第65話 目標の再確認
事務所になっている別荘に主要メンバーにベテラン戦闘員含めた14名が、リビングルームに集まっていた。
「今一度組織の目的とかについて考えましょう」
というのも俺とバニーがまぐわり終わったピロトーク中に組織の目的を知っている人が少なくなっているんじゃないかという話になった。
「私達の目的……それは日本の制圧よ」
「「「えええ!?」」っす!?」
多くの人が驚いていた。
「これはブラックカンパニー創設した父親の代から変わってないわ。ブラックカンパニーは日本を制圧することを目的とした組織よ」
「ちょ、ちょっと待ってほしいっす。目的デカすぎないっすか? まぁ確かに悪の組織が世界征服とかをネタで掲げるところはあるっすけど……えぇ」
「超が言いたいことはよーくわかる。現状はどう頑張っても不可能よ。で、私兄こと前総領は漠然とした目標にある程度段階を作ったわ」
「まずは中堅の悪の組織になる……これはクリアしたから、次は怪人20人以上、人員200名以上の大きな悪の組織……大企業になることを目指したわ。まぁこの前段階でポシャったけど」
「人材派遣から業界情報をいち早く察知し、隙間産業に手を広げる。そこでシェアを獲得し、資産を蓄えて1つの街の市議会や市長を傀儡にし、国会議員ともパイプを作り、県議会、国会と徐々に浸食していき……って流れを兄さんは考えていた様ね」
「一部は上手くいったわ。それこそ前にブラックカンパニーがあった街の役員に兄さんはなっていたし、Kのお陰で国会議員にも何人かパイプを作ることができた。一部プランを組み替えながらも着実に前に進んでいたわ」
「まぁ今回の件で大幅に後退したけど……」
「で、改めて今後の会社の目標を何処にするかについて皆で話し合いたいと思うわ」
うーんと皆悩む。
そりゃそうだ。
いきなり大きな目標を変えるかもしれないと言われたからである。
俺が発言する。
「とりあえず引き続き日本制圧を戦略目標にするのは良いんじゃないか?」
と言うが、あんまり反応はよろしくない。
ただ博士が
「じゃあサハリンこと樺太を制圧してはみないか?」
といきなり言い出した。
博士はタブレットを操作するとテーブルに日本周辺の地図を映し出した。
「まず樺太はロシアのサハリン州の大部分を構成する大きな島だ。大きさ的には北海道より少し小さいくらいに当たる」
「この島は豊富な木材と漁場、それに石炭と石油、天然ガスも多く埋蔵している。ただロシア国内の悪の組織の暗躍による治安悪化や過酷な環境故に人口は減り続け現状は10万人以下の人口になっているらしい。詳しい統計も取れないくらい混乱している」
「この樺太島はロシアからも僻地であるし、日本では無いため日本のヒーローが手出しすることができないんだ。だから樺太を制圧して表向きの企業を作り、悪の組織のネットワークで日本国内や韓国等で劣勢の悪の悪の組織を誘致し、支配下に置くことで組織力を強化! そこから順繰り日本を制圧していくで良いんじゃないかねぇ」
博士以外代替案もでなかったので、まず勢力を立て直したら闇市場で樺太の土地の一部の権利を購入して移転することに決まった。
「日本制圧を目指して頑張るわよ!」
「「「おお!」」っす!」
ブラックカンパニーが大損害を出しながらも立て直しに奔走している頃、もう一方で組織が壊滅してしまったカラーコミュニティの残党が集まっていた。
「クソ! カラーコミュニティなんかに参加するんじゃなかったぜ! 過激派のせいでこちらは大損だ」
「救いは過激派は壊滅したお陰で穏健派が主導権を取り戻せたことだろうが……ここからカラーコミュニティの再建は無理だろうな」
暗い地下基地の一室で生き残った首脳陣が話し合いをしていた。
「そもそもなぜブラックカンパニーにあんな大勢力を送ったのだ? 事前情報であればもっと少数の兵力でも制圧できると言う話だったろ」
「ブラックカンパニーを大兵力で襲った理由は彼らが抱えていた秘密兵器を早急に奪取するためだ。その兵器があればラブプラネットに打撃を与えられると過激派は思ったのだろうな。あとは兵力を補充するために周辺住民の拉致だ。そちらは概ね成功したがな」
「まぁ住民の拉致によって我々はこうして生きながらえているわけであるがな」
ブラックカンパニー襲撃と並行して行われた周辺住民の拉致作戦により1万人以上の住民が拉致され、裏市場に流れていた。
減った戦闘員の補充も行い、カラーコミュニティが残党として機能しているのもそこで得た兵力と資金力によるところが大きい。
最も発言力や兵力が大きかった主力の会社はブラックカンパニーが意図的に流したカラーコミュニティと敵対していたラブプラネット含む複数の会社に襲撃されて壊滅したわけであるが……。
「しかもブラックカンパニーが持っていた秘密兵器は事実で、我々の兵共々直径10キロを吹き飛ばし、侵攻した戦闘員1000名に怪人215名のうち生きて帰還できたのは5%に満たない……。はぁ……戦闘員は幾らでも補充できるが、うちは麻呂というS級怪人を失う大損害だよ」
「解せないのはブラックカンパニー襲撃を断った味方勢力にも過激派は兵を向けた事だ。粛清によって5社も消えた。それが無ければまだカラーコミュニティも延命や立て直しができたものを」
生き残っているのは中小の穏健派6社のみ。
「カラーコミュニティは悪名が大きすぎる。名称変更をするか解散するしか無いだろう」
「しかし今解散してしまえばここぞとばかりにラブプラネットが攻撃を仕掛けてくるぞ」
「弱い者は群れ無ければ生きていけないのだよ……」
「今後はどうする……このまま地下室に籠もっていても状況は好転しないぞ」
生き残ったカラーコミュニティは頭を悩ませるのであった。
一方でヒーロー協会側も人造ヒーローの事以外でも1つの市がほぼ消失したことによる経済的損失だったりヒーローに対しての不安が広がっていた。
悪の組織がいよいよ戦術核並の兵器もしくは怪人が出てきたのだ。
これを早急に倒さなければ被害が凄まじいものになってしまう為に死に物狂いで情報を探っていたが、全く痕跡が出てこなかった。
結局出てきたのは死体も残らなかったので推定の死者数で、少なくとも2万人が爆発により蒸発、5万人が死傷……損害額は推定800億円にもなると思われる。
「この爆発に巻き込まれたヒーローも多い……そしてどさくさに紛れての人造ヒーローの奪取……いよいよ悪の組織の本格侵攻か?」
「一応悪の組織側に潜らせたスパイによるとカラーコミュニティという組織がブラックカンパニーという組織に襲撃して、ブラックカンパニー側が戦術核に匹敵する兵器で自爆したらしい。両組織は壊滅。漁っても何も出てこんよ」
「クソ! 悪の組織共め! ヒーローサイドを引っ掻き回すだけ引っ掻き回しおって!」
「その悪の組織が足を引っ張り合ってないとヒーローが現状対応出来ないのが問題だ。我々が頑張らなければ日本の治安が終わってしまうのだから!」
「その事なのですが……ヒーロー側だけでは被害が防げないと政府は新たに武装警察の設立を決めたようです」
「武装警察?」
「はい、昔の特高警察の様なもので治安維持法を復活させて怪しい場所を武力行使も辞さない構えだとか」
「そうなれば日本は監視社会になってしまう! 人造ヒーローの完成を急ぎ、その成果をもってヒーローここにありというのを見せなければ!」