第107話 大作戦を終えて
基地に戻った俺達は被害状況の確認をまず行った。
「怪人に被害はありません」
「戦闘員は基地突入の際に10名ほどが殉職しましたが、全員液体の回収出来てます」
液体の回収ができていれば復活させられる見込みはある。
被害は軽微……いや、ほぼ無しと言っても良い。
作戦が良かったというよりは、俺が想定していたよりブラックカンパニー側の戦力が大きくなっていたというのと、電磁パルス爆弾による攻撃が効いた。
停電や無線が使える状況であれば、また違った戦いになっただろう。
「お疲れ様でした! 今日はゆっくり休んでくれ。明日は祝勝パーティーだ。仕事は明後日から行う」
俺がそう言うと社員達は喜び、皆休むために自分の部屋に戻ったり、大浴場に移動したり、食事をとるために食堂に向かった。
「さてと」
俺はバニーと博士の所に行き、2人を叱るのだった。
「なんであんな早計過ぎることしたのバニー……核の使用なんかしたら過剰反応するでしょ」
「いや、だってロシア軍が核を使うって無線を傍受したから……」
「シックスの力を使ってジャックして作戦中起動出来なくしておけば良かったじゃん。いやまぁ俺もバニーの行動を読んで指示しておくんだったんだけどさ……博士何か弁明は?」
「バニーの行動を止める前に指示出されたよ……まぁでも私的には核の使用は間違いじゃないと思うんだけどね」
「ほう?」
「シックスの能力であれば外部ハッキングしたのはバレないじゃないか、それに核ミサイルが自爆したように見せれば樺太への目は誤魔化せる。ロシア極東軍の本部が壊滅したんだ。この混乱は数ヶ月は続くだろうねぇ……その間にブラックカンパニーは力を蓄えることが出来る」
「力を蓄えてどうする? 大陸進出でもするのか?」
「まさか、ここはブラックカンパニーを一気に日本有数の企業まで昇華させるよ。人員は得られた。これをいかに会社の力に出来るかどうかだねぇ」
「……まぁ博士なりに考えがあって止めなかったのはわかった。でもバニー……ブラックカンパニーの総領なんだろう。早計な行動は全滅にも繋がるから気をつけろ」
「はい……」
「たく、バニーがしっかりしてくれないと、俺も前線で動けなくなるんだぞ……その方がブラックカンパニーとしては損失だろ」
「私的にはKも安全なところで指揮してほしいけど……」
「ヤダ。現場の方が動きやすいし、俺は現場に出るから求心力があるタイプなの。俺の求心力が無くなったら今のブラックカンパニー空中分解するぞ」
博士もそれには同意する。
「本当にそれだねぇ……バニー、君が思っている以上に会社がKの指示で動くようになっている……というかバニーが飾りになっているから気をつけた方が良いよ」
「それって……Kの権限を抑えた方がいいってこと?」
「なんでそうなる……自分の求心力を上げるか、神輿として割り切るか」
「皇帝の様に振る舞うか、象徴として振る舞うか……どっちかだねぇ」
「……ねえKにもっと負担かけていい? 私はブラックカンパニーの総領に向いてないならKの奥さんに徹したいんだけど」
「あぁ~本音はそれか……わかった。それを前提として動くぞ。俺の権限強くしていって、最終的に飾りになってもらうが良いな……あと次代の総領の決定権は俺にくれ。バニーとの子供が総領の器が無かったら俺の血縁で決めるから」
「それって博士の子供にもチャンスがあるってこと?」
「ホワイトもだ。正直俺的に総領の才能あると思うのホワイトだぞ……実力、人気共にあるし、成長力も魅力だ。ナンバーズに補佐させれば十二分に会社を引っ張る事が出来るだろう」
「……ちょっとそれは考えさせて」
「ダメ。バニーは飾りの道を選んだんだ。一度言ったからには飲み込んでくれ。それにバニーとの子供が優秀ならそれで良いんだ」
「……わかった」
まぁお仕置きとして12時間ベッドでバニーと博士はイカせまくるのだった。
祝勝会? 慰労会? が行われ、皆食堂で飲めや歌えた大宴会。
この日ばかりは無礼講と戦闘員や怪人達が飲んで食べて歌って踊って……。
ちなみにバニーと博士はイカせまくったせいで腰がガクガクになり、この宴会を椅子に座って大人しくちびちび酒を飲むにとどまっていた。
俺もどんちゃん騒ぎしたいが、一応立場があるので微笑ましそうに見ているに留まった。
こういう場は3人娘ことイエロー、レグレス、超が得意の様で、どこからか持ってきたカラオケ採点機でカラオケ大会を仕切っていた。
「いい光景ね」
俺の横にオママが座る。
「オママはこれからが大変になるぞ」
「ええ、数万人の人格排出作業があるからね。でも博士ちゃんが言っていたけど、私の方法とブラックカンパニーのやり方をミックスした方法をすると言っていたわよ」
「ん? どうする気なんだ?」
「さぁ? でも人格排出すると擬似人格の定着までロボットみたいな動きしかできないからそれの対応じゃないかしら」
「ふーん」
俺はコーヒー牛乳をコップによそいで飲んでいく。
「何お酒じゃないの?」
「そんな気分じゃないの……ちょっとシラフでいたい」
「そう……」
オママは普通に日本酒の入った一升瓶を横に起き、ラッパ飲みを始める。
「かぁ~! 効くわ!」
「仕事の事を考えたく無くても仕事の事を考えちゃうよ」
「職業病ね。嬢で抜く?」
「バニーと博士で間に合ってるよ……というより昨日散々抜いてきた」
「あらそう……ブラックカンパニーこれから大きくなるわよ……人員という意味でも、企業としての多様性の面でも」
「さて、どうするかな〜」
俺は背もたれに身体を預ける。
「日本全体を巻き込んだ内戦を俺達は回避して力を蓄える時間ができた……日本内戦が始まって半年過ぎたが、ジワジワ政府側が押し返しているが、予断を許さない。日本を制圧するには今までと違う方法を取らねぇといけねぇ」
「そうね……海外の力を利用するのが一番良いんじゃないかしら」
「ロシアと日本……それにアメリカ大陸に近いというのを活用していく必要があるな」
「今、ロシア混乱しているんでしょ。浸透してしまったら?」
「いや、それは他の企業に任せる。浸透しようとしている企業をサポートするに留めたい」
よっこいしょっとと立ち上がって伸びる。
「さて、忙しくなるでしょうね!」
俺は空になったグラスを持って、席を立つのだった。