のりこと時空の部屋13
「されど、あるじ。どんな危険な目に会うかしれませぬぞ」
「そうよ、おじょうちゃん。あたしも無下なことは言えないわ」
「――いいの。せっかくここまで来たんだから。あたしだって、することはするよ」
のりこはそう言ってミノムシに向かうと
「でも、いったいどんなことをするの?あたし、べつにかしこくないし、運動もそんなに得意じゃないよ」
「「私ノ出ス試練ニハ、知力モ腕力モ、必要ナイ。問ワレルノハ、意思ノ力ダ」」
「意思?」
「「ソウ。オマエガ、ドノ道ヲ選ブカ、ソレガ、スベテダ」」
なんだ、それ?あたしは今、とらわれたたましいをとりかえそうと来たんじゃない。ほかに選ぶ道なんてないけど……
「「デハ、ヨイカ?オマエハ、私ノ翅ヲ、見ルノダ」」
「はね?」
どこにハネが……と思っていると、そのミノムシの背中がカチカチとジッパーがひらくようにわれた。
そして、そのわれ目からじょじょに出てきたのは、金属光沢を持ったうすい翅だった。
(まるっきりチョウチョの脱皮だ)
成虫となったミノムシが、その人工繊維らしいてかてかとした翅を広げると、そこにはゆらゆら動く虹色のうずまき模様があって、それはまるで
「眼玉みたい……」
優美に動かす翅の動きに合わせて変化するその眼状紋をながめていると、のりこはまるでたましいが吸いこまれていくように思えて……
「気をつけて、おじょうちゃん!それって、まるっきり催眠……」
ルーシェのことばを最後まで聞きとることなく、のりこの意識はふかい闇に落ちて行った。




