のりこと時空の部屋24
番頭は
「ご不満ですか?あるじが彼のハラキリをのぞむのなら、私が介錯人をつとめますが」
「そんなのいらないよ!じゃあ、クワクはこのままはたらいていいの?」
「――それは私の決めることではありません。この旅館のすべては、最終的には主人であるあなたに決定権があります」
ウソばっかし。なにもあたしに権限なんてないくせに。
「彼は仕事のひまを見ては、いなくなった兄の行方を探しています。そこをルーシェにつかれたのでしょう」
「ふうん……お兄さんが見つかるといいね」
のりこのことばに
メッヒは答えず、あたりにころがったねじやぜんまいに目をやると
「……しかし、あなたはよく『心の試練』を突破しましたね。これは挑戦者の心の底ふかくをさぐり、その秘めた願望を見せる装置です。――のぞむなら、あなたはあの夢のなかに一生とじこもっていることもできましたよ」
「だって、あんなの『うそっぱち』でしょ」
口をとがらせるのりこに、
メッヒは
「うそっぱちでも、じっさいの人生より楽しいかもしれません。私に何も小言も言われず、この旅館の主人としてのわずらわしさが一切ない世界の方が」
(小言が多いって自分でわかってるのか、こいつ。ならもっとひかえてほしい)
そんな番頭への不満はわきにおさえて、のりこは言った。
「――でも、そんなのやっぱりだめだよ。だって、あたしはこの旅館のあるじだもの。しなきゃいけないことをする」
「ほぉ……」
少女のことばを聞くと、メッヒは、いったいどうしたのだろう?
しばらく沈黙したのち、にわかに背筋をのばし胸に手を当て、のりこに向かってふかく一礼した。
そして
「――あるじ。私は正直、今まであなたのような考えのあさいこどもがこの旅館の主人であることに不満を持っておりました」
(やっぱし、思ってたんだ)
「しかし、ただ今のあるじのご発言に、それがまちがいであったことを知りました……あなたの、その人生のすべてをなげうってこの旅館の発展につくす、との意思表示にふかい感銘を受けました。
そのことばをうけてこのメッヒ、およばずながら番頭として綾石旅館の発展のため、ますます滅私奉公いたします」
(――えっ?あたし、自分の人生をなげうつだなんて一言も言ってないよ!)
あわてた少女が
「だいたい、そんなこと言って、あなたがこんな部屋をつくるからいけないんじゃない!」
と、なじると
メッヒは心外そうに
「私がこのような悪趣味なものをつくるはずがないでしょう。これらのオートマトンをつくったのは、すべてあなたの父・幹久です」
「えっ!?」




