第130話 樺太共和国誕生
「小型核融合炉起動安定!」
「各種ブラックカンパニーの設備電力供給安定」
「窒素固定装着起動開始」
「海中金属結合装着稼働」
「うん、上出来だねぇ」
私こと博士は小型の核融合炉を使った電力供給システムを確立させ、炉を10基稼働させることで、今まで稼働できないとされていた膨大な電力が必要な装置を稼働させることが出来た。
窒素固定装着は改ハーバーボッシュ法に基づき、空気中の窒素を固定し、固形窒素を生成する方法で、水と電気と空気からパンを作り出すと言われる化学技術である。
大量の化学肥料を作り出すことができ、地下農園を稼働させ続けるために必要不可欠な技術であった。
ちなみにこの技術は硝石も大量に生み出すので、火薬を大量に生み出すこともでき、火薬を使った石炭の採掘が更に捗るのであった。
海中金属結合装置は海水に含まれている金属を抽出して金銀銅鉄等を生み出す装置であり、莫大な海水と電力に対して得られる金属は微々たる量なのであるが、それでも大量に装置を作ればそれなりの量の金属を得ることに繋がる為、あった方が良い装置であった。
副産物として綺麗な農業用水と塩が手には居るのもポイントである。
あとは電炉と呼ばれる電気の力で鉄スクラップを溶かして鋼鉄に加工する装置なども稼働していた。
今まで地熱を用いて発電していたが、それに比べて発電量は数千倍、地下農園の拡大や戦闘員の増加で必要電力が多くなっていたのでKが技術を盗んできてくれて助かった。
「3号、この電力があれば戦闘員の回復装置が稼働できるんじゃないか?」
「はい! 博士その通りです。小型核融合炉1台で100人分の医療用ポットが稼働することができます! 脳の欠損が無ければ怪人の治療にも使えそうです」
「よしよし、ようやく一般的に大企業と言われるレベルまで科学技術を上げることに成功したか……。この調子で小型核融合炉を量産し、今度はレグレスの子供達に核融合炉を内蔵させて怪人化させられるようにするぞ」
「「「はい!」」」
日本内戦開始から約1年が経過し、死者数は2000万人を突破し、日本人口の約10%が亡くなっていた。
俺は悪徳先生にブラックカンパニー側で先生達を受け入れる準備が出来たと報告し、救出作戦を実行。
悪徳先生から送られてきた座標に怪人を次々に送り込み、家財や財産を回収しながら怪人達が持ってきたワープベルトで次々に樺太に逃走を始めた。
政治家の先生方、その秘書等の関係者、そしてその親族もとなると1万人近くの人物の脱出になったが、1夜にして実行し、それぞれの居住施設に案内を行った。
「ふむ……流石に前の家よりは狭くなるか」
「一応一通り生活出来る様に揃えましたが……」
「いやいや、十分だ。食材や日用品が買える場所はあるのかね?」
「はい、用意してあります」
「流石だK君」
「ありがとうございます」
脱出した悪徳先生達は直ぐに会議を開き、樺太新政府設立の準備を始め、ブラックカンパニーのダミー企業を幾つか作り出し、あたかも樺太に沢山企業があるように見せかけた。
そして数日後には樺太臨時政府樹立を宣言し、国家宣言を全世界に発信した。
まぁ世界敵に発信冷ややかな目で見られたが、時間をかけて国家承認されれば良いと割り切り、ロシアに攻められないような軍隊を作ることを求められた。
ブラックカンパニーとしては直ぐに戦闘員の一部を軍人として発表し、ブラックカンパニーから出向という形で樺太軍を創設させ、ロシア軍から鹵獲した戦車やヘリコプターを修理したり、新しく製造したりして、ハリボテながら小国の軍に見える程度には拡充させていった。
そして悪徳先生が臨時政府を樺太共和国に改名し、大統領には悪徳先生が就任する流れとなった。
この間僅か1ヶ月である。
「K君、日本に売り込める食料はいかほどあるかな?」
「そうですね……とりあえずで25万人が1ヶ月食べられる量の食事は」
「燃料の方はどうかな?」
「多少質は悪いですがガソリン相当の液化石炭は日本の軍が必要としている量の50%程度は供給できます」
「上々……輸出出来るって見せるのが大きい。外務大臣、日本政府に連絡を取り、樺太共和国は食料と燃料の輸出する準備があると言ってくれ」
「は!」
「次に樺太共和国に亡命したい企業のリストアップだ。少しでも技術を吸収する」
「わかりました」
「さて、K君、ブラックカンパニーの力を存分に使わせてもらうよ」
「はい、こちらもできる限り強力します」
悪徳先生曰く、亡命を選択した政治家の先生方は相当ストレスを溜め込んでいたらしく、武装警察の目や悪の組織と繋がっていたという過去があるため配給される食料や物質の遅延は当たり前、嫌がらせも度々行われていたらしい。
そのため食料が十二分に確保出来るだけでも多くの先生方は今の日本よりは良い生活が出来ていると言われた。
「まだ政治ごっこの段階だ。日本政府を物資で釣り、そのパイプを使って他国に売り込みをかける。稼ぎはブラックカンパニー頼りが続くが許してくれよ」
「大丈夫です。問題ありません」
こうして樺太共和国が誕生するのであった。