モテる理由
小柄で細く色白。
髪は茶髪でパーマを当てているのか巻いているのか、ふわふわと波打つ様な綺麗なロング。
パッチリ二重で顔も小さい...
まるで絵本の中から飛び出して来たかのような可愛らしい外見をした女性が目の前にいる。
そして、その隣に並ぶのは私の想い人で...。
美男美女、なんてお似合いなんだろう...
思いたくないのにそう思える組み合わせに悲しくなる。
「お取り込み中だったかしら?」
「いや」
「...」
「そう...じゃあちょっとだけお邪魔するわね?」
「乙木さん、ちょっとごめん」
「あ...うん。大丈夫」
私から少し距離を取り2人は話し出す。
距離がある為会話の内容は分からないが、表情がコロコロ変わる彼女につられて高野君も同じ様な顔をしていたので2人が特別な関係なんだと感じた。
彼女の傍にいる彼の雰囲気は...柔らかかった。
2人が笑う度、絵になるなんて思いながらも胸が苦しくなる。
私が体験したかったことはこんなに苦しいんだ...。
見ていられなくて下を向いていた時だった。
「大丈夫?」
「...ぇ」
掛けられた声にゆっくりと顔を上げると心配そうな高野君が居た。
「やっぱ具合悪いんじゃねーの?」
「ぁ、いや」
「結!急にどうしたの?」
彼女もコチラへやってくる。
だけど顔を合わせづらくて私はまた下を向いた。
「麗奈、ごめん。話はまた今度聞く。コイツ、さっきから具合悪そうで保健所連れていくわ」
「あらそうなの?気づいてあげられなくてごめんなさい」
「...ぃぇ」
申し訳無さそうな声...。
体の具合が悪い訳では無い...痛いのは心だから。
邪魔者な私に掛けられる言葉は優しくて罪悪感が湧く。
「私は、大丈夫です...から...ふぁっ!」
「うっせー。ほら、しっかり捕まんねーと落とすぞ」
「やっ」
「フッ」
急に腕を引っ張られたかと思えば、気づけばお姫様抱っこをされている体勢で今までされた事が無いから恥ずかしいのと、先程より顔が近くて心拍数が上がっていく...。
離れたいのに怖くてしがみつくしかない...
そんな私を見て笑う彼にまたドキドキさせられた。
...ズルい。
「結!女の子を乱暴に扱っちゃダメでしょ!具合が悪いんなら尚更よ」
「はいはい」
「もぉ!ちゃんと分かってる?」
「分かってるって」
「ならいいけど。アナタ、お大事にね?」
「...はい」
「じゃ行くわ」
「えぇ、またね」
私達は保健室へと向かう。
触れられている部分と顔が熱を持ち熱い...。
そして、胸が痛かった。
保健室に着くと先生は居らず、とりあえずとベッドに寝かされた。
わかりやすい場所に救急箱があり、熱さまシートを取り出し高野君は私のおでこに貼ってくれる。
「アンタ、本当に大丈夫か?」
「...ぇ?」
「体温高いし顔も赤いし、本当に熱出たんじゃ」
「あ、大丈夫!大丈夫だから、本当に...」
「...そ」
「うん...」
「さっきは悪かったよ」
「ぇ?...何が?」
「具合悪かったのに麗奈と話してアンタを放ったらかしにしたから」
ズキっと胸が痛んだ。
そんな事ないっ...
高野君は私を気にしてくれた。
あの人より、私の心配をしてくれて...
何も悪くない... 悪いのは私なのに...
どうしてこんなに優しいんだろう。
モテる理由は、顔が良いからだと思っていた。
だけど、高野君は些細な変化に気づいてくれるからその優しさに惹かれてしまうのだろう。
それはまるで
" 私を見てくれた " " 大切にされている "
" 自分は特別なんだ "
と勘違いしてしまうほど。
「大丈夫、だから。...高野君は優しいよ。だから、ね?謝らないで。...私の方こそ、あの人との邪魔してごめん」
「あ〜、別に。先にいたのはアンタとだし。麗奈とはいつでも話せるから良いよ」
「いつでも...?」
「ぇ?あぁ、麗奈は俺の...」
ガラガラガラ---
「あれぇ?貴方たち達何してるの?...って熱?大丈夫?」
聞きたくて聞きたくなかった言葉は保険医の登場により続かなかった。
先生に見てもらったがやはり心の問題なので体は何処も悪くなく、心配してくれた高野君は「何も無くて良かった」と安心していた。
" 麗奈は俺の "
もし、その先の言葉を知ってしまえば私はどうなってしまうのだろう。