第28話 次なる依頼は銀行強盗 1
翌日……僕はKさんに怒られていた。
「あのなF、状況をバニーさんから聞いたが、襲われた訳でもなく、助けてくれたヒーローを捕らえるって……お前何してるの?」
「え? いや……僕達悪の組織っすよ! ヒーローとは敵対する関係で……」
「襲った男達は別に良い。ヒーローが居なければ捕まえて撃っぱらった方が良いだろう。だがな仕事以外でヒーローを捕らえるってのは会社にとってリスクが大きいんだよ」
「すみませんっす……」
「バニーさんも俺が教育係だから小言言わなかったけど、ヒーローを仕事以外で捕まえた場合仕事が増えるからな。今回捕まえた人達は全員足が付かないように売り払え。間違っても自分の部下に……みたいな事は考えるな。部下をスカウトするようになったら会社としては扱いにくくなるんだぞ」
「どういうことっすか?」
「そんな事をすれば派閥が出来る。変に派閥が出来れば会社が割れる原因にもなるからな」
「なるほどっす……じゃあKさん、Kさんなら同じ状況になったらどうするっすか?」
「ヒーローが助けてくれてるんだろ? 俺だったら普通にその場から逃げる。で、男達が追ってくるようだったら捕縛銃で1人ずつ消していく……見られてないことを前提にな」
「考えが浅かったっす……」
「次から気をつけろ……というより、次はお前怪人になってると思うから、より行動には気をつけろよ」
「はいっす……」
3人娘がオママのマッサージを受けに行っている間に、俺はバニーさんに自身の教育不足を詫びた。
「別に良いのに……Kも律儀ね」
「部下の失敗は上司の責任。教育不足だ。悪かった」
「別に良いわ。それを聞いてFがどう動くかね。菓子折りでも持ってくれば最高だけど」
「そこまで頭が回るかは分からないがな……。この仕事は……」
「ああ、これね。カラーコミュニティと提携している銀行の襲撃依頼。資金源を断ち、ヒーローにもカラーコミュニティの事を露呈させる作戦ね。難易度高いけどやる?」
「カラーコミュニティは学校襲撃で下手打ったからな。ヒーロー側も手掛かり掴みたくてアンテナを張っていると思うからそこに飛び込む形か」
「できそう? 色々な所との合同依頼だけど」
「3人娘にもいい経験になるだろう。やらせてもらうよ」
「あら、Aちゃん怪人になったのね! 見違えるほど美人さんになって!」
「ありがとうございます!」
オママの所で僕達3人がマッサージを受けることと、ヒーロー達の売却を依頼した。
「あらFちゃん。ヒーロー捕まえたの?」
「はい……不意打ちみたいな形で捕まえてしまったっす……」
「あら、その感じだとK君に何か言われた感じかしら?」
「わかるんすか?」
「わかるわよ。伊達にママやってないわ! カプセル見せてちょうだい」
「はいっす……」
僕はヒーロー達が入ったカプセルを渡していく。
「うん……そうねぇ……纏めて1000万ってところかしら」
「そんなもんなんすか?」
「内訳だとC級ヒーローが500万、才能のある男(巨漢)が250万、その他4人が50万に色付けて1000万って感じね」
「もっと高いと思ってたっす」
「改造する費用だったり食費とかの売れるまでの維持費とかもあるのよ。あと最低限の教育も。そうなると一般人の値段はだいぶ安くなるわ。正直臓器売買の方が儲かるくらいよ」
「そうっすよね……」
「この1000万は会社にしっかり提出すること、それにお菓子も持っていきなさい。迷惑をかけた人達が居るんでしょ」
「そこまでお見通しっすか……」
「その代わり今日のマッサージ代金はサービスしてあげるから、マッサージ代金で高めのお菓子を買って行きなさい」
「あ、ありがたいっす! オママさん! ありがとうっす!」
その後マッサージを普通に受けて、お菓子を買ってから会社に帰還するのだった。
「イエロー、戦闘員F、M喜べ、新しい仕事が入ったぞ」
「「「おお~」」っす!」
「今回の仕事は多数の悪の組織と合同した銀行強盗だ」
「ぎ、銀行強盗!?」
「いきなり難易度上がりましたね」
「頑張るっす!」
「とは言え俺達がやるのは回収係の補助。イエローは怪人の能力を使って、電子ロックを外すやり方を覚えてもらいます。FとMは襲撃した銀行の客や従業員の制圧のやり方とお金を回収する役どちらでも出来るように練習してもらいます」
「難しいのかな……」
「期間はどれくらいっすか?」
「決行は1週間後、下見や打ち合わせも行うから怪人のイエローは俺と打ち合わせにも参加してもらうぞ」
「は、はい!」
こうして準備が始まった。
まずKさんが事前資料から銀行の見取り図から戦闘訓練室にて部屋を実物大で再現してもらい、突入場所や監視カメラの位置、金庫の位置を把握する。
今回襲撃する銀行は闇銀行の本店に分類されるらしい。
銀行の中には約1000億ほどのお金もしくは金塊等が保管してあり、それがブラックカンパニーが敵対することになったカラーコミュニティの資金と直結しているらしい。
勿論カラーコミュニティは複数の闇銀行にお金を預けているが、それでも提携する銀行が潰れれば資金繰りが苦しくなるだろうと言う計画らしい。
ちなみに闇銀行というが、表の普通の銀行の顔もあるので、ヒーロー達に襲われる危険性も高いし、場合によってはカラーコミュニティの戦闘員との抗争に発展する危険性もあるとのこと。
短時間で目標を達成したら直ぐに撤退する必要がある仕事とも言われた。
「今回の依頼は金額もデカい。成功すれば1人1億……給料でも1000万の業績になる。失敗したら無しだがな。成功目指して頑張るぞ!」
「「「おー!」」っす!」
というわけで、まずは必要な道具を揃えるところから始まる。
今回僕とMは客を脅すために実銃を使うと言われたので、実銃を闇市場で購入することになった。
イエローとKさんも一緒に闇市場の銃売り場を巡る。
「Kさん、Kさん! 銃がいっぱいっすよ!」
「そりゃ見ればわかる」
「ねぇおじさん。こういう仕事の時ってどんな銃が良いの?」
「まず取り回しが良い銃が良い。あとお前らの体に有った銃だと尚良しだな……例えばこの有名なAK47」
Kさんは露店に売られているAK47と言う銃を指さす。
「これはとにかく壊れにくく、作りやすい事で裏の武器市場に大量に出回っている銃だが、反動が強く、FやMの体には大きすぎる銃だな」
戦闘員として鍛えているため反動は大丈夫だろうが、大きすぎる銃は確かに扱い難い。
「ところで2人は銃を撃った経験ってどれぐらいあるんだ?」
「学校でみっちり3年間習ったから変な銃じゃなければ人に当てるくらいは出来るわ!」
「僕もそれくらいは出来るっすよ!」
「なら今回は取り回しの良いハンドガンにするか」
「ハンドガンだと威圧にならなくはない?」
「俺達だけで挑むんだったらそうだが、今回は他の悪の組織と合同だ。他にも大勢戦闘員が居るからな。それに室内戦の銃は取り回しが命だ。ショットガンでも良いが、誤射が怖いからな」
そう言って売り場をみているとベレッタナノと言う小さくて軽い銃が僕は気に入った。
装弾数は6発と少ないが、威嚇するだけなら十分。
Mも僕と互換性があるようにベレッタナノを選び、これにすると選択した。
「まぁお前らも直ぐに怪人になるから銃を取り扱うのは最初で最後になるかもな。記念品と思って扱えよ」
「「はーい」っす!」
銃を買った僕達は射撃場で試射をし、その後は会社に戻って突入から金庫まで移動する流れを練習したり、博士に必要な道具の依頼をしたりするのだった。