のりこと時空の部屋19
言われたメッヒは小首をかしげ
「そうは言いますが、私が最後にあなたの元あるじと立ち話をしたのは五〇〇年も前ですよ。しかも、あの老学者の件では私こそひどい目に会いました」
「なによ、その上からの言いぐさ!にくいやつ!」
ルシフェルの視線は意外なほどのねたましさにもえていた。
番頭は、そんな長期滞在客のようすにため息をつくと
「はてさて、こまったお客さまです。……しかし、もはや私にあなたの行動をとやかく言うことはできませんね。この『時空の間』では、試練を突破したものにそのとびらを開ける権利が与えられる設定になっています」
「そういうことよ」
堕天使は黒いつばさをはためかせるととびらの前まで、はねるように飛んだ。
その様子にさけんだのは、今までだまっていたクワクだった。
「ルーシェどの!約束はどうなりもうした!?」
(約束?)
「地獄にとらわれたわが兄の身を解放して下さるというから、それがしは戦士のほこりをすて、あるじどのをうらぎるという恥知らずのおこないに協力したのですぞ!」
そうか!そういう事情があったのか。
クワクが日本に来たのは、いなくなったお兄さんをさがしにだものね。
しかし、そんな必死のクワクに対して、ふりかえった堕天使は
「――わるいわねクワク。あたしはあんたのお兄さんの行方は知らないわ」
クワクはそのことばに愕然として
「そんな!……されど、それがしはとらわれ、たすけを呼ぶ兄上のすがたをたしかに夢に見ましたぞ!」
「あれはあたしの使う夢魔の見せた幻影よ。そうそう、それと同じものをおじょうちゃんにも見せたわね。あなたのおとうさんのすがたをうつし出したのだけど、わからなかったみたいね?」
(そうか、あの夢もみんな仕組まれたものだったのか。
――えっ?ちょっとまって。あのふざけた感じのおじさんがおとうさんだっていうの?そんな!)
「なんと、だましおったか!この外道め!」
いきりたつクワクに
ル-シェはわらって
「やあねぇ。もうすぐ天国にもどろうという天使にその言いぐさはないわ」
「おのれ、行かさぬ!」
「そのひまはないわ。さあ、なつかしの我が家にゴーホームよ」
ドアノブを回してとびらを開けると
ピカッ!!
強烈な光がもれでた。




