第63話 バニーと付き合って 1
「さぁ! クタクタになるまで走るっすよ!」
「「「はぃ〜」」」
「もっと元気出して行くっす! せーの! いーち」
「「「そーれ!」」」」
「にー」
「「「そーれ!」」」
「「「さん!」」」
「「「そーれ!」」」
超と人造ヒーローの子供達が山から山へ走り込みをしていた。
皆超人的な身体能力があるから重力ベルトで3倍の重力にして声を出しながら走っている。
声を出しながら走ると肺が鍛えられて、酸素を体に取り込む量が増える。
そうすると普通に走るより疲れる代わりに体全体に酸素が行き渡り、疲れた筋肉を早く修復したり、自律神経の乱れや血流が良くなったりする。
培養液の中で長い事生育されていた人造ヒーロー達はまずは動くことに慣れることをしないといけない。
しかもここは大自然の中……ロボット達にランニングコースだけぱぱっと整備してもらい、戦闘員の服を着ながら運動してもらう。
ちなみにトレーニング内容は俺も監修していたりする。
まだ超だけだと不安があるし、人造ヒーローを怪人にするのは会社の再建的に失敗は許されないため、過保護くらいに見るのが丁度よい。
まぁ滅茶苦茶トレーニングはさせるが。
超も自身のトレーニング経験を活かして教えることができているので良いだろう。
「皆子供に負けないように私達も頑張ろうね!」
「「「はい! イエロー様!」」」
一方でイエローを慕う生き残った新人戦闘員達5名も、イエローをリーダーにトレーニングをしていた。
彼らがやっているのは俺がトレーニング用にと博士のロボット達に作ってもらったアスレチックである。
用途的にはフィットネス トレイルや屋外ジムと呼ばれる物に近い。
うんてい、壁登り、ロープ登り、水平台、土管くぐり、水汲み滑車、巨大ジャングルジム、懸垂棒など多種多様な安価で出来るトレーニング機材を設置してもらった。
室内トレーニングでは限度があった体の動きをここでは存分に動かすことが出来るし、怪人だろうが人目を気にしないでトレーニング出来るのは大きい。
イエローが担当している戦闘員達は擬似人格が定着したため、ベテラン戦闘員になるためのトレーニングを重点的に行なっている印象がある。
しっかし、イエローも飴と鞭の使い方が上手い。
休ませる時は休ませたり自由にさせたりし、一緒にレクリエーションを行うことで絆というべきものを深めていたりする。
今度社員一同でやるバーベキューも考案し、場を良くする働きをしているように思える。
一方で教育に関しては落第点を与えられたレグレスは、闇市場で資材購入のお使いを頼まれて行っていた。
食材だったり、新しく建物を建てるにも建材が必要。
木材を使ったログハウス風な建物も良いが限度があるし、ここは豪雪地帯。
頑丈な建物を建てないと雪の重みで潰れてしまうし、暖房に気をつけないと凍えて死んでしまう可能性もある。
博士が地熱を利用した発電だったり、温泉施設を地下に作ると約束しているが、そのためにも色々資材が必要なのである。
ちなみにレグレスだけでなくテレキ、ウルフやベテラン戦闘員達も今日は買い出しに出かけていた。
眺めている俺は久しぶりの休み。
ようやく書類地獄から解放されたために別荘の屋上で日光浴をしている。
ちなみに横でバニーさんも水着にサングラスをかけて日光浴を楽しんでいた。
「あぁ~疲れが安らぐわ……」
「とりあえず書類系は片付いたから、あとは戦力の立て直し。基地周辺インフラを整える……くらいですかね?」
「あぁ~まだやることが沢山ある……兄さんなんで死んじゃったの……」
「若の事を悔やんでいても仕方がないですよ」
俺はクーラーボックスから冷えた缶ジュースを渡す。
「これでも飲んで元気出して」
「ありがとうK!」
ゴキュゴキュっと桃ジュースをバニーさんは飲んでいく。
「資金的にはどうなんです? カラーコミュニティが潰れて右往左往している銀行でも襲撃してきましょうか?」
「お金ねぇ……とりあえず兄さんが溜め込んでいた百億の資金があるけど、悪の組織としては心もとないわね……」
「友釣りでもやりましょうか?」
「何釣るのよ」
「ヒーローの友釣り」
「そんな事をやっていたらKが表沙汰になるわよ。秘匿戦力だからKは輝くんだからね」
「まぁ確かに……」
「ねぇそれより……もう付き合うの反対する人も居ないから私達付き合わない?」
「すみません、俺から言うべきなのに」
「ムードもへったくれも無いわね」
「日光浴中に付き合わないは普通無いですからね……よっと」
「ん? 何処に行くの?」
「ちょっと返答待ってくれませんか。せめてカッコつけて返答したいですわ」
「あら? 何かしてくれるの?」
俺は一度自室に戻り、ある物を取りに行く。
「これバニーさん付けてください」
俺はストロベリークォーツが付いた指輪を差し出した。
「まぁ! 綺麗!」
白色の中に赤い模様が入っている宝石で、特殊な水晶の一種である。
「石言葉が愛なので丁度よいと思いまして……せめてもの気持ちです」
「右手の薬指に嵌めてくださる?」
「喜んで」
俺はバニーさんの右手の薬指に指輪を嵌める。
ちょうどピッタリで綺麗に指輪が奥まで入った。
俺も指輪を右手の薬指に付けて
「お揃いですね!」
「うん! 子供沢山作りましょ!」
「バニーさん!」
「きゃ!」
俺とバニーさんはそのままバニーさんの寝室に移動してイチャイチャするのだった。
4時間ほどベッドの上で運動会が開催され、全身ベタベタになり、シャワーを浴びる。
「若、貴方の代わりにバニーさんを必ず守りますから安心して成仏してください」
俺はシャワーを浴びながらそう呟くと、食堂に移動する。
真っ先に作られた食堂で六姉さんが料理を作ってくれていた。
「はい、唐揚げとラーメン定食」
「美味そう! いつもありがとうね六姉さん」
「はいはい! ってあらあら! 指輪してるじゃない! 何々バニーさんと遂に?」
「はい、付き合うことになりました」
「あら良かったじゃない! バニーを泣かせないようにしないと!」
「今まで以上に頑張りますよ」
「住む場所はどうするの?」
「とりあえず社宅が完成したら俺の家にバニーさん……バニーを呼びますよ。男連中を追い出してね」
「ヒューやるう。頑張りなさいよ!」
「はい!」