のりこと時空の部屋6
……おとうさん?
「あなたの父・幹久はあの悪魔を呼びだし、はたらくよう契約を結んだ。さびれていたこの旅館をたてなおすためにね。
番頭としてはたらくかわりにあなたの父親のたましいを手に入れたメッヒは、さらには人の世と地獄との境目であるこの重要な場所を自分の管理下に置いたの。ほかの魔物にたましいを横取られたりしないようにね」
そんな!おとうさんのたましいが?あの番頭に?
思わずのりこがクワクを見ると、つらそうに少女から目をそらした。そのようすに
(そんな、ほんとなの?)
ショックを受けたのりこに、
さらに天使はつづける。
「あたしみたいな天使が、なんでこんな旅館に長期滞在してると思う?あたしは、いわば見張り役。天にまします至高のあるじの命によって、あの悪魔を見張るためこの下界につかわされたのよ。
もちろんメッヒは、あたしがこの旅館にいることをおもしろくなく思っているけど、客という立場であれば追い出しはできないからね。……そして、あたしはスキをうかがっていたの」
「スキって、なんの?」
「それはもちろん、メッヒにうばわれた無辜の人々のたましいを解放するためよ。あの悪魔は、番頭をしながら集めた人間のたましいをこの旅館にかくしている」
そんな!そんなあくどいことをメッヒがしていただなんて。いや、悪魔なのだから当たり前かもしれないが。
しかし、やはりのりこにはわからなかった。
この旅館の主人になって以来、さんざん用事を言いつけられ、しごかれ、いやみを言われたり、時にはうそをつかれたりはしたけど、メッヒが番頭として支えてくれているから、自分はこの見ず知らずの旅館でやってこれたと思っていたからだ。
それらがすべて、あの悪魔にとっては自分がたましいを集めるための方便にすぎなかったということなのか?
「ほんとうは、メッヒはあなたが来る前にあの堕落した女あるじのたましいをうばうつもりだったけど、逃げられちゃったから、つぎにねらうのはあなたのたましいよ」
――!そうだったのか。なんておそろしいやつ!
そりゃ件の言うとおり、気をつけなきゃいけないはずだ!
とまどいと怒りで、それこそ頭の中がわちゃくちゃの少女に
天使は
「――おじょうちゃん、あたしに協力してくれないかしら?」
やさしくうったえかけた。
「協力って……?」
「メッヒが地獄に下りた今こそがチャンスなの。あたしといっしょに人々のたましいを助けてほしいの」
急にそんなことを言われても、それって
「……メッヒを出しぬくってことだよね」
「そうよ」
「……でも一応、本人の言い分も聞いてみないと」
「そんなこと、あの悪魔が正直にこたえるはずがないわ。そのとらわれたたましいのなかには、あなたのおとうさんもいるのよ」
――おとうさんのたましいが。




