第125話 人造人間稼働
緑色の液体が徐々に水位が下がっていき、カプセルに浮かんでいた少年が床に横たわる。
するとカプセルが開くと同時に意識が覚醒し、カプセルの前に並べられている戦闘服を着用していく。
次々に起き上がっていく人造人間達は戦闘服を着替えると、入り口付近に隊列を組んで並び、扉が開くと同じ歩幅、同じ速度で行軍を開始する。
案内役のロボットの指示で研究所から移動していき、それぞれの職場に移動していく。
少年少女達は徐々に意識を覚醒させていき、職場に到着すると案内に従って作業を開始する。
必要な知識は既に刷り込まれているので、あとは身体を動かすだけである。
滞っていた製造部門が人造人間達が働くことで稼働を始め、漁船にも戦闘員達が乗り込み、怪人達の指示でハウニブが離陸し、漁業を開始。
そして一部の素養があるとされた戦闘員達は怪人適性率を上げるためにトレーニングに励むのだった。
「博士、レグレス、どうだ? 人造人間の様子は」
人造人間稼働開始から1週間、稼働状況をデータで管理していた博士と現場で見ていたレグレスを俺……Kが確認をする。
「普通の戦闘員より使い勝手は良いわよ。言われたことをやるってより、ちゃんと考えて作業しているし」
「データ面でも時々エラーを起こしている子が出ては居るけど、2から3日の再教育で修正出来ているからねぇ……まぁそれでも再び問題行動を起こすようなら人格抜いて人造人間製造工場送りになるだろうけど」
「エラー品を送り込んで大丈夫なのかよ」
「怪人適性率は高いし、エラーの原因は刷り込み教育の機材を突貫で作った事が原因だと思われるし……繁殖には問題ないと思われるよ」
「なら良いが……」
「今のところ毎日250人から500人ロールアウトされているけど、大きな問題は特にない感じか?」
「とりあえずそうね。ただ知識はあっても個体差によって人格が色々あり、合う人合わない人出てくるだろうからそれの調整をどうするべきか……という点や通常の戦闘員に比べて知識だけ詰め込まれた頭でっかちなタイプが多いから、いかに経験を積ませるかが今後の課題じゃないかしら?」
レグレスの意見はもっともである。
「だいだい怪人適性率が30%前後の個体が多いから、一部の個体は再び繁殖所送りにして適性率が更に上がった子供が生まれるかの検証を進めていくよ」
博士もそう言いこの場は解散となるのだった。
「大漁! 大漁!」
漁船型ハウニブの船長を任されたクリネは上機嫌で作業をしていた。
ハウニブに搭載されたAIが気候や海中の水温によってある程度の飛行ルートを決定してくれるので、漁をするポイントに移動したら、魚群探知機を海中に投下して得たデータに沿ってトラクタービームの操作をしていくだけ。
それも半自動でやってくれるので船長の仕事はだいぶ暇である。
そして人造人間の人選もある程度選ぶ権限を持っているので、気に入った戦闘員をピックアップして船長室で暇な時間は備え付けのベッドでイチャイチャすることも許されている。
「船長さん! 子供出来たら産んでいいですか!」
「そしたら僕の家に住んで住み込みで働いて貰おうかな〜」
「嬉しいです!」
そんな事を言わせながら、加工作業を行う戦闘員達を監視カメラで確認する。
トラクタービームで回収された魚の絞め作業をを行っており、瞬間冷却したり、電磁パルスで寄生虫を殺菌したり、ナイフや棒を使って血抜きをしたりしている。
「簡単な作業に従業員の監視だけで月収が2倍強の約1万5000ドル! しかも可愛い女の子や男の子と遊ぶ事も出来るし……なんて素晴らしい環境!」
一応ノルマはあるものの、よほどの不漁で無ければ達成出来るし、ハウニブ1機で大型漁船5隻分の水揚げが行われていた。
「サケ、マス、タラ、ニシンにカニ、タコやイカもだけど毎日大漁だ! ロシアや日本が力を失ってベーリング海で漁業を行う船が少ないから個体数が増加したのかな? さて帰港準備っと!」
機内アナウンスで帰港するために今行っている作業を30分までに終わらせて座席に座り、高速飛行モードに入る準備をするように伝える。
「お! ラッキー」
ちょうど船の下にクジラが泳いでいたため、トラクタービームでクジラを捕鯨すると、空中に浮いた状態にしてクジラを港に持ち帰ることにした。
「じゃあ君もシャワー浴びて座席に戻ってね」
「はーい」
船長室を軽く整えて、操縦席に座り、移動開始の準備を整えると、一気に機体が高速で移動を開始した。
ちなみにであるが1回漁に出ると1週間程度は船内で生活することになり、カプセルホテルの様な個室で普通の船員は生活することになる。
ハウニブは3層構造になっているので下段の魚等を保管しておく冷凍室、中段の作業を行う作業室、上段の船員の生活空間があるスペースに分かれている。
ちなみに船長室は中段に存在し、他の部屋より広い空間になっているし、専用のシャワートイレが設置されていたりと優遇されている。
食事をする時は作業室を通って3階に上がらないと行けないが……。
「よいしょっと……まさか会社が潰れて路頭に迷っていたC級怪人の僕が今ではA級相当の怪人に成れたし、こんな役得満載で楽な仕事に就けるなんて」
高速飛行が開始され、初速を上げるときに圧迫感を感じるが、慣性が働き始めれば飛行中も楽にすることが出来る。
昔乗ったことのある飛行機よりも低空を飛んでいるので気圧の変化による耳鳴りとかも無く、楽にすることが出来る。
クリネは操縦席に座り、鼻歌を歌い、読書を始めるのであった。
「クリネ船長とヤッてたんだろ……良いなあサボれて」
「俺達魚の血でベトベトなのによ〜」
「ならあんた達も気に入られる努力をしなさいよ。クリネ船長は両性具有なんだから男子でもチャンスあるじゃない! それにこの仕事だと給料が高いし、怪人になるための適性率上げに参加出来る優先度も高くなるんだから頑張りましょ」
座席に座りながら船員達はそう話す。
事実ブラックカンパニーの一般社員がだいたい1ヶ月1500ドルの給料に対して、ハウニブでの作業員は5000ドルの給料を貰うことが出来る。
それに2週間働けば2週間は休みになり、休みの間に怪人適性率を上げるトレーニングに時間を充てる事ができ、普通より怪人になりやすい出世ルートである。
それに船長に気に入られられれば愛人として社宅ではなく、広い怪人宅にて住むこともでき、場合によっては子供を作ることも許されるのである。
しかも海鮮食べ放題のおまけつき。
「製造部門に回されれば怪人に成れるまで時間がかかるし、今怪人に向けてトレーニングしている奴らはどんな怪人になるか調整を受けた人造人間だからな。怪人になって強くなるじゃなくて兵器のパイロットみたいな扱いらしいし」
「多少辛いが、他に比べたら天国の環境だよ。あ~俺も早く怪人になってハウニブの船長になって女侍らせてぇ」
「分かる。ハウニブの量産が行われているし、先輩戦闘員が怪人になって船長になっていっても俺達はまだ船長の席がありそうだからな! 頑張らねぇと」