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第18話 風呂場の会話

「ふはぁ〜気持ちいぃ〜」


「広い浴場っすよね!」


 料理会が終わった後、僕、戦闘員Mこと前沼ちゃんと戦闘員Aことアリスの3人で社宅の大浴場で疲れを癒していた。


「お、戦闘員A、F、Mじゃない。お疲れ様」


 浴場に入ってきたのはバニーさんと戦闘員T1さん。


 バニーさんは兎の怪人で、全身が兎の様な体毛に覆われているが、ボンキュッボンのグラマーな体型をしている。


 浴場でも下半身にタオルを巻いて居るが、上半身のたわわが実に見事としか言いようが無い。


 そんなバニーさんと一緒に入ってきたのは、僕達からすると1年先輩のT1さん。


 本名は知らないが、僕達に社宅でのルールを教えてくれたり、先日僕達が疲労で休むことになった際に代わりに出てくれた女性の先輩である。


「おやおや、後輩達でありますな!」


「バニーさんにT1さんこんばんはっす」


「はいこんばんは〜」


 体を洗った2人も広い浴槽に入ってきた。


 5人入っても足を伸ばしてゆっくりくつろげるだけの広さがある。


「T1先輩、先日に仕事代わってもらって申し訳ありませんでした」


「すみませんっす」


「ごめんなさい」


 僕達が改めて謝る。


「良いでありますよ。新人でペース配分間違えるなんてしょっちゅうでありますからな!」


「そんな事を言ってるT1も去年酷かったからね」


「うう、バニーさん最初の頃は本当に尻拭いばかりさせて申し訳ない……」


「それが今じゃ立派なうちの戦力。別にT1を貶したいわけじゃないわ。新人の頃に失敗は色々経験しておきなさいってわけ」


 ふうっと湯船にバニーさんが肩まで浸かる。


 地面に埋め込まれている銭湯のような浴槽からお湯がこぼれ、排水溝にお湯が流れる。


 そんなことより目の前のたわわ(乳)が水に浮いているのに僕は気になった。


 やっぱり巨乳だと水に浮かぶんだなぁ……と自分のペッタンコな胸と見比べて少し悲しくなる。


「でも良いでありますなぁ3人は! あのKさんに指導してもらえて!」


「めっちゃスパルタトレーニングですよ」


「うんうん!」


 前沼ちゃんとアリスが言うが、T1さんはそれがすっごくありがたい事だと言う。


「それでもであります! 3人は幹部候補生として期待されてるんだから恵まれてるんでありますよ!」


「T1さんが入社した時はどうだったんですか?」


「私でありますか? 同期入社の人達とテレキさんととある会社の襲撃だったでありますね」


「おお! そういうのを私達もしたい!」


「そうっす!」


「5人居て、生きて帰れたのは私含めて3人、その3人も次の任務で生き残れたのは私だけ……それからは比較的危険が少ない任務に回されたり、生き残れるコツを掴んだでありますなぁ」


 T1さんがしみじみと語ると、僕達は何も言えなくなってしまう。


「本当の意味で新人戦闘員は消耗品であります。ちゃんと教育を最初から受けられる事がどれだけありがたいか噛み締めた方が良いでありますよ」


「「「ごめんなさい……」」っす」


「あ、いや、怒ったりしているわけじゃないであります。ただ恵まれている今の境遇を全力で受け入れてほしいでありますよ」


 するとバニーさんからも言われる。


「この前5人新入社員が入って来たでしょ? 多分生き残るの1人居れば良いほうよ。仮人格が入っているような人は死を悪い意味で恐れないから簡単に死ぬ。会社的には2人は生き残って欲しいんだけどねぇ……」


「仮人格の人達って人格が定着する期間とか理由ってあるんすか?」


 僕が2人に質問するとバニーさんが答えてくれた。


「仮人格が定着するには強い衝撃を与えるのが一番なのよ。生への執着が呼び起こされる危険な現場への投入がやっぱり一番手っ取り早いわ」


「なるほど……ちなみに定着した人格ってどんな感じになるんすか?」


「それはT1に聞いた方が良いわね」


「私もそんな仮人格から昇格した人なのでありますよ」


「「ええ!」」


「てっきり元から人格というより普通に募集で入社した組だと思ってたわ!」


「定着してしまえば元の人の記憶をベースに新しい人格になるでありますよ。だから元の人格がどんな生活をしていたかも言えるでありますよ。私の場合はイベント会場の売り子をしていたでありますよ。そしたらそのイベントで怪人達が暴れて捕まって売り飛ばされて、元の人格を抜かれて……才能があんまり無かったから格安でブラックカンパニーに売られたって感じでありますね」


「顔立ちは整ってると思うんだけど、才能が乏しいとどうしても値段が安くなっちゃうのよねぇ……でも今のペースならあと1年でT1も怪人になれると思うわよ」


「本当でありますか? バニー殿、それはうれしいでありますなぁ!」


「そのためにはちゃんと生き残ってよね」


「はいであります!」


 そんな会話を聞いて、僕と前沼ちゃんはアイコンタクトをして、風呂を出てミストサウナの部屋に移動する。


 ミストサウナは普通のサウナより低温なので息苦しいとかは無い。


 ただ部屋が狭いので2人入るのが限界だが、風呂から出ないで密談するには便利な場所である。


「……恵まれてるんだね。私達」


「そうっすね……T1さんに比べると命の危険がほぼない仕事ばかりっすからね」


「でもそのうちそういう危険な仕事もする様になるっすよね」


「うん……その時に私達は生き残れるのかな?」


「生き残りたいっすね……死にたくないっす」


「その為にはキツイトレーニングも頑張らないと」


「でも僕達って強くなってるんすかね? いまだに学校で戦った秀才、天才達に勝てる気がしないんすよね」


「強くなったって分からないのも辛いわよねぇ」


「でも戦闘員のまま強くなったKさんって何者なんでしょうね」


「分からないわね……」


 全身から汗が出て、シャワーを浴びて、水風呂に入る。


 キンキンに冷えた水が体を包み込み、疲れを水に溶かしてくれる。


「ふぅ……気持ちよかったっす」


「私達先に上がります!」


「あ、Aも出ます!」


 僕達は浴場から出るのだった。

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