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第47話 戦闘員F改め超

「んん? なんか力が湧いてくるっす!」


 僕はある日朝起きると体調が凄いよく感じた。


 レグが怪人になる時に浮かぶようになったと言っていた様に、怪人に体の準備が整ったと僕は思った。


 朝食をたべて、急いで戦闘員服に着替える。


 そのまま無理言って博士に怪人適性を測ってもらうとちょうど100%になっていた。


「おめでとう! 今日さっそく怪人化しようか! 若や皆にも言っておいてくれ。朝礼が終わったら怪人化させるからな!」


「はいっす!」


 僕はルンルン気分で若やKさんに報告するのだった。








 朝礼が終わり僕は博士と一緒に研究室に移動する。


「じゃあ怪人化薬を飲んでベッドに横になってくれ」


「はいっす!」


 自分はどんな怪人に成れるのだろうか! 


 イエローやレグの様な強い怪人に成りたいと願いながら薬を飲んだ。


「うぐぐぐ!?」


 全身に怪人化薬が巡り、体に激痛が走る。


 どんどん天井が高くなるような気がした。


 長い激痛に耐え、痛みが無くなると、博士のメガネがズレて唖然とした顔でこちらを見ていた。


「博士?」


「あー、いやー……失敗したかな……」


「え?」


「とにかく鏡だ。今の君の容姿を見てくれ」


 と、博士がこちらに鏡で僕の体を映すと水色のもこもこした毛が目立った。


 尖った鼻、尖った耳、左右3本ずつの髭……。


 手を見ると小さな肉球が見えた。


「え……あの博士……上手く立てないっすけど……」


「……言っては悪いがF……君水色の子狐にしか見えないよ」


「……ですよね」


 二足で立つこともできず、体長30センチほどの子狐になっていた。


「博士! これって怪人なんすか! 全く力が入らないっすが!」


「怪人にはなっている。測定値は怪人を示している」


「怪人って強く成れるんじゃないっすか! これじゃあ弱体化じゃないっすか」


「……そう言われても……私の薬でこうなるとは……申し訳ない」


「元に戻すことは!」


「変身薬で一時的に戻ることは出来るが……時間制限付きだ」


「あ、あんまりじゃないっすか!」


 全く力も入らずに四つ足で歩くことしかできない。


 当たれる人も博士しか居らず、泣き喚く。


 しかし、これは現実である。


 博士に抱っこされて研究室から出て、皆が待っている控室に戻った。


「「「…………」」」


 皆絶句である。


「笑えよ……笑えよ!」


 マスコットみたいな姿に変わってしまった僕にかける言葉が見つからずに皆黙ってしまう。


「博士……これは……」


 若が博士を問い詰める。


「知らず知らずのうちに怪人化薬の失敗を作ってしまったらしい。申し訳ない。Fは戦力として見れない」


 そう言われて怪人化で盛り上がっていた場が凍りつく。


「……博士、怪人化には成功してるんだよな」


「あぁ、怪人化には成功している」


 Kさんが博士にそう聞き、僕の前にやって来た。


「Kさん……」


 バチン


 いきなりビンタされた。


「ふぇ!?」


「泣くんじゃね。怪人にはなれたんだ。泣きたいのは戦力として使えねぇ若の方だよ……こうなった以上覚醒を狙うしかねぇ。今まで以上に必死になって鍛えて戦力になるように頑張るしかねぇんだよ!」


 肩を掴まれてそう言われた。


「若、皆、Fの名前俺が決めて良いよな」


 誰も文句は言わない。


「F、今からお前の名前は超だ。現状を乗り越えるしかねぇん。超えると言う意味で超だ。わかったか」


「は、はいっす!」


「若、超は俺が責任を持って育てます。教育担当として今一度戦力化させてみせます」


「……わかった。悪いが超、給料は凍結させてもらう。会社の戦力にならない以上大金を払うことはできない」


「わかったっす……でも若さん! 今一度社員として見られるようになったらちゃんと給料をくださいっす!」


「それは約束する!」


 こうして僕は怪人になって大幅に弱体化してしまうのであった。











 戦闘員F改め超の出来ることを確認したが、まず二足歩行ができるほど後ろ足の筋肉が無く、背中で物を背負うのも2キロが限界であり、四足歩行も成れてない為に歩く以上の速さが出せなかった。


「重症だな……」


「すみませんっす……Kさん」


「謝るんじゃねぇ。お前は別に悪くねぇんだ。努力して周りを見返すぞ」


「……はいっす!」


 とりあえずやるべきことは走れるようになることである。


 トレーニングルームをちょこちょこと超は動き回る。


 とにかく今出来ることはそれくらいしか無い。


「イエロー、レグレス」


「「はい」」


「当分の間超と接触するな」


「それはどういう……」


「超がお前らを見て何を思う……劣等感しか沸かねぇ」


「「……」」


「メンタルが安定するまでは話しかけられたら話す程度にしろ。遊びに誘ったりするな」


「「……はい」」


「あと2人はこれからガンガン依頼を入れていくようにするからガッツリ稼いでこい」


「わかったわ」


「わかりました!」


 俺は子狐になってしまった超をどう鍛えるか思案するのだった。











 食事も六姉さんに言って床に皿を置いてもらう形になり、焼いた肉やカットされた果物が置かれた。


 ちょこんと座り、なんとか手で肉や果物を掴もうとするが、上手く掴むことができない。


 今までできていたことが急にできなくなり、涙が出てくる。


 こうなるとトイレとかも人用のが使えない為にKさんが買ってくれた猫用の砂を敷いたトイレでするしか無い。


 あまりに自分が何も出来なくなったことに絶望してしまうが、僕は怪人であり、僅かな可能性であるが覚醒と言う急激なパワーアップを希望として頑張るしかない。


 それに成長すれば多少は人間らしい活動をすることが出来ると思いながらKさんの部屋で暮らさせて貰うのだった。

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