のりこと時空の部屋8
「その中に入ることができるのはソロ……鍵を持つあなただけよ。もちろん安全だという保証はないわ。なにせあの悪魔のことだから、中にどんなおそろしいしかけがあるかしれない。
それでもいい?力をかしてくれる?」
天使の問いに、のりこはコクンとうなずいた。
もう気持ちはかたまっていた。
たしかにメッヒは、おとうさんのことを今までなにも言わなかったり、あやしいところがいっぱいあった。なによりやつには黒いつばさがある。うらぎりものにちがいないのだ。
そして、のりこは正義感が強いこどもだった。父親や他の人々のたましいをすくい出さなければならない。
気になるのは
「クワクもついてくるの?」
となりにひかえる男衆の蜘蛛の精だ。
クワクはめずらしくしおらしい表情で
「――それがしは、たしかに番頭どのには長らくお世話になっておりまする。されど、そのやり方はひどいとも思っておりました。あなたさまの父上のたましいをうばったあと、あのなまけもので考えなしの妹さまを主人にすえて、経営をうばっておしまいになられました」
番頭にさからう気持ちになったという。
「お美和さんやアンジーには、だまっていていいの?」
クワク以外の従業員にはこのはなしはしていない。
彼らは今もメッヒに言いつけられた仕事をいそがしくこなしている。
「……あのものたちはメッヒと関係が深いからダメ。時間がないからあたしたちだけですすめましょう」
だまってやるのは気が引けたが、しかたない。
(おとうさんのたましいをすくいだすためだ)
のりこは、今までふれたことのない置時計の内蓋の錠に鍵をさしこみまわした。
――カチッ。
錠のあいた音がしたかと思うと、内蓋の中から
――カチッ、カチッ、カチッ、カチッ、カチッ、カチッ、カチッ、カチッ、カチッ、カチッ、カチッ、カチッ、カチッ、カチッ、カチッ、カチッ、カチッ、カチッ、カチッ、カチッ、カチッ、カチッ、カチッ、カチッ、カチッ、カチッ、カチッ、カチッ、カチッ、カチッ、カチッ、カチッ、カチッ、カチッ、カチッ、カチッ
ぜんまいとねじがとびだしあふれて、三人の身をつつんだ。




