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第1話 戦闘員K

『でたな怪人ダークシャドウ! 正義の味方として絶対に倒す!』


『ゲハハハ! サンライズ! 貴様を命日としてやるわ!』


「いっけー! サンライズ! 悪い怪人をやっつけちゃえ!」


「頑張れーサンライズ!」


 子供達が家電量販店の店頭テレビに映し出される怪人とヒーローの戦闘を応援していた。


 俺はそのテレビを横目でチラリと見ながら、何でこうなっちゃったかなぁと頭を悩ませた。







 俺の名前は加藤海斗かとう かいと……就職氷河期と言われるこの時代、良い大学を卒業しても就職先があるか分からないのに、俺は大学受験に失敗し、浪人か3月の今から就職先を探すという絶望的な2択を迫られていた。


 トボトボと町を歩いているとお姉さんがチラシを配っており、働き始めても飛び込み営業とかノルマがキツイんだろうなぁと思いながらお姉さんからチラシを受け取った。


 そのチラシには非正規社員募集というのがデカデカと書かれており、非正規の割には給料とか社宅完備と書かれているが、肉体労働とか汚れ仕事がありますと書かれていた。


 妙に業務内容が隠されている気もするが、派遣社員みたいなのを考えれば業務内容が変わる為ここに書いてない事も多いのだろうと思い、このご時世まともな職業はこの時期の募集は締め切りを終えていると思い、俺はこの怪しい会社にまだ募集していますか? と連絡を入れてみるのであった。








 厳ついおっさんが面接官で色々聞かれたが、採用と言われ、無事にブラックカンパニーという会社に就職することができたのだが、俺の他に20名が採用されて、黒のピチピチスーツを着せられた。


「あ、あの……どんな業務をさせられるんでしょうか?」


 教育係の先輩からどんな業務をするのか分からない俺達新人は言われるがまま着替えたが、何をするか分からないので聞いてみた。


「あぁ、今日は業務提携……いや、同盟を結んでいるペココさんのところがとある会社を襲撃するからその手伝い。ペココさんも下っ端戦闘員が足りないんだとさ」


「へ? 戦闘員?」


「お前ガイダンスよく聞いてなかっただろ……お前達は下っ端戦闘員。ヒーローによく殺られているモブの戦闘員だ。うちの会社は小さいから怪人化させる素材が足りなくて、主として襲撃計画が立てられないから戦闘員を派遣して稼いでいるんだよ」


「ええ!?」


「ちなみにもう逃げられないぞ。社宅で眠っている間に胸に薬が埋め込まれているからな。逃亡しようとしたり、誰かにチクったり、ヒーロー達に捕まったりしたら薬が起動して、お前達の体を液体に変えるから……まぁそのボディスーツ、弾丸も弾くし、攻撃力も上がってるから頑張れば生き残って怪人にさせてもらえるからそれまで頑張れや」


(そんな無茶苦茶な!)


 俺はそう叫びそうになるのを必死に堪えて、スーツに着替え、ワープ装置といういかにも怪しそうな装置に乗せられると、一瞬で風景が変わった。


「よく来たブラックカンパニーの戦闘員諸君! 吾輩はペココ総帥だ!」


「あ、ブラックカンパニーの戦闘員Aです。こちら名刺で」


「これはこれはご丁寧にどうも」


 いかにも悪そうな人とピチピチ黒スーツの男がペコペコ名刺交換するのを見て滑稽に思ってしまったのは俺だけじゃ無かったようで、横の奴が吹き出して笑ってしまった。


「おい、テメェ何わらってるんだ?」


 さっきまで優しそうだった先輩戦闘員が近づくと、思いっきり笑った奴をぶん殴った。


 地面を3回バウンドしながら顔面から着地。


 すっげぇ痛そう……というか普通に死ぬだろうあれ……。


「す、すみません」


「とっとと列に戻れクズが」


 すっげぇパワハラ……めっちゃこぇぇところに来てしまったらしい。


 その後ペココ総帥が今回の会社襲撃の計画を説明する。


 その会社はヒーローに資金提供している会社で、ヒーロー達の資金源を潰しつつ、悪人側は職員を誘拐して戦闘員に改造したり、売り飛ばして資金にしてしまおうと普通に悪い計画だった。


 さっき他の奴をぶん殴っていた先輩戦闘員が


「金や技術力のある所は良いよなぁ……戦闘員確保も洗脳でチョチョイのちょいだから……こちとらアルバイトを雇って何とか数合わせしているのによぉ」


 とボソボソ喋っている。


 確かに学校に悪の組織が侵入してきたとかあったけども人攫いで悪の組織が稼いでいるとは思わなかった。


 作戦決行となり、俺達は支給された捕獲銃を持って再びワープし、会社に突入していくのであった。










「キャー怪人よ!」


 会社の人達が逃げ惑う中、雇い主から派遣されている魚の怪人が暴れている間に捕獲銃の光線を逃げ惑う人に当てると銃の中に取り込まれる。


「とりあえず2人捕獲したから仕事はしただろ」


 やっていることが悪いことであるのはわかっているが、やってるフリだけして逃がそうとした奴が先輩戦闘員に粛清されているのを見ると、最低限の仕事はしないといけないと思ってしまう。


「はぁ……どうしてこうなってしまった……俺の人生……」


 するとドアからヒーローが登場。


 魚の怪人が俺達にヒーローの迎撃を命令し、戦闘員である俺達は突っ込んでいく。


 キックされた他の戦闘員がヒーローのパンチで体に穴を開けられて液体になるのを見て、こりゃまともにやっていたら死ぬと思い、ヒーローに向かって捕獲銃を発射する。


 しかしヒーローは捕獲銃の光線に当たっても捕まえることができず、逆に俺が気づかれてしまう。


「悪人共覚悟!」


 俺はヒーローに殴られる瞬間に周囲の光景が凄いゆっくり見え始め、走馬灯の様なものが見えた。


 思考を回転させてこの場から助かる方法を考えるが思いつかない。


 ええい、ままよとどうせやられるなら抵抗してと拳を素早く振り抜いた。


 バゴン


「え?」


 ヒーローの方が思いっきり吹き飛び会社の壁にめり込んでしまっている。


 唖然とする周囲。


 俺も唖然としていたが、慌てて撤退を魚の怪人に言うと


「よ、よしずらかるズラ!」


 と捕獲銃を持って逃げ出した。


 裏路地に隠れてテレポートしてペココ総帥の所に戻る。


「え? 大成功? マジ?」


「マジズラ! マジズラ! 15人も捕獲できたズラ!」


「よっしゃあ! これで組織を拡張出来る! いやぁ派遣の皆さんにもたっぷり謝礼をしますので期待していてくださいよ!」


 先輩戦闘員が契約満了のサインをして、俺達は最初の会社に戻る。


 更衣室でスーツを脱ぎながら胸に本当に手術の跡があるのを確認する。


「よお、戦闘員K」


「……あ、おれですか?」


「そうお前、凄かったな! パンチ1発でヒーロー沈めたの。お前怪人の才能あるよ」


「そりゃどうも……」


「ヒーローは怪人じゃないと基本は倒せないから一般人への嫌がらせに徹したりするんだが……お前がこれだけ強いなら絶対に幹部になれる! 俺が保証する!」


「は、はい」


「焼肉行こうぜ焼肉! 奢ってやるからさ」


 なんか先輩に気に入られた俺はそのまま焼肉屋に直行するのだった。








【戦闘員K! 強すぎる!】

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