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第110話 ヒーロー側のバグ

 激動の4月を終え、5月になると天候も安定し、気温も上昇。


 氷漬けにされていた駆逐艦や潜水艦なども急ピッチで作られた地下ドックにて解体が進められた。


 解体することで技術の習得とハウニブ製造の為の鉄資源の確保が目的である。


「駆逐艦も潜水艦も博士のレポートを見るに四半世紀前の旧式艦っすか」


 僕こと超は資料を見ながら1号の説明を聞く。


「はい、ただ旧式ので機能を詰め込むために巡洋艦並の大きさになり、おかげで解体後の資源は豊富そうですがね」


「1隻でハウニブどれぐらい作れるの?」


「……じゃあハウニブの製造ドックに向かいますか」


 1号に連れて行かれて、地下ドックのハウニブ製造ドックに到着した。


 無数のアームが火花を散らし、大型の円盤がデンと並んでいた。


「形状は完全にどら焼きだね」


「あぁ、何かに似ていると思ったら確かにっす!」


 どら焼きと称したのは上下の反重力安定装着を兼ねた装甲が上下のフレームを形成し、中の作業ブロックや操縦室は直径60メートル、高さ10メートルの円柱がどら焼きを包み込む様に中に組み込まれていた。


 ちなみにハウニブの直径は80メートルで高さは20メートルにもなる。


 脚の無いビ◯ザムをもう1回りデカくしたというのが近いかもしれない。


 それが建造ドックでは4機並列で作られていた。


「物を選択して引き寄せるトラクタービームにより海中の魚介類の種類を選択して回収することができます。例えば蟹と選択すればハウニブが通った箇所の海底に潜む蟹を根こそぎ回収できます」


 ハウニブの良い所は波や風の影響を受けない室内で作業できるところである。


 最高時速マッハ1が出せる為に、強風が吹き荒れていても空中静止が可能。


 トラクタービーム使用中は回収するため時速20キロ以下に制限される。


「反重力のおかげで積載量も結構余裕がある。積載量は500トン、瞬間冷凍設備や寄生虫を高電圧で殺すパルス殺虫装着、魚群探知機も搭載する予定でね。普通の蟹漁船が数百キロから1トン程度が1日の漁獲量だが、こいつを使えば1日20トンは固いだろう。マグロとかの大型の魚なら魚群を捕まえることが出来れば1日で数十トン捕まえる事も可能だろう」


 なんとも夢のある話である。


 言い換えればハウニブは数百トンもの爆弾を搭載することが出来るということである。


「ドイツの爆撃タイプはもっと小さいが、それでも数十トンの爆装をしていたからね……その気になれば強力な平気になるよ」


「ブラックカンパニーとして運用する時はどうするっすか?」


「人員を乗せて空から奇襲とか? トラクタービームは逆に人をゆっくり落下させる事も出来るからね。100人くらいは輸送も出来るし」


「そんなのがマッハ1で飛んでいくって超兵器っすね」


「あぁ超兵器だが移動基地としてこれ以上無いほど充実してるんだよね。今漁船バージョンだから冷却後に鮮度を保つための液体が入った水槽がある区画を倉庫に転用すれば軍用車が30台は入る。ワープで効かない場所を奇襲するのにちょうど良いよね」


「なるほどっすねー」


 僕は1号が説明するこのハウニブという超兵器を漁船として活用するブラックカンパニーの運用方法に思いをはせる。


(今は戦闘員が急速に増えてきている。それを考えると食料の供給は自前で握っておきたいのは分かるっす。闇市場で同じ学校出身だったブラック2に聞いて情報を仕入れたっすが、表の食料を供給していた会社は内戦で大ダメージを受けて、自社製品を守るので精一杯。闇市場の日本市場も大ダメージを受けて質と量が低下しているっすから安定した食料が輸出出来るならそれは大きな武器になるっす)


(養殖技術を持っていたグレーサーモン社は内戦に巻き込まれて施設も人員も壊滅したって聞いていたっすからなぁ……知ってる人がどんどん死んでいく裏社会とは言え……)


 僕はブラックカンパニーに就職できて本当に運が良かったと思う。


 僕と学校で同期だった連中はネオジャパン系列の会社に就職できた一部を除いて内戦に巻き込まれるか、基盤の薄い海外に逃亡する羽目になったのだから。


(今の幸運を維持できるように勉強をしないといけないっすね!)


 僕は1号にハウニブの運用方法等を聞いていくのだった。












「イエロー、初期ロットの戦闘員達はどうだ?」


「はい、Kさん。私とセブンが作った新兵育成マニュアルが効きました。私はセブンほど教育が上手じゃないですが、10日程度で人格の安定した定着ができています。セブンは1週間で人格が定着できているので流石としか言いようがないですけど」


 俺はイエローに戦闘員の教育が上手く言っているかと聞くとそう答えが返ってきた。


 更に詳しく聞くとやはりマニュアルがあっても教育に慣れてない怪人や戦闘員が多く、2週間で人格が定着すると見通しであったが3週間かかった人も居た。


 初期ロットの新しい戦闘員も人格が定着後に適性がある者は教育の補助に回し、そうでない者は農場や石炭、石油採掘所の管理に回す。


 ほぼロボットが制御しているが、どうしても人の手が必要な場所が幾つかあるのでそこに新人達を送り込んでいる。


 製造業の方はまだまだ技術習得段階。


 一応初期量産を少し行っていたが、安かろう悪かろうという状態なので先進国では一切通用せず、Kの伝手でアフリカや南米で多少売れた程度であり、一度製品の品質を上げるための時間が必要であった。


 製造ラインの機材を買っても材質が違ったり細かなところでエラーが出まくっていたのである。


 改善するには人造人間の量産が完了してからになりそうである。


 作られる人造人間達は博士の一部知識と俺の戦闘データが入っているらしい。


 なので最低限の行動は出来るのだとか。


「イエロー、教育は最初は多少遅れても良い、使える人材を増やしていくことが重要だ」


「はい! ……そう言えばなんだかんだで2年経過しましたね。私が入社してから」


「早かったな。あんなに幼かったイエローが、今では幹部だからな」


「激動の2年でしたね……幹部として上手くやれてますか?」


「まぁまぁじゃないか?」


「むう!」


「はは、悪かった冗談だ。上手くやっているよ」


「ちなみにですけど戦力を整えたら本当に日本に侵攻するんですか?」


「さぁな……俺達が着実に戦力を充実させているように日本政府も尻に火が付いた状態だ。軍官民が勝つ為に全力を出している……こちらの準備が整ったら日本は凄いことになっているかもしれないな」











 日本のとある場所にて1人の人造ヒーローが誕生する。


 その人造ヒーローには他のヒーローと違い、能力らしい能力は備わっていなかった。


 管理者達はその人造ヒーローは失敗作としてろくな訓練をさせずに前線に投入する。


 捨て駒としての投入であったが、その人造ヒーローは生き残った。


 怪人の頭を引きちぎって帰還する。


 それからその人造ヒーローは度々出陣するが、その度に生き残り、徐々に頭角を現していく。


 捨て駒だと思われ名前も与えられていなかった彼はヒーロー協会からキルという名前が与えられた。


 怪人の多くを倒すKillをそのまま付けた安直な名前であった。


 しかし、キルは急速な成長曲線を描く事になる。


 悪の組織でKというバグが誕生したように、ヒーローでもバグが産まれた瞬間であった。

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