第30話 次なる依頼は銀行強盗 3
銀行襲撃決行日……俺達は指定されたポイントに集まっていた。
前回集まっていた怪人だけでなく、戦闘員も多く動員されている。
「なんか緊張してきました!」
「イエローもっすか! 僕もっす!」
「なに~ビビってるのあんた達!」
「べ、別にビビっては無いっすよM!」
3人娘はいつも通り軽口を叩きながら仕事の準備を進めている。
「Kさんはいつも通りですね」
イエローが俺に何か言ってきたが、適当に相槌をしておく。
見た感じ今のところ不審な動きは見受けられない。
裏切りは杞憂だったか?
そうこうしていると、纏め役のダークティの怪人が最終確認を行い、ワープ準備に入る。
「では地下水道組は先に準備がありますので飛びますよ。10分後に正面突入組はお願いします」
そう言うと地下水道組はワープを始め、この場からは居なくなった。
「お前ら、ちょっと来い」
俺は3人娘を呼び寄せる。
「なんっすか?」
「おじさんどうしたの?」
「杞憂だったら良いが、突入したら入り口に貼り付け。ATM置き場で少し様子を見る」
「それって大丈夫なのですか?」
「今回ブラックカンパニーは4人しか人員を出していない……戦力としては最初からあまり期待されてないから邪魔をしなければ大丈夫だろう。分前は減るかもしれないが……その時はその時だ」
「おじさんの感ってやつね」
「わかったっす! 中への突入は待つっす」
そして10分後に俺達はワープを開始するのだった。
「突撃!」
ワープが終わった瞬間に銀行に他の会社の怪人や戦闘員達が突撃を開始した。
俺達は入り口付近の壁に張り付いて様子を伺うが、15時ということで窓口がシャッターで降ろされていたが、横の出入り口から突入。
戦闘員や怪人達が中に入るといきなり窓や出入り口がシャッターで封鎖されて閉じ込められた。
「Kさん!」
「やっぱり罠か……となると」
営業窓口付近から銃声の音が響き渡った。
何事かと戦闘員や怪人達が中に突入していくが、悲鳴と断末魔が聞こえてくるばかり……。
俺は扉から手鏡を使って内部を見ると、職員が作業する場所にガトリング砲を構える人物と屈強な怪人達が控えていた。
「ちっ! 嵌められたな。ここから進むな。ガトリング砲の餌食になる」
俺がそう言うと、周りに居た戦闘員や怪人達はうろたえ始める。
「クソ! 割の良い仕事じゃなかったのかよ」
「叫んでもどうしようもねぇよ!」
他の会社の怪人達が揉め始めるが、俺は落ち着いて3人娘に指示を出す。
「俺が奇襲するからお前らは営業窓口に通じる扉の前で待機。通信を飛ばしたら入ってこい」
「「「わかった」」っす!」
俺は頷くと、大声で叫んだ。
「お前ら、この状況を打破する作戦がある。緊急事態だ。一時的に従ってもらう」
「戦闘員が何が出来る!」
「そうだ! そうだ!」
「いいから黙ってろ」
俺が威圧すると反応していた奴らは萎縮して声が出せなくなる。
俺は壁沿いを移動し、壁を拳で軽く叩きながら
「よし、ここだな」
目標を定めると、反対側の壁に移動し、そこから思いっきり走ってタックルで壁を貫通した。
それを見ていた戦闘員や怪人達は驚愕し、その壁から中を覗く。
俺は突き破った壁の勢いそのままにガトリング砲を持っていた敵の怪人をぶん殴り、奥の壁に叩きつけると、マスクに付いているインカムでイエロー達に通信を飛ばす。
「突入!」
扉から勢いよく営業窓口に突入したイエロー達は窓口のカウンターを盾にしながら転がり込む。
そのまま敵の怪人達と乱闘に持ち込んだ。
俺がガトリング砲を操縦していた男を吹き飛ばした事で一時的に固まっっていた怪人に対して掴みかかり、頭を持って右回転で2回半ほど回す。
ボキボキと嫌な音がなり、白目を剥いて痙攣し始めた敵の怪人をそのまま服を掴んで投げる。
すると周りに居た怪人を巻き込んで怪人達が地面に倒れ、俺を倒そうと動いた俺の後に居た怪人にバチバチと感電する音が響いた。
「Kさん大丈夫ですか!」
「ナイスだイエロー! 戦闘員F! M! 生きてるか!」
倒れた怪人の急所目掛けて踵落としを食らわせる戦闘員F。
「大丈夫っす! ピンピンしてます!」
他の怪人や戦闘員達を内部に誘導するMからは通信が飛び
『大丈夫! 五体満足!』
と元気な返答が返ってきた。
「よし!」
俺は倒れた怪人達の上から足を踏み降ろすと、プレス機に挟まれたトマトが潰れるように、敵の怪人達の血液と肉片が周囲に飛び散った。
「やるっすね!」
「こちらイエロー怪人3名を殺った」
「……よし、このフロアは制圧だ」
俺達がフロアを制圧すると生き残った味方の怪人達を集めた。
と言っても生き残った怪人はイエロー含めて2名、しかもその怪人も新人だ。
「怪人名前は」
「テトラ社のアイスマンです!」
「おい、もう一つの……サイダー社の戦闘員で年長者居るか」
「私がそうです……」
「名前は」
「SI5です」
「一時的にサイダー5と呼ぶぞ」
「は、はい!」
「まず見て分かるように俺達はダークティかグルト社のどっちか……もしくは両方に嵌められた。地下水道からの侵入も成功したか分からねぇ……」
それにと俺はベルトのワープ装置が機能してない事に注目する。
「俺達が侵入したタイミングでワープの妨害電波が発信されている。そのため屋外に出ても脱出できない可能性が高い」
「そ、そんな!」
「じゃあどうすれば!」
「まず妨害電波を発信している制御室が何処かにある……が、それを悠長に見つけて潰すなんで悠長な事は出来ないから警備員室にある電源盤をショートさせ、ブレーカーを破壊して、電気系統を麻痺させる。そしたら屋上まで階段で走って脱出だ」
「グルト社とダークティへの報復は!」
「そんなの後だ。金も事前に運び出されていて無い可能性が高い脱出を最優先にする」
「わ、わかった」
「わかりました」
「俺達ブラックカンパニーが警備員室を制圧するから先に屋上までの通路を確保しておいてくれ」
「「はい!」」
「ガキ共、作戦は聞いていたな! 行くぞ!」
「「「はい」」っす!」
警備員室の扉を蹴り破ると、中には警備員達が銃を持って構えていた。
発砲してくるが、俺はドアを蹴り上げて盾にするとそのまま警備員に向かって押し込み、警備員達がドアの下敷きになった所をイエローに感電させてトドメを刺した。
「イエロー、あそこが電源盤だ。大電圧で壊せ」
「わかった!」
イエローが電源盤に触れてピカッと光ると焼ける臭いがした後に、電源盤が発火し、燃え始め、辺りが一気に暗くなった。
「よし、撤退するぞ」
俺達は階段を登って屋上へと急ぐ。
屋上に出るとアイスマンとサイダー5が待っていて他の戦闘員は脱出したと説明する。
「よし、飛ぶぞ」
「「はい!」」
こうして銀行強盗はまさかの失敗に終わるのだった。
会社に戻り、若にダークティかグルト社のどちらかが嵌めたという事を説明すると、グルト社がカラーコミュニティに加入したという声明文がネットに投稿されており、グルト社が今回の犯行を計画したことが判明した。
「テトラ社とサイダー社、それにダークティは今回の件でグルト社に激怒している。グルト社への報復攻撃を計画しているが、Kも行ってくれないか」
「わかりました。何処を襲いますか?」
「勿論グルト社の本社だ。乗り込んで来い」
「わかりました。今回は俺1人で行かせてください」
「あぁ、頼んだぞK」
俺は報告を終えるとそのままグルト社の本社に奇襲を仕掛けるのであった。