第25話 戦闘員A改めて怪人イエロー
私の名前はアリス……今は戦闘員Aと言われています。
孤児院から売り飛ばされてブラックカンパニーに売られて約3ヶ月……孤児院では私みたいな外国人の子も多かった。
私のような外国人の子が孤児院に預ける場合は親は数種類のタイプがいる。
親が怪人の場合、親が娼館で産んだ場合、違法流民の場合……純粋に経済力がない場合。
これらのどれかで、私の場合裏側に近い孤児院に引き取られた。
孤児院である程度育てて会社に売る。
会社に売った利益と3年間の給料の一部を孤児院に支払う必要がある。
ブラックカンパニーでは私の給料から引かれる事は無く、10万が追加で孤児院に支払われている。
そんな私は戦闘員FとMという同期の2人と一緒にブラックカンパニーに入社してKさんに徹底的にしごかれた。
Kさんから私は怪人の適性が高いと言われていたが、戦闘訓練ではFやMに他の戦闘員人に比べて戦闘力は劣る。
FやMは闇の学校を卒業して戦闘訓練を受けてきていたし、先輩の戦闘員の人達は純粋に場数……戦闘の経験値が違う。
入りたてで、一般人に毛の生えた程度の新人戦闘員には負けないけど、それ以外だと私が一番弱い。
そんな私が一番最初に怪人の適性値が基準を超えたと、怪人になることを許された。
同期のFやMより弱いのに良いのかと言う気持ちがあり、少し罪悪感が湧いてくる。
その事を怪人に改造される前日にKさんと相談をする。
「考えすぎだA。怪人や超人は結局のところ適性だ。適性が無ければ俺みたいにどんなに強くても戦闘員のままってこともある」
「そうだけど……」
「なに、来月には戦闘員FもMも怪人になる。ちょっと早いだけだ。深く考えすぎるな。怪人になって2人よりも早く怪人として訓練できることを喜べ」
「……はい」
Kさんはそう言うがモヤモヤが晴れないまま、怪人になる当日を迎えた。
皆が見守る中、博士に手を引かれて研究室に移動する。
研究室はロボット達と博士が働いている博士の聖域である。
勝手に入れば怒られるし、何を作っているか良くわからない場所だ。
Kさん曰く8割は会社に有用な物が作られると行っていたが、2割は何を作っているのか気になる。
私は治療ベッドの上に腰をかけると博士から怪人化薬の入ったコップを渡された。
中を見ると黄緑色に発光する液体が入っており、明らかに体に悪そうである。
匂いは無臭なのだが、なんか湯気が出ているし、コポコポと炭酸の様に液体から気泡が出ていた。
「グイッと一気に飲んだらベッドに横になってくれ。多少の痛みが伴うが肉体が変化する痛みだから我慢してくれ」
怖くなってきたが、怪人になればやれる事が増えるし、実力も上がる。
私はグイッと怪人化薬を飲むのだった。
ベッドに倒れ込む様に横になると手足を機械でロックされた。
「暴れると危ないからねぇ。そろそろ変化が訪れるぞ」
怪人化薬を飲んで30秒ほど経つと全身が燃えるように熱くなる。
「があぁぁぁぁ!?」
私は必死に空気を吸おうとするが、喉が焼けるような痛みで苦痛の声が漏れ出るだけで、息が全然吸えない。
ブチブチと体中の繊維が伸び千切れたり、ボコボコと骨が外れる様な音が響き、凄まじい苦痛が襲われる。
「があぁぁぁぁ!?」
意識を手放したくても痛みで手放すことができない。
麻酔無しで体を滅多刺れている気分だ。
永遠にも思えた痛みがスンッと一気に引いた。
パスパスとロックしていた枷が外れて、ベッドから起き上がる。
ベッドから地面に足を下ろして立ってみると視点の位置が変わった事に気がついた。
「博士小さくなった?」
「いや、君が大きくなったんだA」
体を見てみると頭に違和感があった。
腰辺りまで黄色くて長い耳? が垂れていた。
しかもその耳は兎の様に頭部の上の方から垂れている。
手足もよく見ると伸びている感じが凄いし、一番の変化は下を見たら胸があり、地面が見えなくなっている。
「随分と大人な体つきになったね」
「博士、どんな事が出来るようになったんでしょう?」
「とりあえずそれは後々調べてみよう。まずは無事に怪人になれた事を皆に見せようか」
「はい!」
戦闘員Aが研究室に入って5分……そろそろ出てくる頃かと俺が思っていると、扉が開いて博士とAと思われる女性が現れた。
「随分と変わったな」
身長が130くらいだったAの身長は170近くまで伸び、全身の色が黄色がメインに変わっていた。
顔は大人になったAって感じで、人間の姿を残していたが、身長が伸びたことでAが着ていた患者衣はパッツンパッツンになっており、体のあちこちが見えていたが、肌色ではなく黄色って感じに変わっていた。
耳の有った場所はヘッドホンの様な物体が付いており、そこには稲妻マークが描かれていた。
髪は金髪が更に色の濃い黄色になり、ワックスで固めた様に硬そうに見える。
一番の特徴は腰まで伸びた兎のような長い耳だろう。
耳先は丸みを帯びたドリルの様になっており、プラプラとAが握っていた。
勿論耳は髪色と同じ濃い黄色である。
「随分とファンタジーの姿になったな」
「名前どうする?」
「可愛い名前にしようぜ」
そう周りの人達はそう言っているが、少女から女に一気に変化したな……と俺は驚いた。
名前を書く紙が回ってきて、新しい怪人名を決めなければならない。
「そのまんま黄色のイエローにしてみるか」
俺は深く考えずにイエローと書いて投票した。
回ってきた投票箱をAが中から5枚引いて名前を決める。
「……イエローにします! 私は戦闘員A改めてイエローです!」
なんと俺の名前が採用された。
拍手をしながらA改めてイエローを迎え入れ、能力が分からないから博士の所で精密検査をすることになり、イエローは研究室に戻るのだった。