だから私は許せない
“金曜ドラマシリーズ”にするつもりが“真っ黒シリーズ”になってしまいました。
どうせ腐女子だから……お見合いに贅沢は言えなかった。
仕事として『ＯＬ』から『家政婦＋繫殖犬（因みに牝犬の生涯出産回数は６回までらしい）＋パート』にシフトしたと考えればいい（今書いて文字の仰々しさに思わず吹き出してしまったが）
元々がマメな性格なので『四角な座敷を丸く掃く』なんて事はしないし、料理は食べるのも作るのも好きだ。気の利いた会話はできないがそれは相手も同じなのでイーブン、しっかりパート勤めはしているので“食っちゃ寝”生活ではないだろう。
私に問題があるとすれば……“繫殖犬”としてのお勤めだ。
それは“夜のお勤め”と言った可愛らしいレベルでは無く、義父母と実母からの『子供はまだか？？』圧が強烈で……
この業務を一層無味乾燥なものにしている。
そもそも実母なぞは、私のこれまでの生活を散々見て来たであろうに！！
そんな私が、結婚したらすぐさま子作りマシーンに変身する訳無いでしょう！！
こちらは全くの“未経験”からのスタートなんだから！！
他者との比較ができないので（つまり ※当者調べのみ）この“お勤め”の苦行の度合いが適正かどうかも知る由がなく、ただただ毎月、基礎体温表に沿って“お願い”をしていた。
笑っちゃう話だが“初めて”の時からずっと……“世で言われているところの”快楽は私には訪れておらず……
『男同士では“快楽”など有り得ないのでは？？やはりＢＬとは現世の手垢に塗れる事の無い夢の世界なのだ』と……
相手の下敷きになっている時に、痛みから気を反らす為に考えている。
それでも……本当にワンコみたく後ろから乗っかられそうになった時は必死に逃げたけれど……
考えてみればこの時の相方が一番“暴力的”だった。
普段は……よく言えば物静かな人で……こちらが何をやってあげてもほぼ反応が無く、
「不都合や嫌いなものがあったら仰ってくださいね」とお願いしても何も言ってこない。
勿論、給与は明細書通りに家計の口座に振り込まれるし、そこから拠出するお小遣いの額に不平を言う訳でもない。
ただ、競馬が趣味らしく土日は赤マルを付けた新聞を携えて朝から出掛ける。
勝っているのか負けているのかは分からない。
独身時代に貯えた預金から損失補填をしているのかもしれない。
別に家計に手を付けられている訳では無いし、相方が居ない土日は私も自分の世界に没頭できるから競馬については良しとしていた。
およそ新婚らしからぬ日々ではあったが、こんな調子で１年が過ぎ、形ばかりの結婚記念日も無事済んだある日……
午後出勤だった相方が忘れて行ったスマホがピコン！と鳴った。
てっきり忘れていった相方からのメッセだろうとスマホを覗き込んだら
『今日、行けなくなった』と言う“通知内容表示”がスーッと消えるところだった。
勿論、相方のスマホにはロックが掛かっていてメッセの本文は見る事はできない。
相方は、今日は一日テレワークで来週の月曜まで出社しない予定だった。ところが……
『発注していたサンプルが上がって来たので、急遽サンプルの検証ミーティングになった』
そう言って昼前に慌ただしく家を出てスマホを忘れていった……
テーブルの上に置かれたままのスマホ。
相方の私的なエリアには立ち入るつもりはないけれど……
何か急ぎの案件である可能性もあるし
まあ、試してみるかと
相方の生年月日を入力したらロックが解除された。
何と言うセキュリティの甘さ！！
でも我が身を振り返ると、プライベートを覗かれて困る様な“他人”は結婚するまで現れなかったわけだし、そこから鑑みると相方の行動原理も分からなくはないが……
メッセの新着をタップすると
書かれていた内容はなんと
「逢い引き」だった！！
なるほど！！
だから私に対する“お勤め”も手慣れていたんだ！！
しかし！！
相方はあんなヤツだけど……私がこの「逢い引き」の相手と比較されていたのかと思うと腹が立って来た。
いったいどんなオンナなんだろう？？！！
私は閃いて、相方に成り済ましてメッセに返信した。
『逢えない寂しさを埋める為にキミを見たい』と言う内容で……
どんな返事が返って来るのだろうか？？
私はスマホを脇に置いて、“御用達”のＢＬアニメを鑑賞していたがさすがに気が削がれてしまっていた。
小一時間程してピコン！とスマホが鳴った。
タイトルにクリップマークが付いている。
“オンナ”の写真に違いない！！
でもアニメもちょうどクライマックスに近付いて来ている。
一時停止するか、スマホを後回しにするか……
いいや！このまま！！
一瞬見て削除すればいい！！
とタップした。
「えっ？？？！！！」
タップした私は信じられないモノを見た。
そこにはいかなるオンナの裸もなく……
“あの相方”よりもずっと醜い中年？オヤジの毛むくじゃらな下腹部とデロンとした“モノ”が映っていた！！
丁度その時に、アニメはクライマックスで……修之さんと達央さんの“激しい声”が重なった。
お二人が穢される！！！
夢中でテレビのスイッチは切ったけれど、私は激しい嘔吐に襲われトイレに駆け込み1時間以上も立てこもってしまった。
あの“クソ相方”がどんなオンナと乳繰り合おうが構わない！！
けれどあの“クソ”は“禍々しい現実”を私の目の前に晒して、私そのものだけでは無く、私が尊ぶもの全てを穢した！！
この事は万死に値する！！！
ようやくトイレから這い出た私はキッチンに入り、嫁入り道具として持って来た包丁を片っ端から研ぎ始めた。
切り落としたモノをどこに突っ込んでやろうかと考えを巡らせながら……
終わり
来週の月曜は“真っ黒シリーズ”をお休みしようかしら……(^^;)
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