第115話 ブラック2との面接
レグレスが暴走したため、前日はムードもへったくれも無く、バニーに3人娘はどうだったか聞かれたが、レグレスに印象を全部持っていかれたとしか言えなかった。
そんな俺の今日の仕事は前にレグレスからリストを貰っていた別の企業でリストラされる連中の引き抜き交渉である。
アタッシュケースに米ドルを持って久しぶりに闇市場に向かった。
「ブラックカンパニーの方ですか……今店長を呼んできますね」
俺も利用することのある日本エリアの闇市場の大型スーパー。
品揃えと大量の商品が並んでいるのが売りだったが空き棚がちらほら目立っていたし、日本製品の品数が明らかに減っていた。
「こちらに」
店員の怪人に案内されて裏に回ると、ナマズの様な顔をした怪人が挨拶をしてくれた。
彼がこの店を任されている店長らしい。
席に座り、話を聞くと、リストラするのは正直本意ではないが、本部からの命令で、営業する場所が物理的に消滅したことにより、営業職かつ戦闘員の人員はリストラを断行する様にと命令が来ていたらしい。
ナマズ店長曰く、優秀な人材が多く、きっと役に立つので拾ってくださると幸いです……と頭を下げられた。
俺も元々引き取る気満々だったのでアタッシュケースを渡し、引き抜きという形にして経営の足しにしてくださいと1000万ドルを渡した。
ナマズ店長は頭を机に擦り付けてありがたがり、早速ブラック2と言われている人に会わせて欲しいと頼み、ナマズ店長が電話で呼び出しをすると、10分もせずに到着し、挨拶をしてくれた。
「ぶ、ブラック2です! ブラックカンパニーの人事の方と聞いてます! どうかよろしくお願いします!」
いきなり頭を下げられたが、雇用は約束するから安心して話を聞かせて欲しいと伝えた。
なぜブラックカンパニーを選んだかについては、レグレスや超から会社の大まかな概要を教えてもらっていたからと、給料や福利厚生面、怪人化を想定した場合会社として余力がありそうなのが知っている所だとブラックカンパニーしか無いというのが理由であった。
よく調べていると思う。
戦闘員だから調べられる情報は限られている中で伝手もフル活用して這い上がろうとする貪欲さは評価出来る。
「そちらの話を聞くばかりも悪いからブラックカンパニー側の話をしよう。ブラックカンパニーでは樺太制圧という大きな作戦が達成したばかりで今後どう動くか組織として方針が決まっていない状態でね」
「樺太で捕らえた人員を戦闘員に改造して戦闘員だけは増えて司令官が居ない状態だ。君達が前線で戦いたくないから裏方の仕事に回ったのは理解しているが、君達の能力であれば指揮官として裏を支えることも出来ると思っている」
「ブラックカンパニーで働いてくれるなら早急の怪人化も了承するが、適性を再度検査してそれに見合った仕事を割り振る事になるがそれでも良いかい?」
「はい、大丈夫です!」
「それにブラックカンパニーでは怪人に成れば結婚したりするのも他社が絡まなければ自由にしている。怪人には1軒家をプレゼントするのも約束しよう」
「そ、そんな好条件で私達みたいな非戦闘員を受け入れてくれるんですか?」
「君も言っていたじゃないか。ブラックカンパニーには他社と違って余裕がある。店長さん、なるべく生鮮食品であればブラック2君達の活躍次第では安く卸す事も出来ると思うからその時はよろしくお願いしますよ」
「ぜひともお願いします!」
「わ、私もよろしくお願いします!」
ブラック2達は数日後にまた迎えに来るからそれまでに退職の手続き等を終わらせておくように伝えるのであった。
正気に戻ったレグレスは俺に凄い勢いで謝った。
「ごめんなさい。初めてで浮かれて凄い姿を見せてしまって……恥ずかしい」
「まぁ正気に戻ったんなら大丈夫だが……子供は本当にあの数育てるのか?」
「育てる! ……と自信を持ってはいけないけど、会社に損はさせないと思う。私とおじさんの子供だったら適性率も高いだろうから、上手くいけば即戦力だと思うし」
「バニーが色々思うところもあると思うから俺はあんまり手助けすることは出来ないと思ってくれよ」
「わかってます! 私で出来る範囲はやります」
「どうしょうもなくて困ったら頼れ、それにイエローや超も心配していたから大丈夫な姿を見せてこい」
「はーい!」
うん、レグレスはこれで大丈夫だろうな。
さて俺は俺の仕事をしなければ……。
2号が培養肉の量産に成功し、培養肉を作るプラントの製造に取り掛かった。
この培養肉プラントが完成すれば、牛、豚、鶏の主な部位の肉を安価で大量に作ることが出来る。
プラント1基当たり日産約1トンの肉が手に入り、ブラックカンパニーの戦闘員の1人当たりの日間の肉の消費量が約500グラムなので、約2000人の胃袋を満たす事が出来る。
数万人の胃袋を満たすには大量にプラントを建造する必要があるが、広大な地下農園で生産される穀物や野菜類を使えば供給は可能であり、樺太の80%の面積の地下農園が完成すれば10万人想定でも必要な食料の110倍を供給することが可能になる。
これだけの食料が売れればそれだけで莫大な資金を確保することができ、樺太単体で独立国家として稼働することが可能になる。
「まだ最終計画の1%にも満たないが、最終的には樺太の地下を広大な食糧庫に変えてみせるぞ!」
やる気に満ち溢れる2号であった。