第113話 バニーおめでた
「おぇ!」
「大丈夫かバニー」
「うん、何か急に吐き気が」
「休むか?」
「いや、大丈夫……一応3号に風邪薬貰ってから出勤するわ」
ある日、バニーが体調を悪そうにしていたので、俺が大丈夫か聞くと、大丈夫と返された。
一緒に寝ていたベッドのシーツと毛布、布団カバー、枕カバーを回収してランドリーのドラム式洗濯機が2台あるので、別々にぶち込んで回す。
そのまま敷布団を水洗出来る掃除機で汚れを洗っていき、布団乾燥機を出してきて接地し、起動させる。
ブォォォンと音を立てて敷布団を乾燥機させていく。
『おはようございます!』
「あぁ、おはよう」
掃除ロボットに挨拶をして、俺は洗面台に行き、顔を洗い、歯を磨く。
バニーが先にシャワーを浴びているので、俺はその間にバニーと俺が着る服のアイロンがけをしてハンガーに掛けておく。
そうこうしているとバニーがシャワーを浴び終わるので俺もシャワーを浴びて、着替えてから朝食を食べに食堂に移動する。
幹部レーンに並び、食事を受け取って朝食を食べる。
朝食を食べ終わると、バニーは医務室に向かい、俺は事務所に向かい、朝礼前に今日の作業の確認、報告事項の確認をして軽く書類に目を通しておくのであった。
「あ~」
「はい、お腹を出して」
「はい」
私は3号に診てもらう。
たぶん風邪だと思うが吐いている以上見てもらわないといけない。
「うーん、バニーさん、Kと性行為どれぐらいしてる?」
「ん? 調子が悪くなければほぼ毎日だけど……」
「うーん、もしかしたら妊娠してるかもしれないから妊娠検査していい?」
「え? 本当!」
「まだ仮定ね。はい、妊娠検査キット。尿をかけてみてね」
「うん! ちょっとトイレ行ってくるわ!」
トイレに駆け込んだ私は検査キットに尿をかけて少し待つ。
すると検査キットに棒線が現れて妊娠していることが確定した。
「おお! 妊娠してる! Kとの子供!」
私は直ぐにKに電話しようとしたが、ふと行動が早計過ぎると言われた事が頭によぎり、番号を打つ手を止める。
深呼吸をして落ち着き、もう一度3号の診療所に入る。
「どうでしたか?」
「陽性だったので妊娠してたわ」
「おめでとうございます」
「ありがとう……3号、妊娠のことってKだけじゃなくて博士にも相談した方が良いかな」
「そうですね。組織に関わることなので博士に聞いた方が良いと思います。それに怪人なので普通の人と子供の成長速度も違うのでどう対応していくかも一度博士と話し合った方が良いですよ」
「……ありがとう」
「あまりに気分が悪いようなら薬出しますが」
「ううん、大丈夫。とりあえずKにこの事を話してくるわね」
「お大事に〜」
私は事務所に居るKの所に向かった。
「K、私妊娠したわ」
「は……え? お、おめでとう」
「貴方との子供よ!」
「お、おう! そうか!」
「もっとこう無いの?」
「いや、いきなりだったから喜びよりも驚きが勝ってしまって……いや! この時は……よくやったバニー」
「うん!」
私はKに落ち着いて報告すると博士にも報告する。
博士からは
「そりゃ毎日盛んに励んでいればできるわな……おめでとう」
お腹で育てるのか、それとも今はまだ小さい胎児をカプセルに移して試験管ベイビーにするのかどうするのかKと話し合って決めろと言われた。
とりあえず朝礼の時間になったので朝礼を行い、Kと博士を呼んで総領室で話し合いを行う。
「バニーはどうしたいんだ? お腹で育てたいのか、出産のリスクを危惧して体外で育てるか……」
「私的にはお腹で育てたいけど……ブラックカンパニーのことを考えると産休で離脱している訳にはいかないから……現実を見て体外で育てることにするわ」
「じゃあ博士、バニーと俺の子供を頼んでも良いか?」
「あぁ、任せ給え……で子供だけどどうする? 15歳相当にまで成長させても良いか?」
「子育てに時間もかけられないか……私的にはもう少し小さい子を育てたいけど……」
「博士、12歳相当には出来るか?」
「勿論出来るぞ」
「イエローでも12歳相当なら自我もしっかりしているし、共に住む分にも困らないだろ。バニーも12歳相当で良いか?」
「うん、いいわ」
「じゃあバニー、検査と赤ちゃんの摘出をするから来てくれ」
博士にそう言われて、私は研究所に移動するのであった。
ベッドに寝かせられて部分麻酔をして、博士が下半身を機材を使ってカチャカチャすると小さな赤ちゃんが摘出され、すぐさまカプセルに入れられ、機械に通された。
「ふう、まずは1人目」
「一人目? 何人か赤ちゃん居るの?」
「あと2人お腹の中に居るよ。兎の怪人だから多産に体質が変わっているのかもしれないねぇ」
博士はあっという間に残りの赤ちゃんも摘出すると、カプセルに入れられて、機械で検査をしている。
カプセルの大きさは太いズッキーニくらいと言えば良いか……。
そんなカプセルの中に赤ちゃんがぷかぷか浮かんでいた。
今の姿はまだ人間らしい形とは程遠いが……。
「麻酔が切れたら少し違和感と股からの出血があると思うから生理用品を付けておくぞ」
「助かるわ……この子達はどれぐらいで成長するの?」
「だいたい2ヶ月半といったところか……初期の人造人間のロールアウトと同じくらいの時期になるだろうな」
「博士、この子達は怪人適性は高い?」
「うん、高いぞ。60%を超えている」
「……ホワイトは100%を超えていたわよね」
「あれは母体も良かった。S級相当のヒーローとC級の怪人じゃ前者の方が適性率は高くなるさ……まぁ私との子供のナンバーズは適性率50%だったし、それよりは高いから安心したまえよ」
「そう……あぁ駄目だ。どうしてもホワイトや博士のナンバーズと我が子を比べてしまう。気をつけないと毒親って言われる存在になってしまう」
「多少は仕方がないんじゃないか? 割り切りは必要だと思うがな」
「……気をつけるよ」
私はベッドの上でそう呟くのであった。
「Kさん〜バニーさんが赤ちゃん産んだって本当っすか」
「どこからか聞きつけてきたんだ超」
「3号が言っていたっすよ。バニーさんが赤ちゃん授かったって……それで博士とバニーさんが研究所に入って行ったから赤ちゃんを今頃産んでいるんじゃないかと思って」
「たぶん産んでいると思うがそれがどうした?」
「ふふーん、実はバニーさんと僕やイエロー、レグは密約があって……バニーさんが子供を産んだら僕達をKさんの側室にしても良いって言質取ってるんっすよね〜」
「はぁ!? そんなの聞いてねぇぞ」
「ブラックカンパニーとしても強力な戦力は欲しいっすよね! それに僕達はKさんに雌として抱かれたいって思っているんすよ!」
「ちょ、ちょっと待て、バニーに後で確認するから」
「ふふーん、わかったっす。でも今夜僕達Kさんとバニーさんの家にお邪魔するっすからね」
そう言い残して超は仕事に戻っていったのだった。
俺は頭を抱えてしまった。