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第52話 次の年度に向けて

「うーす、戻りました」


「おかえりK」


 俺が事務所に戻ると若とバニーさんとウルフの3人が作業をしていた。


「Kさん、今日の早速ニュースになってますよ」


「どれどれ」


 ウルフがリモコンを操作してニュースにすると、大規模襲撃事件とデカデカと画面に書かれていた。


『この事件でヒーロー側の損害はミルキーホワイトが行方不明になっており、現在警察と捜索が行われております。悪の組織側の被害は80名を超えるとみられており、ヒーロー側の勝利ではありますが、厳しいと言わざる得ません』


『マジカルクインテットにとっても、ヒーロー協会にとっても由々しき事態です。S級相当のヒーローを倒せる怪人の情報を捕捉できてない……これはよくない』


『現時点で分かっていることは、結界を単独で脱出出来る手段を持っていること、ベテランヒーローのミルキーホワイトを連れ去る事が出来る実力があると……』


 俺はテレビを切る。


「まぁいつも通りだ。ニュースに便乗して名乗りを上げる馬鹿な怪人が複数人出ていつも通り沈静化するだろう」


「それまでは国外中心に依頼を回すようにするわ。お疲れ様なK」


「若、これオママから」


「10億も値が付いたか。確かに……給料に反映させておく」


「お願いします」


 俺は事務室の椅子を引いて、デスクに向かうと、今日の日報を書き始めた。


 ウルフが若に


「若、今日ので7名粛清しましたが、補充はどうするので?」


「オママのところから使えそうなの6名買い取る。イエローとレグレスの2人の部下に丁度よいだろ」


「いいなぁ~特別扱い」


「投資額が違うのウルフ」


「へいへいわかってますよ」


 まぁ同じ怪人なのに何かと優遇される2人に思うところがあるのだろう。


「ウルフ、今日俺と1杯付き合え」


「マジっすか! やった! 行きます! 行きます!」









 闇市場のとある居酒屋。


 怪人や戦闘員が酒を飲みに訪れる隠れ家的な場所である。


「流石Kさん、いい場所しってますね」


「世辞はいいよ」


「世辞じゃないですよ」


 個室に入り、酒とツマミを注文する。


 俺はなめろうというアジの叩きを、ウルフは馬刺しをそれぞれ注文する。


「「乾杯」」


「イエローやレグレスの件で愚痴溜まってるだろ。ここじゃ誰にも聞かれないから吐き出して良いぞ」


「ではお言葉に甘えて……いや、本人達の頑張りは理解できるんですが、こうもかけられる期待や待遇が違うと嫌になりますよ! 叩き上げの自分だからですかね」


「まぁウルフは2年戦闘員で過ごしたからな。それに対して3ヶ月、4ヶ月で怪人になったイエローとレグレスに思うところがあるのはわかる」


「Kさんもそう思うんですか!」


「まぁ教育係を務めたから両方の味方が出来るんだが……相応の努力はしているよ。ウルフが戦闘員時代にあの量のトレーニングをしていたら潰れていたぞ」


「それは……そうか……」


「一番頑張ったのはイエローだがな。学校出身でもないから、だいぶセーブして調整しながら鍛えたが……」


「まぁKさんの本気の特訓は耐えられたの居ないですからね」


「怪人になれば叩き上げもエリートもスタートラインに乗った事になる。弱体化した超は例外としても、ウルフもイエローもレグレスも……それこそタイガーさんとかもだ。一様に怪人と見られる。あとは会社での実績が全てだ」


「今日だって難しい依頼だったからイエローやレグレスじゃなくて現場を知っているし、経験豊富なウルフが選ばれて別働隊をまかされたんだ。撤退の判断も最適だったし、ウルフの隊は損害0だったからな。よくやったよ」


「ありがとうございます」


 酒を飲みながら、ウルフを褒める。


「でもいいなぁ~イエローやレグレスは直属の部下が出来るなんて」


「いや、だいぶキツイことだぞ」


「と言うと?」


「ウルフは戦闘員が死ぬ現場を幾度と見てきただろうが、イエローとレグレスはその経験が無い。場合によっては戦闘員を捨て駒に怪人の自分達が生き残らないといけない選択をしないといけないんだ……これは辛いぞ〜」


「なるほど……そういうことですか」


「ウルフに部下が任されるとしたら俺みたいに怪人を見越した戦闘員になると思うが、イエローとレグレスに任されるのは玉石混淆の者になる。辛いぞ〜使えない人材を引いた時は」


「うわ……そうか……その危険性もあるのか」


「若はイエローとレグレスを次世代のモデルケースにしたがってたからな。ウルフ、多分次に入ってくる幹部候補はお前が担当だと思うぞ」 


「え? なんでですか?」


「俺は教育期間中に色々溜まった仕事がある。それに会社の最高戦力を教育に充てるって結構リスキーなのさ。そうなると若手で人柄もよく、戦闘力もそろっているウルフは教育係として最適って訳だ。補助にT1を付けるって話も既に若としてある」


「責任重大だぞウルフ」


「が、頑張ります!」


 俺とウルフはそのまま酒を体に入れながら夜遅くまで語り合うのであった。











「ただいま」


「おかえりっすKさん!」


 家に帰ると、ちょこんとテーブルに座ってノートにシャーペンで必死に文字を書く練習をしている超が居た。


「この体だと文字を書くの一苦労っすよ」


「超はよく頑張るな……辛くは無いか?」


「そりゃ辛いっすよ。今まで出来ていた事が出来ないっすから……でも少しずつ回復している自分がいるっす。このまま頑張るっすよ」


「……イエローとレグレスに戦闘員の部下を付けることが決まった」


「……そうっすか」


「来年の4月からはお前達みたいに幹部候補の新人も入ってくる。馬鹿にされるかもしれないが挫けるなよ」


「はいっす!」


 俺はトレーニングルームで筋トレをしてシャワーを浴びてから眠るのだった。


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