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第5話 生意気新入社員を分からせろ!

「おはようございます」


 はわぁーと欠伸をしながら事務所に入る。


「あ、おはようございますKさん!」


 そう言ってきたのは後輩のZ1。


 戦闘服に着替えているので出撃待機っぽい。


「あれ? 今日非番じゃなかったっけ?」


「Gさんが季節外れのインフルエンザでダウンしたので代わりですよ」


「おお、そうか」


「それよりも来てますよ! 新人の子達が」


「マジ? 早くね? まだ始業20分前だけど」


「気合入ってますね! 良いじゃないですかやる気あって」


「やる気が空回りしないことを願うばかりだよ……」


 とりあえず荷物を置いて、俺も戦闘服に着替える。


 マスク被ってしまうと誰が誰だか判別が難しくなるのでマスクは腰のベルトに挟んでおく。


 俺が準備していると他の面々も出勤してきて戦闘服に着替えて準備したり、着替えてからおにぎり食べている奴もいる。


「うーっす」


「あ、タイガーさんおはようございます」


「おKじゃん。新人教育頑張れよ」


 タイガーさんは俺が新人時代には居たベテラン元戦闘員で、俺から見ても先輩に当たる。


 気さくで良い人なんだが仕事でスイッチ入ると仕事を放棄して逃亡しようとした戦闘員の粛清も普通にやる人だ。


 博士入社前に他所から怪人化薬を取り寄せて怪人になったので、怪人としてのスペックは型落ち感は否めないが、会社が辛い時期を必死で支えてくれた功労者でもある。


 若(総領)もタイガーさんは終身雇用を約束しているほど信頼もされているし、なんなら権限だけならナンバー3である。


「今日怪人の出勤ってバニーさんとタイガーさんだけですか?」


「まぁそんなところだ。今日の依頼は闇銀行の集金作業の護衛だから危なくもねぇしな。戦闘員もZ1とB2の2人だけだし」


「あー、そりゃ楽っすね。頑張ってください」


「おう、お前は昨日大変だったな。ヒーローの闇討ちに遭ったんだろ?」


「まー、俺とバニーさんで対応できたんで大丈夫でしたわ」


「ガラスに穴が空いちゃってさ……修理何時になるの?」


「今日博士のロボット軍団が窓ガラスの交換するって言っていたので、今日中には直ってるんじゃないですかね?」


「ふーん、まあ良いや」


 タイガーさんはソファーに座って新聞を読み始めてしまった。


 他の戦闘員達も準備が終わり、始業時刻。


 総領室から出てきた3人の子供は既に戦闘服に着替え終わっており、この子達が俺が教育する子達か……若えと思いながらも地下の戦闘訓練室に連れて行く。


 ベテランが朝礼の司会をすることになっているので、自然と俺が毎日やることになっている。


「おはようございます」


「「「おはようございます」」」


「4月1日、朝礼を始めます」


 朝礼はラジオ体操をし、社訓を読み上げ、今日の業務内容の確認をする。


「1班は闇銀行の集金補助を10時から、2班は大阪でやってる戦闘員集団教育への参加、3班はアジン連合軍から戦闘員派遣の依頼が来てるからアジン連合軍への派遣以上」


 俺がバニーさんが纏めた作業指示を読み上げる。


 それが終わったら若からの挨拶をして業務開始である。


 ただ今日は新人がいるので新人達に挨拶をしてもらう。


「えー、本日から3名の新入社員が居るので挨拶してもらいます。戦闘員名と意気込みをお願いします」


 3人の新人が前に出てくる。


 一応俺は名前を知っているが、これからは戦闘員名で呼ばれる事になる。


 まず藤原勇気は真っ赤な髪で縮れ毛のショートカットの少女だ。


 身長はだいたい160に少し足りないくらいか? 


 前沼リサは薄紫色の髪色でツインテールにしている。


 こちらも身長が160くらいで藤原よりは少しだけ背が高い。


 最後にアリス·スチュワートは金髪で背中の真ん中当たりまで髪が伸び、それをポニーテールにしている。


 12歳なので身長も130あるか無いっといったくらいで、純粋な外国人なのでお人形みたいである。


 それぞれの自己紹介が始まる。


「えっと戦闘員Fっす! 戦力になれるようにこれから頑張っていくので先輩方には色々聞くと思うので教えてくれたら幸いっす!」


 活発そうでハキハキと答えて好感が持てる。


 続いて前沼だ。


「戦闘員Mで〜す。死なないように頑張りま〜す」


 甘ったるい声をしている。


 まぁ猫被っている様に思えるな。


 最後にアリスだ。


「戦闘員Aです。よろしくお願いします」


 短く纏めたが何を言えば良いか分かってない感じか? 


 まぁ戦闘員と呼ばれる期間は順調に成長すれば1年も無いだろうがしっかり教えるとしよう。


「はい、拍手」


 パチパチと周りのメンバーが拍手をして挨拶を終える。


 その後は業務事に解散となり、朝礼は終わる。


 新人3人にはこの戦闘訓練室に残って貰い、改めて挨拶をする。


「戦闘員Kだ。お前らの教育係になった。戦闘員……いや、立派な怪人になってもらうように教えるつもりだからよろしく頼むわ」


「ねぇおじさん、しつも~ん」


 戦闘員Mこと前沼が聞いてきた。


「なんだM」


「おじさん戦闘員何年目なの〜」


「おじさんじゃなくて戦闘員Kな、戦闘員M。あと俺はまだ23歳だからお兄さんだ」


「え〜老け顔だから30超えてるのかと思った〜でもおじさんって感じだし〜」


「まぁ質問に答えるわ。戦闘員5年目だな」


「え! ダッサ! 戦闘員を5年もやってるのに怪人に成れてないの!? そんな人から学べる事は何も無いと思うんですけど〜」


「僕もそう思うっす! 学校では3年で怪人に成れなかったら相当出来損ないって教わったっす!」


「まぁ出来損ないっちゃぁ出来損ないか。体が怪人化薬に適合しなくて怪人に成れないでズルズル来てるからな」


「マジの出来損ないじゃん。チェンジチェンジ! こんな人に習っても無駄でしょ」


「僕もそう思うっす!」


「アリスは……いや私はこのKさん凄く強いと思うなぁ」


「「は?」え?」


「まぁなんだ。戦闘員Aアリス以外は俺に不満があると」


「まぁそうね! こんなおじさんなら私でも殺れるでしょー」


「そうっす。僕でも殺れるっす!」


「はぁ……予想はしてたが、こうなるか……戦闘員Aはどうする?」


「どうするとは?」


「今からこのメスガキ2人と俺1人で戦うが、戦いたいか?」


「け、見学で……」


「わかった。ルールは参ったと言った方が負けを認める。この戦闘訓練室では博士の技術で物理的に死ぬ事がなくなっている。体に穴が空いても、頭が吹き飛んでも再生する。痛みは感じるがな」


「なにそれ、じゃあおじさんボコり放題じゃん」


「この技術が普通の仕事でも再生技術として確立できたらどれだけ良かったか……まぁその分、この中なら不慮の事故が起きないからお前ら全力で来て良いぞ」


「じゃあ行くっすよ!」










「じゃあ行くっすよ!」


 戦闘員M……前沼ちゃんとは同じ中学出身で、だいたいの実力はわかる。


 前沼ちゃんも天才や秀才と呼ばれた人達よりは実力は劣るが、闇中学を卒業出来る実力は僕も含めて備えていた。


 前沼ちゃんとアイコンタクトする。


 僕がまず前に出て蹴りを入れる。


 次に前沼ちゃんが僕の後ろに隠れて戦闘員Kさんに思いっきり顔面パンチ……これなら防がれることも無いだろうし、下半身と上半身に同時に攻撃された場合、ヒーローや怪人でも対処するのは難しい。


 余程の実力差が無いと無理だ。


 僕が走り出して戦闘員Kさんとの距離を詰める。


 そのまま一気に蹴りを入れる。


 Kさんは……ガードしない!? 


 僕の蹴りがKさんの腰に当たるが……なんだコレ。


 鉄球……いや、鋼の塊を蹴った様な重くて硬い何かにぶち当たった。


 え? これ腰? 


 ビックリしている僕の後ろから前沼ちゃんが顔面にパンチを入れるが、前沼ちゃんから悲鳴が上がる。


 パンチしたハズの腕が吹き飛んだからだ。


 文字通り体からえぐり取られてバチュンと数メートル先に腕が転がる。


 そのまま前沼ちゃんにKさんが掌底を入れると前沼ちゃんが吹き飛んで壁にぶつかり、鈍い音がして地面に倒れ込んだ。


 それを認識した瞬間に僕はなぜか自分の体を地面から見上げていた。


「え? ふすー! ふすー……」


 声が出ない。


 なんで……と思ったら僕の体が膝から崩れ落ちる。


 僕に本来無ければならない頭の部分が手刀で斬り落とされたのだと、この時やっと理解した。


 僕は薄れゆく意識の中、一般戦闘員ってこんなに強いんだったんだ……と後悔し、死ぬ恐怖を噛み締めながら強く死にたくないと願うのだった。










「は!?」


 意識を取り戻すと戦闘訓練室の床に寝っ転がっていた。


 慌てて頭と首と体を触るがなんとも無い。


 横で意識を取り戻した前沼ちゃんもえぐられたハズの右腕を触っている。


「よしお前ら、再生したな。第二ラウンドするぞ」


「ま、待ってほしいっす! 負け! 負けっす!」


「ヤダ! もう死にたくない! 負けで良い!」


 僕と前沼ちゃんは必死に懇願し、なんなら頭を床に擦り付けて土下座していた。


「なんだ。意気込んでいた割には1回で折れるのかよ……つまんねぇの」


 ガクガクと恐怖で震えが止まらない。


「負けを認めたからには俺を上司として認めたということにするからな」


「「は、はい!」」


「戦闘員A! お前も良いな?」


 ブンブンと首が取れそうになるくらいアリスちゃんも頭を振っている。


「じゃあトレーニングだお前ら」


 Kさんはニッコリと笑うのだった。

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