、体洗って私服に着替えて事務所に集まれ」


 俺が3人に指示を出して待つこと20分。


 私服に着替えた3人が現れた。


 戦闘員M(前沼)はザ·メンヘラっぽい格好で、黒のワンピースに白いリボンを付けていた。


 戦闘員F(藤原)は動きやすいパーカーに短パンとボーイッシュな格好。


 戦闘員Aアリスは冷水と全面書かれたTシャツに黄色いスカートを履いていた。


「戦闘員A……お前服のセンスねぇな」


「まぁ僕もそう思うっす……」


「冷水って……」


「クールウォーターって意味でしょ? 漢字格好いい!」


「典型的なダサい外国人思考じゃねぇか……日本育ちだよな?」


「そうだよ?」


「……FとM、今度Aに服選んでやれ」


「あの……僕達お金全然無いっすよ」


「そうそう!」


「お金ない……悲しい……」


「まぁ少しは貸してやるから安心しろ。土地勘ねぇと思うから散歩すっぞ散歩」


「あの……言っちゃ悪いっすが、Kさんはそれで行くっすか?」


「なんでスーツなのよ!」


「普通この時間は仕事している時間なの。営業職を装うのに都合が良いんだよ」


「だったら学校に行ってなきゃいけない私達はおかしいんじゃないの〜?」


「4月2日はまだ春休み。中学生や小学生みたいな人達が居ても不思議じゃねぇよ」


「世間体も気にしないといけないっすか?」


「可能な限りな。あと近場では揉め事起こすなよ。住みにくくなると困るのは自分達だぞ」






 事務所から出る。


 事務所はビル街の中にあり、周りは商業ビルだったりアパートが建ち並ぶ。


「この道をまっすぐ行くと駅に繋がっている。だいたい歩いて15分くらいだな。私的にワープベルトは使えない決まりに戦闘員はなっているからな」


 Aが


「その言い方だと怪人は私的にワープベルト使えるの?」


 と言い、俺が答える。


「良い質問だ。怪人になると容姿がどうしても異型よりになってしまう。擬態出来るタイプなら良いが、そうでは無いパターンも有る。怪人は怪人や戦闘員だけが出入り出来る町がある。悪の組織組合が厳重に管理しているから日本にあるのか、それとも外国にあるのかすら分からねぇがな」


「そうなのですか……」


「まぁそのうち行くことになるからな。FとMは知ってるんじゃないか? 闇中学も似たような場所だろ」


「一応闇中学は町の中で、普通に中学校って感じだったけど?」


「あ、そうなんだ。じゃあ俺が知ってる闇中学とは別か。悪い忘れてくれ」


 そんな事を喋っていると商店街に到着した。


「商店街ってシャッター街になってる所が多いって聞くっすが、ここは普通に色々な店があるっすね?」


「ここらはスーパーはあるけど商店街が普通に力を持ってるからな。というか商店街の人達が普通に地主をやっていたりするから大型ショッピングモールの誘致を画策した市長を裏工作で解任に追い込んだりとすげぇ力がある。ブラックカンパニーの前の総領だった今の若の親父もこの商店街の役員で、若も組合員じゃなかったかな?」


「八百屋、肉屋、魚屋、卵屋……色々あるっすね。普通にコンビニも商店街の中にあるのが現代って感じっすが」


「商店街の奥にスーパーがあって、スーパーの中にパン屋が入っている感じだな。結構美味いぞ」


「ねぇおじさん〜Mこれ食べたい〜」


 Mが指差したのは焼き田楽だった。


「親父かよ」


「酒のツマミが好きなの〜」


「AとFも食べるか?」


「食べてみたい……です!」


「食べたいっす!」


「親父、焼き田楽4つ」


「あいよー」


 焼き田楽を受け取り、3人に1本ずつ配る。


「うん美味!」


「美味いっすねぇ!」


「美味しい!」


 そのままコンビニに立ち寄り、ATMでお金を下ろす。


「普通の口座あるんだ?」


「闇銀行にしないんすか? 学校だと悪の組織は闇銀行に口座を作るって習ったっすけど」


「あー、ブラックカンパニーは表向き普通の人材派遣の会社だからな。綺麗なお金も流れてくる。闇銀行はたまにヒーローのガサ入れで倒産するし、普通のATMが使えねぇから普通の口座も持っておくと良いぞ……と言いたいが、お前ら未成年だから学校では闇銀行の口座作れって習うんだと思うぞ。今度闇銀行で口座作らねぇとな。給料日の前に作るか」


 そのまま雑貨屋に行き、財布を選べと言って財布を選ばせ、俺は3人に5万ずつ貸し出した。


「5万あれば生活出来るだろ。とりあえず貸すから自由に使え」


「やった! おじさんやっさし〜」


「うれしいっす!」


「ありがとうKさん」


 そのまま軽く町の案内をして、社宅前で解散になるのだった。


「明日はまたトレーニングだから体休めておけよ」


「「「はーい」」っす」


「じゃあな」


 俺は事務所に戻り、今日の業務内容をバニーさんに提出するのだった。





---

 用語解説


 ·ブラックカンパニー製戦闘マスク


 主に顔を隠す為のマスクであるが、身バレ防止の他に頭部の攻撃を防ぐための防具としての役割も有る。


 目の部分は特殊レンズが入っており、視力強化や視野角の拡大などの効果がある。


 また鼻や口部分にはフィルターが入っていてガスマスクやシュノーケルの役割もこなす。


 骨伝導マイクやイヤホン機能もあり、戦闘時の騒音中に指示を出したり、水中での会話も可能。


 製作者は博士。

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