のりこと時空の部屋14
目がさめると、のりこは朝のさわやかな光が差し込む明るい食卓にこしかけていた。
「あれ?あたし……?」
うろたえる少女に
「やあねえ、のりこ。食事しながらうっつらするなんて。ねぼすけねえ」
そう言って目の前にこんがり焼いたトーストを置いてくれたのは
「あっ……おかあさん……だよね?」
エプロンすがたの「母親」だ。ボブ・ヘアーがよくにあう、きれいで料理もとくいな自慢のおかあさん。
……なのに、なぜだろう?
のりこは、この母とまるでいま「初めて会った」ように思ってしまった。
そんなことあるわけないのに。
「なんだよ、のりこ。まだねぼけてるのか?そんなんじゃ、またおねしょしちゃうぞ」
となりでトーストにバターをたっぷり塗ってがっついているのは、口の悪い「兄」だ。
「あたし、おねしょなんかしないもん!」
「そうか?……おっと、いただき」
そう言いつつ、のりこの皿にフォークをのばす。
「あっ!お兄ちゃんがあたしのウインナー取った!ひどい!」
「スキを見せる方がわるいんだ」
はは、とわらいながらのりこより二才上の(はずの)兄は、ウインナーをかじった。
「まったく、あんたたちときたら朝からやかましいわね。あなた、ケータイをいじるのはやめて、なんとか言ってやってくださいよ」
「……うん?ああ、ごめんごめん。つい海外の株式市場が気になっちゃって……」
シャツにネクタイすがたののりこの「父親」がメガネをずり上げて妻にあやまる。
食事の時にケータイをさわるのは禁止だと家族で決めたのだが、商社づとめの父はついつい仕事が気になってさわってしまうのだ。
(そうやって、お母さんにおこられちゃうんだ)
これが「うちの家族」四人そろっての朝の食卓の光景だ。
のりこはこの「いつもどおり」の光景がうれしくてしかたなかった。いつまでも、こうであってほしい。
(あれ?でも……)
なぜだろう?のりこは、おかしな感じがしてパンにジャムを塗る手を止めた。
違和感というのだろうか、なんだかみょうな気がする。
「なに、ボーッとしているの?のりこ。朝ごはんをちゃんと食べて、はやく学校に行く準備をなさい。それとあなた、今日はあなたがのりこのピアノ教室へのおくりむかえをお願いしますよ。あたしはパートに行かないといけませんから」
「わかったよ」
(ピアノ?……そうだった。あたし、ピアノを習ってたんだ。もうじき発表会だからいっしょうけんめいおケイコしなきゃいけない。……あれ?でも)
「……あたし、学校から帰って帳簿つけはしなくていいの?それに廊下やトイレのお掃除は?」




