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第14話 初仕事 2

「うーし、博物館の事調べ終わったから計画をより練っていくぞ」


 翌日、Kさんは僕達を事務所の休憩スペースに呼んで、資料を広げた。


「ねぇ~おじさん、悪の組織ってもっと行き当たりばったりというか暴力的な感じだと思ったんですけど」


「学校でも作戦立案する人が居て、その人の指示で戦闘員や怪人は戦闘するって習ったっす!」


 僕と前沼ちゃんの学校ではそう習った。


 なんなら作戦立案とかは怪人適正が低い人がやる閑職的なポジションだと言われていたから、もっと暴力的な感じで仕事をするとばかり思っていただけに、下見をして計画を練ってというのは意外だ。


「依頼主や怪人からどう動いて欲しいとか要望されることは多々ある。一方で今回みたいに作戦立案から丸投げされる場合もある。でもな、逃走ルートくらいは抑えておかないと作戦が失敗した時に逃げられなくてヒーローに殺されて終わりだ。そうならないためにもブラックカンパニーでは戦闘員の頃に作戦立案能力も鍛えていく……お前ら、今回の戦車強奪計画を考えてみろ」


「「「ええ!?」」」


「昨日ヒントは色々言ったし、駄目だったらダメ出しするからガンガン意見言っていけ」


 そう言われて僕達は悩んでしまう。


 とりあえず資料を見ると、昨日見学したエリアだけでなく、社員フロアの見取り図なんかも追加されていた。


 すると戦闘員Aアリスが言い始める。


「えっと電線を切断して停電を起こし、停電中に博物館に侵入。そして対象の戦車をボトルシップガンで奪取して近くの非常口から外に出る」


「大まかな作戦の流れはそれでいい。ただ色々見落としがあるぞ」


 僕は博物館に非常用電源があることに気がついた。


「電線を切るだけじゃ博物館は停電しない?」


「そうだ。警備員室に非常用電源のボタンがある。これをどうにかしないと完全に停電はしないことがわかった」


 前沼ちゃんも


「使える人員が5人、ダニエルさんは暴れる事が得意とすると警備員室にダニエルさんが向かって警備員を制圧した方が良いのと、決行する時間は閉館後の夜の方がいいわね」


「というかこれ非常口から侵入して奪った方が早くないっすか? 監視カメラをジャミングする機械があれば一瞬っすよ」


 あーでもないこーでもないと話して、結果的に僕の案を中心にやることに決まった。


 非常口の写真を見るに内側から開けられる仕組みになっているし、ホコリが積もっていて点検が緩くなっているので、開館中に非常口のドアのロックを開けておく。


 外の警備は監視カメラが殆ど無いので自由に行き来し、非常口から内部に侵入。


 監視カメラジャミングを起動して、監視カメラを潰した間に目当ての戦車を奪取して逃走。


 ダニエルさんには一応博物館の外で待っていてもらい、作戦が終わったら即撤退ということになった。


「じゃあそれに必要な機材を博士に頼まないとな」


 と言って要望書を書かされて博士に提出するのだった。









 それからトレーニング等をして1週間が経過し、博士が要望の品を作ってくれた。


「私が作ったジャミング君だ! これがあれば有線だろうが無線だろうがボタン1つでジャミングが可能さ! 要望通りボトルシップガンにはジャミング君が効かない様に改造して置いたから安心して使い給え!」


 瓶底メガネをクイクイさせながら博士が熱弁する。


「はいはい、流石博士!」


「そうだろそうだろ! もっと褒めても良いのだぞ!」


 ペッタンコの胸を張り出してドヤ顔を決める博士。


 それと俺が新人達とは別に頼んだ小物を幾つか作ってもらい、それを貰った。


 そしてダニエルに連絡し、今夜決行することと、作戦の関係でダニエルは見てるだけになりそうだということを伝える。


『見てるだけで40万ドルがゲット出来るならこんな楽な仕事はねぇからな! しくじるなよK』


「任せろダニエル。まぁ予備プランも幾つかあるから安心してロシア料理でも楽しんでおけ」


『おうよ!』








 事前に俺が博物館の非常口のロックを開けておき、作戦開始1時間前になったので、戦闘服に着替え、ワープしてくる3人を待つ。


 ダニエルからチャットがあり、博物館近くのレストランで食事をしていると画像付きで送られてきた。


 返信していると3人娘達が到着し、作戦に取り掛かる。


 外は暗くなり、街灯の明かりが付いているが、博物館は暗くなっている。


 博物館の外周は柵で覆われていたが、俺が踏み台となり、3人がダッシュで俺に向かって走る。


 俺が前で手を組み、足を手にかけた瞬間に上に飛ばすと5メートルくらい高く上がって柵を飛び越えて敷地内で着地する。


 柵を飛び越える必要があるからと練習した甲斐があった。


 残った俺は普通にジャンプして柵を飛び越えて敷地内に侵入する。


 そこから監視カメラの付いた照明周辺に近寄らないようにしつつ、移動すること15分。


 目的の非常口に到着した。


「ここだな」


 戦闘員F(藤原)がドアを開けようとすると扉が開かない。


「ドア開けないっす!」


「あー、鍵閉められたな。まぁこんなもんだろうとは思ったが……ちょっと待ってろ」


 俺はガムを取り出すとクチャクチャと噛み始めた。


「おじさんなにのんきにガム噛んでるのよ!」


「そうっすよ! これじゃあ侵入できないっす!」


 ひとしきりガムを噛み終えると、俺はガムをドアをロックしている施錠のある場所に貼り付けた。


 そのガムにタバコを取り付けてタバコに火を灯す。


 するとタバコはみるみる燃えていく。


「ちょっと下がってろ」


 俺が3人を下げるとタバコの火がガムに到達し、ボンっと爆破する。


 爆破によりドアの施錠が壊れ、自然と扉が開いた。


「F、ジャミング発動」


「は、はいっす!」


 Wi-Fiルーターみたいなジャミング装置をリュックから取り出して、入口に設置する。


 すると赤く光っていたジャミング装置のランプが緑色に光り、ジャミングが始まった事を示す。


 博物館に侵入した俺達はヘッドライトで暗い博物館の中を進み、目的の戦車の前に到達する。


「A、ボトルシップガン発射」


「発射します……えい!」


 するとパスっと軽い音と共にテーザー銃みたいな導線が飛び出し、対象に当たると、一瞬で銃の後方に取り付けられていたボトルの中に戦車が縮小されていどうした。


 そのまま俺達は非常口から博物館を脱出し、設置していたジャミング装置の電源を切る。


 そして3人娘をアメリカにワープさせた後に俺はダニエルに作戦成功のチャットを送ってからアメリカの依頼主の家に飛んだ。











 ダニエルがチャットを送った10分後に依頼主の屋敷に到着し、成果物を見せるように言う。


『おお、確かに戦車が入ってる。これどうやれば元の大きさに戻るんだ?』


「このボトルを割れば元の大きさに戻る。ハンマーとかで叩けばOKだ」


『いやぁ俺はロシア観光しただけだったな! Kに頼んで良かったぜ』


「また美味しい依頼があったら呼んでくれよ」


 そう言ってダニエルが依頼主に報告をして30分後にダニエルが戻ってきて報酬の10万ドル分の金の延べ棒を渡された。


「ダニエル、ここにサインしてくれ」


『あいよー、じゃあまたよろしく頼むぜ相棒』


「おう、またな」









 ブラックカンパニーの事務所に戻ってきた僕達は初仕事を終えた緊張感から解放されて、休憩室でぐでっとしていた。


「緊張したわ〜」


「初仕事が海外なのは驚いたっす」


「でも簡単な仕事だった」


 そう話しているとKさんがアリスの横に座る。


「総評! ギリ合格。もっと予備プランを練っておきましょう」


「すみませんっす」


「おじさんは扉開かないと思ったわけ?」


「まぁ閉められる事は予想してたから博士に小物を作ってもらった訳だし」


「ガムみたいな爆弾っすか?」


「指向性ガム爆弾。火を近づけると爆発する小型の爆弾だ。1個でドアのロックを破壊するくらいの威力、5個あれば地雷と同じくらいの爆発力になる」


「へぇ……」


「まぁ最初の依頼だ。こんなもんだろうな。次からもっと頑張れや」


「「「はーい」」っす!」


 こうして僕達の初仕事は終わるのだった。



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