第42話 Fとレグレスの宅飲み
海での活動も終わり、8月の給料日。
イエローやレグの給料は高くなって基本給で100万。
僕は今月仕事に出てなかったので基本給の25万……まぁ色々引かれて20万だった。
「仕方がないって分かってるけど差がでるっすね……」
まぁそれでも食費と住居が担保されいるだけでも恵まれているが……。
「F〜闇市場でお酒買ってきたから飲も〜」
レグがそう誘ってきたので僕の部屋で飲むことになった。
「「乾杯」っす!」
買ってきたお酒はクラフトビール。
闇市場で作られていた違法酒である。
こういう酒は当たり外れが激しいが、バニーさんがこの前に闇市場に行った時に教えてくれた当たりの銘柄である。
それを1ダース12本今回は用意してくれていた。
ちなみに今日のつまみは唐揚げ、タコの揚げ物、マグロの揚げ物、ゴボウの揚げ物の4つを冷蔵庫で余っていたので作り、ポン酢とレモン、マヨネーズでいただく。
「かぁ~! 美味いっす!」
「うん! やっぱりアルコールは良いわ〜最高! 体に染みる!」
「30代のOLとかが言ってそうな発言っすね。レグ」
「Fもありがとうねおつまみ作ってくれて」
「別に〜怪人じゃないから自由に闇市場に行けないし、未成年で表ではお酒を買えないっすからね。これぐらいはするっすよ」
「本当にありがとう。Fの料理は上手いから美味しいんだよね〜」
「そうっすか? レグも料理作るの下手じゃないっすよね?」
「そうだけどF上手くなるの早いよ。コソ練してた?」
「夜食としてツマミは作ってたっすが……それくらいっすよ」
「や~ん、料理上手はモテるわよ〜」
レグは揚げ物を箸で摘みながら口に入れていく。
最初は太い指だったが、手のひらから人の手程度の大きさのマジックアームが飛び出して箸を持てる様に成長していた。
怪人に成り立ての時はそんな便利機能は無かったハズだ。
「レグ、そのマジックアーム前まで無かったっすよね?」
「あぁこれ? 箸を持ったり、ペンを握ったりするのに不便だなぁって思ったら体が最適化したっぽい」
「な、なるほど……」
レグの体は成長すると言われていたが、こんな感じに機能が増えていくって事を考えると……どんどん出来ることが増えそうである。
「でもこの体になったお陰でアルコール耐性が上がったのが一番嬉しい! 今まで下戸だったのに、飲みすぎなければ吐かなくなったし〜」
「いいなぁ~、僕3本空けたらベロベロになるっすから……」
「潰れろ潰れろ! 明日は休みじゃ〜」
「そうっすね! 飲むぞ〜!」
グビグビっと缶ビールを飲んでいく。
「ちなみに次の仕事とかは決まったっすか?」
「仕事? あぁ! またデビルサーモンのところから仕事が来たよ! 来週私とイエローと戦闘員の人達の5人で行ってくる」
「へぇー、またデビルサーモン食べたいっすね……いいなぁ~」
「今度行った時に交渉して1尾買ってくるよ。サーモン料理楽しみにしてるから」
「その時はKさんに教えてもらいながら料理した方が良さそうっすね。色々料理を調べておくっすよ!」
話題は別のことに移る。
「そう言えば怪人になると表は行けなくなるじゃん。どうやって買い物してるっすか?」
「普通にネット通販」
「あ~、その手があったか」
「送料かかるし少し時間がかかるけど社宅1階の共有スペースに置いてくれるからありがたいし、闇市場のスーパーで普通の食材は買えるし……」
ちなみに普通のスーパーもあるが、コスト◯みたいな倉庫型卸売小売店チェーンみたいなのも闇市場にはあったりする。
というより各国の怪人が集うのでだいたい大量に売るタイプの小売店が多い。
グローバルで様々な食材や生活用品が売っているが、日本エリアを出ると他言語で使われているので注意が必要である。
「そっか、闇市場の方が色々売っているっすね……」
「地下街だから地上とは勝手が違うけど、闇市場なら亜空間袋みたいな悪の組織の道具を持ち込んでも何も言われないからね。博士に言ってエコバッグ型の亜空間袋作ってもらったし」
「でもそんなに買ってしまう場所あるっすか? 僕と同じ部屋の間取りっすよね?」
「そう! あんまり買えない! だからある程度落ち着いてきたら家と土地をローンで買いたい……」
「土地を買う場合、会社から借りるっていう体裁をするっすよね?」
「そうそう。じゃないと税金とかの金の流れでバレる事があるからね〜。ただ僻地を買うと安いけど通販の対象外になる可能性もあるし」
「あ~だから社宅に住んでないのに荷物が社宅の1階に届く怪人の方々が居るっすね」
「そうそう。まぁ当分は物件探しかな~。変なの買っても仕方がないし」
「夢があるっすね〜」
普通の唐揚げを食べ終わり、僕はごぼうの揚げ物をスナック菓子感覚でマヨネーズに付けて食べ始める。
「F……いや、藤原はどうなのよ。怪人になれそう?」
「Kさん曰く今94%……来月か再来月でなれるかもっすね」
「どんな怪人に成るのかな……私はまさかだったから」
「そうっすよ。絶対小悪魔系とかサキュバス系の感じだと思ったら……まさかのロボットっすからね」
「私の内なる願望が……いや、私自身も強くなりたいとは思ったけどロボットとは思わなかったからなぁ……」
「本人の資質次第って博士も言ってたっすからね……」
「成りたい怪人とかはあるの?」
「やっぱりベターな動物系怪人が良いっす。強くなるのに想像が出来る。そこから能力を獲得していく感じで」
「ふーん……確かに動物系だったら鍛えていることがそのまま生かせそうね」
「でしょー! でウルフさんみたいに影を操るみたいな事が出来れば良いな〜って思ったっす」
「確かにそれが出来れば良いかもね〜」
そう言えばととある事を僕は思い出した。
「T1さんが言っていた配信の事ってどうなったっけ」
「私は行って教えてもらったよバーチャル配信者について」
「どうやれそう?」
「いや~ガワを作るところから始めないと……特注の場合100万近くかかるから」
「怪人にならないとその金額は出せないっすね……」
「あとパソコンの操作に慣れないとお話にならない。慣れるところから」
「それもそうっすね……現状スマホくらいしか無いっすもんね」
「パソコン買わないといけないな〜。仕事でも今後使うかもしれないし」
「確かに……Kさんとかバニーさんとか書類作ってたりするっすもんね。怪人になったらそういうのも必要になるっすかな?」
「戦闘員でも必要になるんじゃない?」
シュポっと2杯目を開ける。
ちなみにレグは4杯目を既に空けていた。
「ペース早いっすね」
「それだけ飲んでも酔わないの。でもヒーロー倒した時ってもっと爽快感あるかと思ったけど、事務的に淡々と殺したな〜」
「急にどうしたっすか?」
「いや、戦闘訓練で2人でヒーロー役を倒したじゃない。あの時は凄い強敵を倒したって爽快感と興奮したんだけど……この前の警備依頼の時に初めてヒーローと対峙して殺し合いをしたけど……全く興奮しなかったのよね〜」
「興奮して隙が出来るよりは良いんじゃないっすか?」
「うーん、成長が全く感じられなかったの。なんだったらこの前海でS級怪人の人と戦った時は逆にやられた後に凄い興奮したけど」
「それまたどうしてっすか?」
「強い相手と戦うと自分の全てを出しても倒せない場合、倒すために工夫する必要があるじゃない。それを考える時に急激に成長する感覚があるわ。それを分かるまでに数日かかったけど」
「良いんじゃないっすか? 成長が感じられるなら。僕は停滞している感じがして億劫っすよ」
「藤原もそのうち分かるわよ〜」
「そうっすかね。あと藤原の名前はもう捨ててるっすから酔っていてもあんまり言わない方が良いっすよレグ」
「あはは、ごめんごめん〜」
僕達は夜遅くまで飲み、結局テーブルに突っ伏して朝になり、レグはいつの間にかいなくなっているのだった。