第128話 バニーの子供達
カプセルが開き、中から12歳程度の少年と少女が2人現れる。
3人共そっくりで、茶髪の長い髪をしており、少年がややキリッとした顔立ちという違い以外は外見的違いが見受けられなかった。
3人共カプセルから出たは良いがオロオロと様子を伺っていた。
「えっと……研究所だよね……2人は何か知ってる?」
「知らない……」
「分からない……」
「困ったな……」
すると扉が開き、緑髪の白衣を着た少女……博士が現れた。
「お目覚めかなバニーの子供達……ある程度は知識を詰め込んだが私の事は分かるかい?」
「えっと……翠博士……ですよね?」
「そうだ。気軽に博士と呼んでくれたまえ」
博士に連れられて僕達はまず服を着させられた。
彼らの知識ではブラックカンパニー製の戦闘服と直ぐに気が付き、服を着始める。
戦闘服に着替えて博士について行くと、作業机が沢山ある部屋で色々な人達が働いていた。
そのまま素通りして総領室と書かれた部屋に入る。
「入るぞバニー」
「はーい」
中に入ると知識では母親と刷り込まれた女性……バニー総領がそこに立っていた。
「んん! 可愛い! 誕生おめでとう! ツバサ、ウメ、サクラ!」
少年少女達は顔を見合わせて困惑。
するとバニーが1人ずつ改めて名前を付けていく。
男の子がツバサ、女の子がウメとサクラ。
そのままバニーは3人を抱きしめて可愛い可愛いと愛情を爆発させる。
「じゃあ母子共に元気でねぇ」
と博士は言って去っていった。
「よう博士、バニーの様子はどうだった?」
「あぁKか。自身の子供に感情大爆発だ。可愛くて仕方がないらしい」
「そうか」
「誕生祝いのケーキを用意しているくらいだからな。たぶん当分出てこないぞ」
「ふーん」
「……Kは子供達に会わなくて良いのかい」
「別に、今じゃなくても家に連れてくるから会えるだろ。仕事に私情はあんまり入れなくないってのと、それをやるとホワイトやナンバーズ達に悪い」
「ふむ……私達の子供に気を使ってか」
「正妻、側室色々あるが、子供はなるべく平等にな……まぁ無理な話だが」
「いや、良いと思うぞ……その姿勢」
俺は博士と別れると、ホワイトの所へと向かった。
ホワイトは教育隊の仕事をしていた。
「ホワイト、ちょっと良いか?」
「は、はい、お父様!」
教育隊の訓練を補助している人造人間の戦闘員に任せると、ホワイトが歩み寄ってきた。
「なんでしょうか?」
「……バニーの子供がロールアウトした」
「……遂にですか」
「総領の座を目指すんだろ? 強力なライバルが出現した訳だがどうするつもりだ?」
「素質を見極め無ければなりません。私をも扱いうる素質なら素直に工作は辞めましょう。でも足りないと思った時は……私は私のやるべきことをやるのみです」
「ふーん……期待してるからな」
「はい!」
「どどど、どうしようウメ! サクラ」
「私だって困惑してるわよ。いや、バニー総領がお母さんってのは分かるわよ。ただ社員も居るんだからいきなりの特別扱いは……」
僕達3人はいち早く怪人に成れるように特別メニューで訓練を行うと言われ、テレキさんという怪人に訓練を受けていた。
総領の子供ということで特別扱い……良い面もあるが悪い面もある。
それは他の戦闘員達から羨ましいという視線が常に突き刺さる点である。
知識はあれど、僕らの性格は小心者であり、お母さんのウサギの怪人の特性……群れて無いと落ち着かないというのが恐らく遺伝しているし、ボス気質では無い。
それを長男だから組織を継いで欲しい、成長したら即座に私は引退するからと産まれて間もない段階で言わないで欲しい。
とてもではないが僕にこんな巨大な組織の上に立つ自信は全くない。
ウメやサクラにもそんな気持ちは一切無く、サクラに至っては普通の戦闘員が羨ましく見えると愚痴を言っていた。
「Kさんは平等に接してくれるから凄い落ち着くけど……」
自身の父親も組織の大幹部……しかも戦闘能力は組織1番という偉大過ぎる存在なので、それの子供として見られるのかと思うと胃がキリキリして仕方がない。
偉大過ぎて父さんと呼ぶのも憚られる。
そのためKさんと僕らは呼んでいた。
「バニー総領も自分が総領の器でないとわかっているならそれに担う人物を組織から引き上げれば良いのに……」
「ブラックカンパニーの根幹人材が育つまで待ってたんじゃない? 色々な組織が吸収合併しましたし……」
「それならブラックカンパニーの幹部の怪人さんでいいじゃん。私達が産まれる前から期待されても困るよ……」
悲しいかなそんなに僕らに期待されても困る。
「どうにか僕ら以外に総領の座を渡せる様な人物を見つける事がたぶん組織にとって一番良いでしょう……そんな人物が居れば接触したい」
奇しくも僕らは知ることになる。
ブラックカンパニーの直轄の人材で、血統的にも問題無く、既に動いている……ホワイトだけでなく、カプセルの中でこれまたKの血を引く子供が天賦の才を持ちながら産まれようとしているのであった。