第29話 次なる依頼は銀行強盗 2
今日は銀行強盗の為の打ち合わせをするために怪人達が集まる場であった。
今回は5社の悪の組織と合同任務なので、打ち合わせは必須であり、イエローに経験を積ませる場でもある。
怪人になったからには戦闘員を率いるリーダー的な役割を求められる。
今回の全体指揮をするダークティという組織の人が代表として司会をし、俺とイエローは指定された座席に座る。
他の会社もちらほらおり、怪人や戦闘員が参加していた。
「おやおや、他の会社はこの場に戦闘員を呼ぶのですか……怪人の人数が居ない所は大変ですなぁ」
最後にやって来たグルト社という会社の怪人3人がそう言って席に座る。
「グルト社の皆さん他の組織を煽るような発言は控えてください」
「事実だろ。普通怪人だけだぜこういう場に集まるのはよぉ」
クスクスとグルト社の他の怪人達も笑っている。
「えー、全員揃ったので今回の作戦全体を説明させてもらいます」
ダークティの司会が説明を始める。
「まず襲撃するのは集金が終わったタイミングの15時にします」
作戦はこうである。
日時は4日後の金曜日15時。
1時間前にワープポイントに集合しておき、15時ちょうどに襲撃を開始する。
警備員は5名程度で武装も特殊警棒程度と制圧するのは楽であると思われる。
ただ金庫が4箇所地下にあり、それぞれ別の解錠が必要になる。
「地下に続くのは業務用エレベーター2基のみだが、地下水道から穴を開けることで内部に侵入することが出来るとこちらの偵察で判明している」
ダークティは地上で陽動するA班と地下から潜入して金庫を襲撃するB班に分かれるように言われる。
「Kさん、そうなると私達はB班の方が良いですよね?」
「いや、なんか胸騒ぎがする……地下だとワープで逃げることか難しい。危険を承知でA班で行くぞ」
「……わかりました」
班決めになり、地下潜入組はダークティとグルト社が、残りの3社が正面からの陽動を行うことが決められた。
他に細々とした質問が行われ、それが終わると
「では作戦決行までよろしくお願いします」
と司会者が締めた。
「今回参加人数とかが分かったから共有するぞ」
先ほどの会合で各社からの投入戦力が分かったので説明していく。
「正面突入班は戦闘員25人、怪人5人だ。俺達もここを担当する。地下水道から侵入する班は怪人4人、戦闘員15人となる。情報が漏れなければ成功確定の作戦だが妙に引っかかる」
「引っかかるっすか?」
俺は少し考えた後に、考えていることを口にする。
「情報漏洩か裏切りが有りそうな予感がプンプンする」
「裏切るって……おじさん考え過ぎじゃない?」
「戦闘員Mよーく考えてみろ。この依頼はカラーコミュニティに対して明確な敵対行為であり、カラーコミュニティは大企業のラブプラネットとバチバチにやりあえるだけの規模をしているし、今回の敵対行為はラブプラネットと取引のある中堅規模の会社が対象になっている……ここにダメージを与えて、その見返りでカラーコミュニティに参入するって考えている会社が有ったら?」
「……確かにそれだったら不味いわね」
「で、でも普通の依頼かもしれないんすよね!」
「そうかもしれない……でも警戒しておいて損は無いからな。脱出する通路を確認しておく」
俺達は襲撃の訓練をしながら予備のプランも練るのだった。
ジジジジジ
「イエロー何してるの?」
私はイエローがピカピカ電気を何かの機械に流していたので聞いてみた。
「あ、M! 博士から電撃を鍛えるトレーニング機材作って貰ったの! ここに電流を流すと電気を機械が溜め込んで、こっちのボタンを押すと放電するの」
「へぇ……大容量の蓄電池みたいな感じ?」
「そうそう。私の場合電気を体外に放出すればするほど筋肉を鍛えるみたいに電圧も電流も強くなっていくらしいんだ! そう博士が言っていたの!」
「でも一見するとモバイルバッテリーにも見えるけど、スマホの充電とかできないの?」
「これだと蓄えている電気の量が膨大でスマホに挿したらスマホが爆発するって言われてる。もしスマホに充電するには抵抗器を噛ませないと駄目って言われてる。今その抵抗器を作って貰ってるんだー」
「良いなぁイエロー便利だし強い能力で……私も怪人になったら強くて便利な能力が良いなぁ〜」
「Mなら強い怪人になれるよ! 来月には怪人になれるかもって言われているし頑張ろうよ!」
「そうね! そうよね! 見てなさいイエロー! 私も強い怪人になってやるんだから!」
「その意気!」
イエローが怪人になってもトレーニングを続けているのを見て、私も頑張らないとと思い、地下プールに泳ぎに行く。
今日のトレーニングは明後日が銀行強盗決行日ということで軽めの調整を言われているので軽く2キロほど泳ぐつもりだ。
最初の頃は2キロ泳ぐのでもへとへとだったのに、今では調整で泳ぐ距離になっているからだいぶ私も成長したなぁと思う。
プールに行くと、Kさんが水上バイクみたいな勢いで泳いでいた。
「どうやればおじさんみたいに強くなれるのかしらねぇ〜」
軽く準備運動をしてからプールに入り、泳ぎ始める。
「お、Mじゃん。お前もプールトレーニングか?」
「おじさんも気合入ってるじゃん。それで軽めなの?」
「あぁ軽めだぞ。まだ10キロ程度しか泳いでないし」
「マジ人外……超人通り越して怪物じゃん」
「どうなんだろうな? まだまだ強くなれる気がするけど」
「ちょっと! まだ強くなるの!? 私が追いつけないんですけど」
「ガキが。成長力が有っても俺もまだ23歳だぞ。まだまだ成長するわ!」
「あと端のレーンで泳いでよ。横のレーンだと津波が来るんですけど!」
「それぐらい泳いでなんとかしろ。それも特訓だ」
「えぇ~」
そうは言いながらもおじさんは端のレーンに移動して泳いでくれた。
こういう気遣いが出来るから会社の皆から慕われていたり、頼りにされるんだろうな……おじさんは。
泳いでいると、他の戦闘員の人達も泳ぎに来ていた。
同じ女性戦闘員のT1さんも来ていた。
「おやおや! Mではありませんか!」
「T1さん今日の仕事は?」
「今日は博士の使う素材の買い出しだけでありますから午前で終わったでありますよ」
「じゃあ残り時間はトレーニング?」
「そうでありますな! 私も早く怪人になりたいでありますから!」
「ねぇ〜T1さんは怪人になって何したいの?」
「怪人になってでありますか? そりゃ将来は家庭に入りたいでありますな。旦那捕まえて私が稼いで、子供作って……あとは給料が増えるからパーッと使いたいでありますな!」
「パーっとねぇ……何か出来ることあるかなぁ……」
「ハイスペックなパソコンでゲームしたいであります! 配信とかしてみたり!」
「配信?」
「ゲーム配信でありますよ! 表も裏も大人気であります! ヒーローの次に配信者が将来の夢の小学生が多いくらいでありますよ」
「配信かぁ……怪人でも出来るの?」
「そんな人の為のバーチャル配信でありますよ! 私の元の人格が配信業の知識が有ったので教えることは出来るでありますよ!」
「へぇ……趣味としてやる分には楽しそうかも! 今度教えてください」
「OKであります! いやぁ! 同じ趣味になってくれたら最高だろうなぁ!」
そんな会話をしながら泳ぐのだった。